HAND MADE PIPES

パイプ作りのプロが語る
美しい木目を生かすために ブライヤー・パイプの魅力は、なんといっても木目の美しさです。木目が生きないとブライヤー・パイプの意味がないですから。形をどうすればいいか、どの角度で削れば美しい木目が出るかと、いろいろと考えをめぐらせています。ハンドメイドでのパイプ作りっていうのは、木の良いところを見つけて抜き取っていくことなんですよ。だからちょっと個性的で大胆な形(作品紹介*1参照)も作りますが、お客様の目線でデザインを考えると優しい形になることが多いですね。
昭和10年生まれ。柘製作所パイプ作家。父親の影響でパイプ制作の道を歩み出し、今年で56年。平均1日1本のペースでパイプを制作。木目をより美しく見せるパイプ作りのため、日々、ブライヤーへの挑戦を続けています。
パイプ作りの楽しさや難しさを語ってくれた福田さん。
機械や紙やすりを使って、丁寧に磨き上げていきます。
発想の転換からユニークな形が 長い間作り続けてくると、木目を見れば、どんな形が合うか、どんな削り方をしていけばいいか直感で分かってくるんですが、削っていくうちに思いがけないところから疵(きず)が出てくることがあるんです(苦笑)。木目の様子はだいたい予測できますが、疵はそうはいかない。この疵っていうのは、原木が成長する過程で砂をかじって……つまり、砂や石などが食い込んでできたもので、疵が出てきてしまったら、これをどうすれば生かせるかを考えるんです。形を変えるのか、それとも仕上げ方を変えるのか……。できるだけスムース仕上げにしたいと思っていますから、発想を転換して違う形にしようとします。そうすると、自分でも予期しなかったユニークな形が浮かんでくることがあるんですよ(作品紹介*2参照)
毎日がブライヤーへの挑戦 パイプ作りをしていて感じる魅力は、作品が仕上がったときの快感ですかね。作っている最中はブライヤーへの挑戦なんです。自分がイメージしたようなパイプができあがるかどうかのね。常に疵が出てこないように拝みながら、削ったり磨いたりしていますよ(笑)。最初から最後までお願いしながらね。だから疵が出てくると腹が立つ、っていうか(笑)。そんなふうに作っていくからこそ、疵をうまく生かして、満足のいく作品ができたときは、本当にうれしいですね。
(2007年9月/福田 和弘氏 談)
工場の一角で作業をする福田さん。周囲にはマウスピースなどのパイプを構成する素材や、紙やすりなど、制作に必要なものが多数置かれていました。
作品紹介
題して「室堂から見た立山連峰」。その名のとおり、旅行で行った立山黒部アルペンルートの室堂から立山連峰を見たときの感動をもとに作ったパイプ。木の表皮を残したラフを利用し、険しい山肌を表現。出かけたときの印象が残っていると、こういう形で作品に生かされることもあります。
疵が出てきてしまったために、発想の転換を余儀なくされてできあがった作品の1つ。疵を避けながら木目の美しい作品を作るにはと思案していたところ、ぱっとこの形が浮かんだとか。アクセントにした下の出っ張りを足にすれば、立てておくことができます。
イルカをイメージして作られた作品。イルカの躍動感を表すため、ボウルの反りをきつくしています。また、木目の広がりを美しく見せるため、パイプの片側には見切りのラインを入れずに丸みを持たせました。この丸みを持たせたことにより、パイプに柔らか味が出てきます。
細い根竹を組み合わせた作品。“ツゲ・イケバナ”の中では定番ともいえる形です。きゃしゃな根竹の形に合うよう、ボウルも小ぶりでチャーミングな形にしました。このような組み合わせのパイプの場合、根竹の形や太さなどのバランスも念頭に入れながら、全体のイメージを考えていきます。
国内外に限らず、工房に属さずに個人でハンドメイド・パイプを制作している「パイプ作家」と呼ばれる人たちがいます。彼らは常に自らの感性を磨き、こだわりのある作品を生み出しています。デンマークのアンネ・ユリアやヨーン・ミッケなどは特に有名。日本でもこの道何十年というベテラン作家のほか、近年では、若手作家も登場しています。
喫煙具専門店や量販店などでは、自分で作れるキットが販売されています。写真のパイプキットには原木のほか紙やすりや染料など、パイプ制作に必要な道具が入っています。原木だけも販売しているので、2つ目、3つ目に挑戦したい人はこちらを選ぶといいでしょう。
ハンドメイド・パイプ作りに必要な道具をそろえたパイプキット。
制作経験のある人に向けた原木も販売されています。
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