HAND MADE PIPES

ハンドメイド・パイプの魅力
フライヤー・パイプの発展
 19世紀にブライヤー・パイプが作られるようになると、ヨーロッパでは、それまであったクレー・パイプやメシャム・パイプに比べ、硬くて加工しやすい材質であるなどの理由から急速に発展し、普及していきます。19世紀半ばには、イギリスやフランスでは、パイプの形や寸法などに一定の基準を設け、クラシック・シェイプと呼ばれるブライヤー・パイプの大量生産が行われました。
 これらは一律に作られるため、制作途中では仕上がったときのパイプの木目が意識されていません。しかし、まれにできあがるまっすぐな木目の「ストレート・グレイン」のパイプが珍重されて付加価値を持ち、しかも、木目の幅が密であればあるほど、そのパイプの価値が高まっていきます。
白色粘土を使った素焼きのクレー・パイプ。ボウル部分が小さく、
柄が長いのが特徴。
「パイプの女王」といわれるメシャム・パイプ。海泡石という石で作られ、使い続けるうちに琥珀色に変わっていきます。
ハンドメイド・パイプの誕生
木目の表情がどのようになるかを検討し、おおよその形を記します。
パイプの完成度の高さは、丁寧に磨き上げることで決まります。
 このようにブライヤーの木目が織り成す表情に目をつけたのが、デンマークのパイプ作家です。彼らは“フォルム(=形)と木目の一体感”を目指し、自らの手で1つずつ作り上げるハンドメイド・パイプの制作に力を注ぎます。
 その結果、パイプのスケッチ(=デザイン)から仕上げまで工夫がなされ、従来の型にこだわらない独創的、かつ、個性的な形のパイプが作られるようになりました。このパイプがハンドメイド・パイプと呼ばれるものであり、“素材であるブライヤーの木目を生かしてフォルムを創造した、同じものが2つとして存在しないパイプ”なのです。
3つの主な魅力
《魅力1》木目(グレイン)への飽くなきこだわり
 ブライヤー・パイプは木の根を素材としているため、切り出し方次第で木目の表情が変わります。この木目は大きく分けて2種類あります。
※ここで言う木目とは、正確には木に水分などを運ぶ導管を指します。
ストレート・グレイン
ボウルにまっすぐ縦の木目が通っているもの。木目がより蜜になっているものを良しとしています。
バーズアイ
鳥の目のような丸い木目がびっしりと詰まっているもの。ストレート・グレインのパイプを真横に切断して見た状態と同じになります。
《魅力3》作家のセンスが光る形
 パイプの形は、基本的にベント(=曲線を描くパイプ)とストレート(=まっすぐな形のパイプ。通称ビリヤード)の2種類。ただし、これらはあくまで基本形で、実際にはさまざまな形があります。特にハンドメイド・パイプの場合は、既存の形にとらわれない自由なデザインの、作家の腕とセンスが光る作品が多く見られます。
 また、美術品とも思える作品が作られていることも、注目すべき点と言えます。
基本の形
ベント(左)とストレート(上)のパイプ
《魅力2》表情豊かな仕上げ
 仕上げ方にも木目の表情を引き立てる工夫がなされ、その違いはパイプの印象をも変えてしまいます。また、サンドブラスト仕上げなど、パイプの表面を粗くし、より木目の表情を強調した仕上げもあります。
スムース仕上げ
表面を磨き上げて、ツルツルにしたもの。ワックスなどで光沢を出す仕上げと、ツヤ消しのマット仕上げがあります。
サンドブラスト仕上げ
ガラスビーズ(=砂のように細かいガラス玉)を吹き付けてブライヤー表面を粗く表現したもの。木目の硬い部分を残し、柔らかな部分を削った後で着色します。
個性的な形
ボウルから、マウスピースまでの全体の統一性を考えて作られるため、形はさまざま。ボウルのデザインが大きければ大きいほど、大胆な形になります。
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