浮世絵とたばこの世界 其の弐

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  浮世絵の種類――役者絵の世界
役者絵とは――
もともとは、芝居小屋の看板絵が発達してできたものと言われている「役者絵」。現在のように写真技術がなかった江戸時代、歌舞伎役者を描いた「役者絵」は相当な人気アイテムだったようです。
当初は、描かれている家紋でどの役者かを見抜くというように、役者の顔はみな同じように描かれていました。その後、葛飾北斎が学んだことでも有名な勝川春章以降から、実物の役者と似せて描くことが主流に。
「役者絵」は、歌舞伎のワンシーンや役者が役になりきっている姿を描いているものが多数ですが、中には、楽屋裏の姿やまったくの素顔を描いたものもあります。歌舞伎界の名跡、市川団十郎や松本幸四郎、尾上菊五郎などの代々が「役者絵」のモデルとして描かれてきました。
また、歌舞伎の宣伝のためにも浮世絵が用いられ、公演される前に制作される「見立て」、公演中に制作される「中見」の2種類の浮世絵が発売されました。

歌舞伎の中のたばこ――
キセルやたばこ盆は、登場人物の性格や心理状態を表現する重要な小道具として重宝されています。中でも有名なのが、石川五右衛門で知られる『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』。長さ30センチ余、胴回り20センチ余の巨大キセル(真鍮手綱形太煙管・しんちゅうたづながたふときせる)が、五右衛門の豪胆・勇壮ぶりを印象づけるアイテムとして用いられています。
また、「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」では、助六を誘おうとする遊女たちのキセルが次々と差し出されるシーンが出てきます。そのときの助六のセリフ「キセルの雨が降るようだ……」は、まさしく名セリフと言えるでしょう。
浮世絵の種類――役者絵の世界
浮世絵の種類――役者絵の世界
歌川豊国作
曽我祭侠競

(そがまつりいきじくらべ)
役者絵と歌舞伎役者 浮世絵の種類――役者絵の世界
役者絵と歌舞伎役者  
役者絵と歌舞伎役者 さかなやごろべえ /肴屋五郎兵衛
Sharaku Tousyusai東洲斎写楽
肴屋五郎兵衛
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役者絵と歌舞伎役者 レンブラント、ベラスケスとともに世界三大肖像画家と称されるほど、世界の評価が高い、歌舞伎のワンシーンを描いたこの写楽の浮世絵。どっしりとした太ギセルが、五郎兵衛の“男気”のある性格はもちろん、仇討ちの話を聞いた後の“思案げ”な胸の内までも伝わってきそう。ちなみに、この浮世絵に描かれている歌舞伎役者は、四世松本幸四郎。松本幸四郎家は、現在の九世松本幸四郎や七世市川染五郎など名優を輩出した歌舞伎界の名門です。
五世団十郎と叶雛助
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五世団十郎と叶雛助
歌川豊国Toyokuni Utagawa
上方の俳優である叶雛助が、江戸で芝居をしている団十郎の楽屋を訪れたときの様子を描いた浮世絵。芝居で使用する団十郎のかつらをじっと見つめる雛助と、キセルを片手にその様子を眺めている団十郎。この五世団十郎は、江戸歌舞伎全盛期の名優といわれています。代々の団十郎も名優揃いで、荒事を創始し、現代に伝える市川団十郎家は、歌舞伎界屈指の名門。
  やのねごろう /矢の根五郎 矢の根五郎
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Kiyoshige Torii鳥居清重

七世市川団十郎が、市川家の歌舞伎十八番の中に制定した『矢の根五郎』のワンシーンを描いたもの。矢を研ぎ終わった五郎が、キセルを吸いながらひと休みしているところです。荒事役には欠かせない大ぶりの太ギセルが、戦いに出る男心を代弁しているかのようです。
黒船出入湊
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黒船出入湊 / くろふねでいりのみなと
西村重信Shigenobu Nishimura

大坂(現在の大阪)で起こった、侠客連中のもめ事を脚色した劇を描いた
『黒船出入湊』。描かれているシーンは、たばこ屋が舞台となっています。店先には、たばこと書かれたのれんがかかり、床には葉たばこの産地名が書かれた箱が。江戸時代のたばこ屋さんは、店内で葉を刻んで売っていましたが、芝居では、普通の家に連看板と木箱を2、3個並べてたばこ屋を表していました。
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