浮世絵とたばこの世界 其の弐

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浮世絵とたばこの世界  其の弐 1.Top 2.役者絵の世界 I 3.役者絵の世界 II 4.美人画の世界 I
浮世絵とたばこの世界 5.美人画の世界 II 6.風景画の世界 I 7.風景画の世界 II 8.日本浮世絵博物館

  浮世絵の種類――美人画の世界
「美人画」とは――
「美人画」とは、女性を描いた浮世絵のこと。架空の女性を描いたものもありますが、主にモデルとなるのは、当時、人気のあった遊女や花魁(おいらん)、町娘などでした。中には、浮世絵に描かれたことがきっかけで、アイドル的な存在となった女性もいたとか。美しい遊女たちや町娘の姿、遊郭の日常風景などを描いた「美人画」は、飛ぶように売れたようです。
その他にも、遊郭がお店の宣伝をしたり、呉服屋が新作の着物を紹介するためにも「美人画」が制作されました。現代でいう、宣伝ポスターやファッション雑誌というところでしょうか。「美人画」に欠かせない小道具のひとつ、女性用の朱羅宇(しゅらう)の長キセルも、単に喫煙具というだけでなく、アクセサリーとしての意味合いも含まれていたようです。もちろん、彼女たちが身にまとっていた着物も、その時々の流行の柄や模様を取り入れたものでした。
世の男性たちは人気の遊女たちの浮世絵を求め、女性たちは浮世絵から流行を取り入れていたわけです。

遊廓の中のたばこ――
遊女たちが客を誘う手段として、利用していたのがキセル。その場面は、歌舞伎や浮世絵にも頻繁に登場します。
遊女がキセルにたばこを詰め、自分でちょっと吸い付けて、火が付いたことを確かめてから、袖口でそっと拭って客に差し出す“吸付たばこ”は、遊女が男性を誘う手段として流行した風習。遊女たちは、道行く人々の中から気に入った男性を見つけると、格子の隙間からこの“吸付たばこ”を差し出し、男性がそれを吸えばOKの意だったようです。“吸付たばこ”は愛情の証(あかし)とされ、人気の男性には次々と“吸付たばこ”が差し出されました。
さらに遊女と親密になると、夫婦(めおと)キセル(火皿がひとつで、火皿を中心軸にして吸口が二本に分かれたキセル)を2人同時に楽しみ、よりムードを盛り上げたとか。まさしく遊廓におけるキセルは、男女の想いをはかるバロメーターだったと言えるでしょう。
浮世絵の種類――美人画の世界

浮世絵の種類――美人画の世界
美人画と遊女・町娘 浮世絵の種類――美人画の世界
美人画と遊女・町娘    
美人画と遊女・町娘 当時全盛似顔揃 扇屋内花扇
 / とうじぜんせいにがおぞろい おうぎやうちはなおうぎ 
当時全盛似顔揃 扇屋内花扇
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Utamaro Kitagawa喜多川歌麿
喜多川歌磨の「美人画」に頻繁に描かれているのが、吉原遊廓の高級遊女の源氏名で知られる“花扇(はなおうぎ)”。この名は代々襲名されていますが、歌磨は主に、知性と教養も高かったと言われる四代目を描きました。右手に朱羅宇(しゅらう)の長キセルを持ち、左手でさりげなくかんざしを直す仕草が、なんとも艶やかです。
三十六花撰 角つた屋ひとまち
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三十六花撰 角つた屋ひとまち
一筆斎文調Bunchou Ippitsusai

鏡に向かって今宵の粧いを見直している遊女ひとまちに、禿(かぶろ)がキセルをすすめる様子が描かれた「美人画」。部屋の入り口には蔦(つた)を染め抜いたのれんがかかり、黒塗りにききょうの花が描かれたたばこ盆、出窓の前に置かれたお歯黒用の金だらいなど、遊女の部屋の様子がうかがえます。
  張見世  / はりみせ
 
Utamaro Kitagawa喜多川歌麿 張見世
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高級遊女である太夫(たゆう)を中心に遊女たちが並んで座り、客を待つ姿が描かれています。遊女たちの前に置かれているのは、格付けに合わせたたばこ盆。太夫をはじめ格子(こうし)や局(つぼね)などのたばこ盆には、見事な蒔絵が施されているのが分かります。ちなみにこのたばこ盆は、指名された遊女とともに客室へ。遊郭や遊女たちにとって、たばこ盆やキセルは必需品だったのでしょう。
 
お仙茶屋
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お仙茶屋 / おせんちゃや
鈴木春信Harunobu Suzuki

浮世絵に描かれたことがきっかけで、たちまちアイドルとなった茶屋の娘、おせん。作者である鈴木春信が、好んで描いた女性のひとりです。江戸谷中の笠森稲荷の前にある茶店「かぎ屋」の娘で、おせん目当ての客がたくさんいたとか。浮世絵に描かれている、お高祖頭巾(おこそずきん)の若い武士もそのひとりで、自慢のキセルを手に、おせんにアピールしようとしています。
  ほぐぞめ ほぐぞめ
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Kuniyoshi Utagawa歌川国芳

歌舞伎『ほぐぞめ 八重桐・嫗山姥(こもちやまんば)』の一場面を描いた、歌川国芳作の『ほぐぞめ』。キセルの掃除をしている元遊女が着ている着物は、当時流行していた、反古(ほご)染めと呼ばれる文字を散らした柄。この浮世絵は、呉服屋の宣伝としても描かれたと言われています。
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