生物研究所 吉水 敏城

生物研究所 吉水 敏城
INTERVIEW
私たちの志
データサイエンスから創薬の成功確率を上げ、
1日も早く患者様に新薬を届けたい
若手社員生物研究所
吉水 敏城 Toshiki Yoshimizu
2019年入社
農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻 修士課程修了
INTERVIEW TOSHIKI YOSHIMIZU

行動生態学の研究で培ったデータ解析を、
創薬の世界に活かす

私は学生時代に行動生態学を専攻していました。対象としていたのは、線虫やテナガショウジョウバエの行動です。行動は動物を特徴づける形質で、地球上に生息する動物はその形態とともに、行動様式も多様でよく分からないことだらけです。そこで私は、トラッキングという技術を用いて動いた軌跡を抽出し解析することで、どんな行動をしたのかを研究していました。線虫を用いた研究では、線虫が単体で行動している時と周りに他の線虫がいる時とで行動が異なることを発見。テナガショウジョウバエを用いた研究では、トラッキングシステムを一から開発し、従来の観察方法では見出せなかった行動を発見できました。こうした学生時代の研究では、日常的に「プログラミングを用いたデータ解析」を行っており、その経験は現在の業務でも非常に役立っています。

JTに興味を持ったきっかけは、幼い頃に大阪・高槻にある「JT生命誌研究館」に行き、ワクワクしたことでした。その上で、「JT医薬総合研究所」では若手が活躍できる環境が整っていて、たくさんの研究員が精力的に研究をしていると聞いたこともポイントになりました。「周囲に刺激を受けながら様々な経験ができる環境で、創薬の世界という未知の領域に挑戦できる」という期待感が、入社の決め手になりました。

吉水 敏城 写真1

実験や論文では取得できない情報を
データドリブンで抽出

私が所属する生物研究所の仕事は、創薬過程に並走して進んでいきます。新規テーマ起案に始まり、創薬ターゲットに作用するリード化合物の探索評価、化学研究所で創製された新規合成化合物の評価、さらに前臨床研究や臨床試験期間中も薬理作用のメカニズムの解析などを手掛けています。そうした創薬過程の中で、創出された化合物が対象疾患で本当に効くのか、その用量はどれくらいなのかを予測し、「その作用がどんな特徴を持っているのか」を明らかにすることが最大のミッションです。

現在、私は「データサイエンス、バイオインフォマティクス」グループに所属しており、データ解析が主な業務です。例えば、遺伝子発現データから病態特異的な発症機序を抽出して新規創薬ターゲットを探索することや、モデル動物における化合物の薬理作用メカニズム解析などに励んでいます。また、データ解析結果を実験担当者と共同で検証し、データ解析結果の確からしさを確認する作業も大事な仕事の一つです。

こうした業務では、多種多様な治療薬の開発に携わるため、数多くの課題に柔軟に対処する姿勢が欠かせません。また近年では、論文情報だけで新規の創薬ターゲットを見出すことが困難な状況になりつつあります。しかし、データ駆動的に標的細胞や遺伝子を絞りこめるバイオインフォマティクスは、そうした状況を打破する一手になり得るもの。実験や論文情報などでは取得できない、創薬に必要な情報を抽出することでテーマ推進に貢献することが、大きなやりがいになっています。

吉水 敏城 写真2

多様な知識が必要でも、周りの力を借りて乗り越えられる

私が最近取り組んでいるのは、新規創薬ターゲットの探索のために、神経変性疾患の患者様における「遺伝子発現ビッグデータ」を用いて病態の発症機序を解析することです。この従来の方法より一歩踏み込んだ解析によって、今まで注目されていなかった“ある細胞”が病態進行に大きく関わっている可能性を見出しました。

今回着目した細胞を創薬ターゲットとするのは、新規性が高いと考えています。今後はその他の遺伝子発現ビッグデータでも同様の結果が得られるのか、この細胞のどのシグナルの活性化が大きく関与しているのかを多面的に調べ、新規の創薬ターゲットを絞り込んでいく予定です。そして、新規の創薬ターゲットの絞り込みが終わり次第、所内モデル動物を用いた検証も進めたいと思っています。

こうした業務は、生物学的な知識を基本にプログラミング、統計学、機械学習など様々な知識が求められるため、学ぶべきことも多岐にわたります。それらを理解し、実際の創薬に応用することはやりがいでもあり、四苦八苦している部分でもあります。特に私は、薬理学系の基礎知識がまだまだのため、解析結果の解釈に悪戦苦闘する場面もしばしば。しかし、職場内には様々な分野のプロフェッショナルが集まっており、周囲とのディスカッションがテーマを推進する大きな力になっています。例え困難に直面しても、多くの方の知識や技術を借りて乗り越えられる環境は非常に心強いですし、JTならではの魅力だと思います。

吉水 敏城 写真3

想像以上に多岐にわたって仕事を任せてもらえる喜び

現在は「データサイエンス、バイオインフォマティクス」グループの一員として、データ解析から創薬に役立つ情報を取得していますが、データ解析ですべてを明らかにできるわけではありません。だからこそ、時間のかかる細胞やモデル動物を用いたWet研究とうまくコラボレーションしながら、創薬研究をしていきたいです。そして、膨大な量の情報がある世の中において、効率よくデータを収集・解析し、創薬プロセスの無駄を省き、創薬の成功確率を向上させることで、1日も早く患者様に新薬を届けていきたい。それが私の最大の目標です。

JTに入社してまだ4年目ですが、想像以上に多岐にわたって仕事を任されているなと実感しています。もちろん責任も重大ですが、だからこそやりがいがあり、テーマが前進したときの達成感は格別です。また、若手の意見を尊重してくれる風土や、明確な理由を示すことができれば挑戦的な研究でもやらせてくれる環境があることも日々実感しています。これから入社される方もぜひ、若手も活躍しやすく、挑戦的な研究ができる環境の中で、共に創薬にとことん取り組んでいきましょう。

1年目の業務
入社1年目はハイスループットスクリーニングによるリード化合物探索を実施するグループに所属していました。そこでは治療薬の出発点となる化合物を見出す業務に取り組んでいました。毎日の実務を通して、新規創薬ターゲットに対する化合物のスクリーニング評価系を構築し、短時間で効率よく、漏れなくスクリーニングするノウハウを学んだ時期でもあります。また、学生時代は動物を扱う実験経験がなかったのですが、所内の動物実験手技研修のおかげで一通りの投薬法や採血法も習得。入社1年目に実験業務に必要な最低限の手技・手法を一通り学べたことは、とてもありがたかったです。
INTERVIEW TOSHIKI YOSHIMIZU
ONE DAY
SCHEDULE
ある日のスケジュール
  • 8:50
    出社。メールチェック。
  • 9:00
    トランスクリプトームデータ解析。
  • 12:00
    昼食。flat.で同期とおしゃべり。
  • 13:00
    データ解析。
  • 15:00
    グループミーティング。解析結果の報告、ディスカッション。
  • 18:30
    退社。
DAY OFF 休日オフタイム 吉水 敏城
幼いころから昆虫が好きで、休日には山や川に昆虫採集に行っています。大学時代は東京にいたため難しかったのですが、社会人になって再び楽しむことができています。特に夜にするライトトラップは様々な虫が飛来し、ワクワク感がたまりません。
吉水 敏城