臨床開発部 有田 好城
患者様のアンメットニーズに応えたい
- 2009年入社、生物研究所に配属。創薬・前臨床研究での薬効・薬理評価に携わる。
- 2013年海外の共同研究先に出向。新薬候補化合物の探索、実験技術の移管に取り組む。
- 2014年生物研究所に復帰。
- 2015年臨床開発部に異動。上市品リオナ錠の適応追加(鉄欠乏性貧血)の治験実施業務、申請作業や外部発表等に関わる。現在は、治験実施計画書責任者として生物研究所所属時にも担当していたプロジェクトの国内治験を進めている。
医師ともコミュニケーションを重ねながら、
臨床試験の完遂を目指す
臨床試験(治験)には主にプロトコルの立案・作成、規制当局への届出、GCPやプロトコルに従った実施、データ収集と点検、解析、結果報告書の作成といった業務があります。そして、それぞれの業務ごとに専門性の高いメンバーが集まり、クリニカルチームが構成されます。米国のグループ会社であるアクロスファーマ社に出向して海外臨床試験を担当することもありますが、現在、私はクリニカルチームの治験実施計画書責任者として、国内臨床試験を担当しています。臨床試験によって検討すべき内容は様々。そこで開発化合物の開発状況に応じた臨床試験の計画を立案し、得られたデータを解析・考察し、成績をまとめていくことが主な役割です。
臨床試験の主な目的は、対象の患者様での開発化合物の有効性・安全性・薬物動態等を評価すること。対象疾患や他剤の臨床試験等の情報収集に加え、実際に患者様を診察されている医師の方々への意見聴取等も行い、開発化合物の開発戦略に応じた試験計画を検討します。
また、社内・社外を問わず様々な部署の関係者や医療機関の医師の方々に、臨床試験の目的や計画をしっかりと周知し、挙がってくる疑問点等に対応することで臨床試験のスムーズな遂行に貢献すること、そして得られたデータを様々な観点から考察して他剤と差別化することで開発化合物の特徴を明らかにすることも重要な業務です。
他にも第III相臨床試験で良い結果が得られた場合には、申請資料の作成や規制当局からの照会事項への対応等の承認申請業務に関わりながら、上市後の情報提供を見据えた外部公表活動(学会発表や論文投稿等)に関わることもあります。
研究員の思いがこもった開発化合物から、
少しでも有用な情報を得るために
臨床試験では、実際に疾患に困っている患者様にご協力いただいてデータ収集を行います。そのため、患者様の負担を可能な限り増やさないように考慮しながら、開発化合物が次の段階に進めるか否かを明確に判断できるようなデータや、開発化合物の特徴を捉えられるデータを取得できるように試験計画を立てています。
そして忘れてはならないのが、臨床試験はやり直しや実施中の計画変更がほぼ不可能であること。だからこそ、臨床試験の計画段階から複数パターンの結果を想定し、念入りに準備を進めておくことが重要になります。また、非常に多くの担当者が臨床試験に関わってくるため、チーム一丸となって進められるように、様々な場面で密に連携を取っていくことも大事になってきます。
さらに、私の場合は研究所に所属していた際に「開発化合物を生み出す難しさ」も経験しているため、開発化合物には”研究員みんなの思い”が非常に多く込められていることも常に感じています。ですから余計に、「何とか臨床試験を成功させて患者様の手元に届けたい」と強く思っていますし、たとえ期待した結果が得られなかった場合でも、次の開発化合物を生み出すときに有用な情報を少しでも多く得られるようにしたいと考えているのです。
臨床試験の成功で実感した、
新薬の多面的な価値
これまで様々な臨床試験を担当してきましたが、記憶に残るプロジェクトは少なくありません。そのひとつが、「既存の治療薬と同等の有効性を持ちながらも、患者様の治療意欲を下げてしまうような有害事象が少ない」という開発化合物の特徴を明確に示すことができ、無事に承認を取得した経験です。
その後、臨床試験に関わられた先生にお会いした時に、「既存の治療薬では有害事象が出てしまい服薬を続けられなかった患者さんが、JTの薬を使うようになってから治療にも前向きになり回復していったよ」という言葉を聞き、既に治療薬がある疾患であっても患者様のアンメットニーズは確実に残っており、その部分をJTの開発化合物で埋めることができたと、嬉しい気持ちになったことを覚えています。
医薬品の開発には長い時間がかかり、特に臨床試験での成功確率は低いことが一般的に知られています。しかし、共通の目標に向かってコミュニケーションを多く取りながら、各担当者がそれぞれの持ち場で最善を尽くすことは、1つでも多くの臨床試験の成功につながると信じています。そして、開発化合物の特徴を明らかにすることで、疾患に苦しんでいる患者様に新薬を届けて治療薬の選択肢を増やし、少しでも患者様のアンメットニーズを埋めることができるように、これからも日々努力していきたいと思います。
JTには、人としても成長できる環境がある
私たちの職場の特徴は、様々なバックグラウンドを持った先輩方に囲まれていること。それに加え、自分がやりたいと思ったことには積極的に挑戦させてくれる風土があり、比較的早い段階から成長・活躍できる環境が揃っているなと感じます。また、業務に直接的に関連することだけでなく、人としての成長に繋がるような研修も充実しているため、様々な面で刺激を受けられる環境でもあります。
一方で画期的なオリジナル新薬を創出するためには、「一つひとつのことを突き詰めて徹底的に考えながら、想像を膨らませ、最後まで諦めないこと」が重要だと考えています。そのためにもこれから入社される新入社員の方々には、色々なことに興味を示して挑戦してみる姿勢や、自分の中でやりきったと思えるところまで頑張り続ける能力をぜひ大事にしてほしいです。