安全性研究所 松浦 千鶴

安全性研究所 松浦 千鶴
INTERVIEW
私たちの志
毒性の発現機序を追究・解明することで、
新薬創出を支えたい
若手社員安全性研究所
松浦 千鶴 Chizuru Matsuura
2016年入社
薬学部薬学科卒業
INTERVIEW CHIZURU MATSUURA

臨床の視点を活かして、創薬に貢献したい

学生時代は、「核内受容体と医薬品相互作用」を研究テーマとしていました。ある2つの核内受容体が相互に遺伝子発現調節することを見出し、「その相互作用に起因して生体にどのような影響があるのか」に注目し、それぞれの核内受容体の活性化作用を持つ薬剤を併用した場合の反応性の変化について研究しました。

次に免疫・炎症分野に転向。新たな分野でテーマを考えるところからスタートしました。着目したのは自然免疫応答に関与する「インフラマソーム」。インフラマソームは自然免疫応答に関わるタンパク質複合体ですが、近年様々な炎症性疾患との関連性が報告されています。薬学実習で学んだ経験から薬剤と副作用に興味があったこともあり、薬剤性腎障害とインフラマソームの関連について研究しました。そして実習と研究の両立生活を経て、「臨床の視点を生かして創薬に携わりたい」と考えるようになり、製薬会社への就職を希望しました。

JTを志望したのは、「First in class」を目指した挑戦の姿勢に共感したことが大きかったです。特に若手が挑戦できる環境だということが、就職活動を通して印象に残っており、ここなら共に成長・挑戦していけると感じて入社を決めました。

松浦 千鶴 写真1

新薬候補化合物のヒトでの「安全性」を予測する

安全性研究所のミッションは、対象疾患に対して有効性が期待される新薬候補化合物(以下、化合物)の安全性を評価・予測すること。実験動物や培養細胞、微生物を用いて化合物の毒性プロファイルを明らかにし、ヒトにおける安全性をきめ細かく評価・予測していきます。

そのため、実施する毒性試験も一般毒性(単回・反復投与毒性)から、遺伝毒性、発がん性、生殖毒性、免疫毒性など実に様々。こうした中で、私の所属グループが担当しているのが一般毒性試験です。一般毒性試験においては、動物の状態観察、体重、摂餌量、尿検査、血液検査、眼科学的検査、臓器重量、病理学的検査などの結果を総合的に評価して、化合物が持つ毒性を質的・量的に明らかにします。臨床試験で得られる安全性データに化合物の影響があれば、そのメカニズムの考察・解明も欠かせません。

現在は試験責任者として一般毒性試験の実施・管理を任されています。ここで大切なのが、一般毒性試験の実務担当者だけでなく、開発テーマの担当者や血中濃度測定、病理、飼育グループなど様々な方とコミュニケーションを取り、協力して試験を進めていくことです。他にも臨床検査業務を担当しているので、尿・血液検査において信頼できる測定データを迅速に提供することも大切にしています。

松浦 千鶴 写真2

臨床検査から候補化合物の開発に
大きく貢献できるやりがい

私が担当する臨床検査業務では、通常の一般毒性試験内の検査に加えて、新規検査項目の構築も手掛けています。ただ、実験動物専用の試薬は少なく、多くがヒト用試薬を使用しての測定となるため導入検討には試行錯誤が付き物です。実験動物の臨床検査はヒトとは異なることが多いため、幅広い情報を読み解き、整理しながら業務を進める必要があります。

こうした臨床検査について多くのヒントを得られるのが、業界団体や検査機器メーカーが主催する非臨床検査担当者向けの講習会です。会社の垣根を越えて活発なディスカッションも行われるので、毎回刺激を受けています。難しい面もある業務ですが、毒性試験で認められた所見の発現メカニズム解析、そして臨床試験を安全に進めるために必要な副作用モニタリングのためのバイオマーカー探索など、候補化合物の開発に大きく貢献できるので、やりがいも非常に大きいです。

また少数精鋭の組織で、1年目から先輩とタッグを組んで化合物の毒性と向き合えることもやりがいの一つ。経験年数や立場によらず全員の当事者意識が高く、チームワークの良い職場だと感じています。さらに若手の挑戦を積極的に支援する風土があり、私自身、学生時代にアイデアとして温めていた病態モデルを用いた毒性評価にも入社数年で関わることができました。最近は特に創薬技術の拡大や効率化にも力を入れており、毒性データベース構築、AI技術を用いた病理評価や毒性予測など、専門技術を磨いた研究者が日々検討を重ねています。

松浦 千鶴 写真3

幅広く、奥深い「毒性学」を、新薬の創出に活かす

安全性研究所は単に化合物の毒性を見つけ、開発の継続可否を判断するだけのポジションではありません。なぜ毒性が発現したのかを追究・解明することが重要であり、私たちはそれを「攻めの毒性学」と呼んでいます。毒性が出たからといって諦めていいのか。薬効というベネフィット、副作用というリスクのバランスをどう判断し、見極めるか。毒性の発現機序を解明することは開発継続につながるだけでなく、他の化合物で同様の事象に遭遇した際に、迅速な開発戦略の策定にもつながります。そうした姿勢が、新薬創出の支えになると考えています。

安全性/毒性という分野は、薬学、医学、生物学の幅広い知識・経験をベースにした総合的かつ正確な評価が求められる世界です。そのため、毒性学の専門家となる道には「トキシコロジスト」という資格もあります。一定の毒性試験実務経験と幅広い専門知識が求められる資格ですが、私は昨年この資格を取得しました。毒性学は非常に幅広く奥深い分野。資格取得に慢心せず、これからも研鑽を重ねていきたいと思います。

「攻めの毒性学」を追求し、新薬創出に向けて常に挑戦を続けるJTの安全性研究所で、皆さんと共に働ける日が来ることを楽しみにしています。

1年目の業務
入社1年目は動物への投与、採血、解剖、臨床検査業務を習得する一方で、聴覚毒性をラット毒性試験の状態観察で検出する方法を検討しました。それまで簡易的な検査は実施していたものの、聴覚障害を起こした動物を用いた実証がされていなかったためです。まず特殊な機器を用いた方法を考えましたが、高感度ではあるものの一般毒性試験に組み込むには作業性のハードルが高く難しい。そこで、文献調査や他社へのヒアリングから、所内の一般毒性試験に導入可能な試験法を検討しました。最終的には、通常の状態観察と+αの検査によって聴覚障害を検出可能であることを示しました。1年目でも新しいことに挑戦できる風土だと実感した経験です。
INTERVIEW CHIZURU MATSUURA
ONE DAY
SCHEDULE
ある日のスケジュール
  • 9:10
    出社。メールチェック。
  • 9:30
    毒性試験作業または臨床検査業務。
  • 12:00
    昼食。
  • 13:00
    午前中に得られた試験データの整理・解析。報告会に向けて試験データの考察と資料作成。
  • 15:00
    グループミーティング。進捗状況の確認、調整。
  • 16:00
    時短勤務のため、退社。子どもを迎えに行く。
DAY OFF 休日オフタイム 松浦 千鶴
休日は子どもと夫と過ごします。公園やショッピングモールの充実した地域なので、子育てには困りません。最近はイルカショーを見に行きました。楽しみは無水調理で作る料理と寝かしつけ後に夫とするゲームです。
松浦 千鶴