薬物動態研究所 上原 ひかる

薬物動態研究所 上原 ひかる
INTERVIEW
私たちの志
メタボロミクスの技術を追求し、
「世界初」に挑戦したい
若手社員薬物動態研究所
上原 ひかる Hikaru Uehara
2019年入社
情報科学研究科 バイオ情報工学専攻 修士課程修了
INTERVIEW HIKARU UEHARA

学生時代のメタボロミクス研究がきっかけで、
創薬研究者を志す

「代謝って面白そう!」と講義を聞いて思ったことをきっかけに、学生時代は「細胞内で起こるエネルギー代謝反応のシミュレーション」をテーマに研究していました。体内の糖・アミノ酸・脂質等を測定する「メタボロミクス」という技術を応用して、実際には見ることのできない「どの酵素でどれくらいエネルギーに変換されたか?」を推定し、がん細胞の種類による違い・共通性について調査していました。

細胞培養・成分分析に加えて、プログラミング技術が必要なシミュレーションも一人で行っていたため悩むことも多かった反面、各分野に詳しい先輩に教わりながら、どんどん新しい技術・知識を習得することが楽しくて仕方なかったです。この経験は、今の仕事への向き合い方につながっていると思います。

医薬品業界に興味を持った理由も、学生時代に取り組んだメタボロミクス研究がきっかけでした。新薬開発が年々難化する中、その状況を打破するため多くの製薬企業がメタボロミクス研究に力を入れていると聞き、創薬研究者を目指すことにしたのです。特にJTは、私が取り組んできたエネルギー代謝が関わる疾患が注力領域。さらにちょうど当時、JT初であり、事業の軸としても掲げる「First in class」の薬が上市されたことも入社の決め手になりました。

上原 ひかる 写真1

ミッションは代謝を読み解き、
薬効を確認する為の
バイオマーカー候補成分を探索すること

会社に入って初めて知ったのは、投与された薬物の全量が薬効を示すわけではないということです。薬物を投与すると、体内に吸収され、組織に分布し、酵素による代謝で別の化合物に変換され、最終的に排泄され体内から消失します。薬物動態研究所のミッションは、その過程を明らかにすること。体内での薬物の動きを追い、薬効や毒性発現との関係を考察するのです。

私の所属するグループでは、新薬候補化合物の非臨床(動物)・臨床試験(ヒト)から得られる血漿、尿、組織などの生体試料中薬物濃度測定と分析法の開発、in vitro/in vivo試験時の代謝物検索・構造解析などを手掛けています。これらの評価にはクロマトグラフィーや質量分析という分析技術が深く関わっており、その技術とこれまで培った経験を応用してメタボロミクスを実施していきます。

こうした中で、私が現在担当しているメタボロミクスは「生命維持のための代謝」を読み解くための技術。酵素によって分解・生産される低分子物質を網羅的に測定し、得られたデータを統計解析することで、薬効や疾患メカニズムを理解するヒントや、臨床試験での薬効を確認する指標(バイオマーカー)になりそうな候補成分の情報提供に取り組んでいます。

上原 ひかる 写真2

入社2年目で味わった悔しさをバネに、
外部機関との共同研究に挑戦

薬物動態研究所のお気に入りの場所は、メインの仕事道具である分析機器が置かれた実験室とコミュニケーションスペースです。実験室には分析機器がズラリと並んでいるのですが、その中のガスクロマトグラフィー質量分析計は、私が入社2年目に導入を提案して実現したものです。人一倍思い入れがあります。それに2年目と言えば、今につながる大きな経験もしました。

当時、私が担当したのは、あるテーマで新薬候補化合物の標的タンパクへの作用を臨床試験でモニターするためのバイオマーカー探索。まず前臨床研究で、動物モデルに新薬候補化合物を投与した際に得られた血漿・ターゲット組織について網羅的に内因性の低分子物質を測定し、統計学的解析によりバイオマーカーの候補成分を選抜しました。

しかし、その情報だけでは、臨床試験での測定に至るサイエンスが不足しており、そのバイオマーカーの確からしさを証明しなければなりません。そのため、新薬候補化合物の標的タンパクへの作用とバイオマーカー候補成分の変動がどのように関係しているのか、徹底的に文献調査することでメカニズムを推定し、提示しました。

残念ながら、そのメカニズム仮説を証明する方法がなく、議論中は意見が割れることも。最終的に大動物を用いた評価では再現せず、臨床試験での測定は断念することとなり、悔しい想いをしました。しかし、その経験をバネに、自らメカニズム解析強化のための新技術導入を目的に外部機関との共同研究を提案。現在は、その共同研究に従事しています。

上原 ひかる 写真3

世界的に確立されていない手法を、
いつか私が実践したい

今後の目標は、研究を楽しみながらも患者様に早く薬として届くよう、目の前の仕事に向き合い続けることです。例えば、メタボロミクスでは膨大なデータを取得できるものの、現状は研究者が着目した成分を一つ一つ確認して採用されているケースが頻繁にあり、その他の多くの成分やそれらの変動の組み合わせについてはデータを持て余してしまう、という課題があります。このデータを蓄積・活用できれば、毒性予測や適応疾患最適化につながる可能性もきっとあるはずです。その方法はまだ世界的にも確立されていませんが、だからこそチャレンジする価値があると、私は考えています。

こうした新しいことに向かっていく際に、「取り組んでみたい」と思っている事柄について理解し、挑戦を歓迎してくれる上司・同僚には感謝してもしきれません。それに加えて入社当時にかけていただいた、「サイエンスを楽しんで仕事に取り組んでください」という言葉は、今も私の支えになっています。ですから、研究を楽しみながら挑戦できる方を新たな仲間として迎えられたら嬉しいです。一緒に働ける日を心待ちにしています。

1年目の業務
入社1年目は、まず薬物動態研究所で創薬研究段階に実施するin vitro評価の研修を受けました。先輩社員の講義を通して各評価の手順や、そのデータが薬の種となる化合物から新薬候補を選択するためにどう関わるのかを学んでいきました。私は工学系出身で創薬や薬物動態学の知識に不安があったのですが、先輩方が丁寧に教えてくれたおかげで、初心者でも理解できました。その後はメタボロミクスチームの一員として、新規技術の導入検討を実施。また、ある創薬研究段階のテーマ担当者として、新薬候補化合物を選択・最適化する過程を学びながら、プログラミングの経験を活かして、薬物動態パラメータのAI予測モデル作成にも関わりました。
INTERVIEW HIKARU UEHARA
ONE DAY
SCHEDULE
ある日のスケジュール
  • 8:30
    出社。
  • 9:00
    実験準備。
  • 12:00
    昼食。同期とコーヒーを飲みながら談笑。
  • 13:00
    グループミーティング。今抱えている課題についてアドバイスをもらう。
  • 14:30
    実験。
  • 17:00
    データ整理。
  • 18:00
    退社。
DAY OFF 休日オフタイム 上原 ひかる
社会人になってからキックボクシングや英会話といった新しい習い事に挑戦したり、学生時代からの趣味であるコーヒーやライブ鑑賞を楽しんだりしています。休日は会社の同期と食事やゲームをして過ごすこともあります。研究所のある高槻は飲食店や買い物ができるお店が多く、公園等の公共施設も充実していて、平日・休日どちらも快適に過ごせています。
上原 ひかる