歌舞伎の中のたばこ

歌舞伎の中のたばこ Kabuki
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歌舞伎の中のたばこ Kabuki
たばこが登場する代表的な歌舞伎 I / たばこが登場する代表的な歌舞伎 II

たばこが登場する代表的な歌舞伎 I
たばこが登場する代表的な歌舞伎
たばこが登場する代表的な歌舞伎
『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』

「絶景かな、絶景かな」という台詞で有名なこの作品の主人公は、大盗賊石川五右衛門。五右衛門と豊臣秀吉の確執を題材にした時代物です。五右衛門の豪快さを如実に表す小道具として登場しているのは、長さ30cm余り、胴回り20cm余りの真鍮手綱形太(しんちゅうたづながたふと)キセル。実際には、一般的に使用されていたサイズではありませんが、五右衛門の豪胆・勇壮ぶりを印象づける重要な役目を担っています。


歌舞伎にかかせない小道具のたばこ1

手綱形(たづながた)キセル
喫煙具としてよりも、形の大胆さをアピールすることに重点を置いた、手綱形キセル。作中に登場するのは、これよりも数段巨大な、真鍮製の太キセルです。
手綱形太(たづながた)キセル

『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』

江戸時代の最大の歓楽地であった吉原を舞台に、主人公の助六と人気遊女の揚巻、金と権力を持つ老人の意休らはじめ、魅力的な人物が登場する人気作品です。ここで登場するキセルは、遊女たちが助六への愛情を表現する重要な小道具。男前できっぷがよい助六を何とか誘おうと、遊女たちが次々と助六へキセルを差し出すシーンが出てきます。このときの助六のセリフ「キセルの雨が降るようだ……」は、あまりにも有名。江戸時代では、キセルは男女の愛情をはかるバロメーターだったようです。


歌舞伎にかかせない小道具のたばこ2

朱羅宇キセルとたばこ盆
遊女たちが朱羅宇のキセルを愛用していたことから、歌舞伎の中にも、朱羅宇のキセルを手にした妖艶な遊女がしばしば登場します。ちなみにこのたばこ盆は、新吉原の扇屋で人気を博した遊女「花扇(はなおうぎ)」が使用したものといわれています。
朱羅宇キセルとたばこ盆
朱羅宇キセルとたばこ盆

『青砥稿花彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』

「知らざあ言って聞かせやしょう……」という弁天小僧のセリフで有名なこの作品。盗賊の一味である弁天小僧が、武家の娘の姿に変装して呉服屋に強請(ゆす)りに入ります。いよいよ強請りが成功するぞといったところで、素性がばれてしまった弁天小僧。ここで、見せ場が始まります。愛らしい娘の姿から一転して、片肌を脱ぎ、大あぐらをかいた弁天小僧が啖呵をきるシーンでは、キセルを振り回したり、たばこ盆の灰落としをキセルで思いっきり叩いたりして、悪党ぶりを発揮。まさにこのキセルが、弁天小僧の想いを代弁しているかのようです。

歌舞伎にかかせない小道具のたばこ3

演劇用キセル形見本
昭和初期のキセル職人・伊藤島吉氏が制作した「演劇用キセルの形見本」。『青砥稿花彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』に登場する白浪五人男が使用するためのもので、人物のキャラクターに合わせて少しずつ違いがあるのが興味深い。

演劇用キセル形見本
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