伝統ある喫煙具文化を伝えるために

TOP キセルの街だった新潟県・燕市 燕市のキセル作りの現場へpartI 燕市のキセル作りの現場へpartII
伝統ある喫煙具文化を伝えるために 燕市のキセル作りの現場へpartII
image 飯塚昇さんの手作りキセル工房に続いては、 プレス加工式キセルを製作している工場へ。 キセルの量産を可能にした金属プレス機や、 その金型などを見せて頂きました。 image
プレス加工式キセルも基本は手作り
 キセル職人である飯塚さんの工房の隣には、プレス加工式キセルの製造工場があります。とはいえ、機械で作るのは金属部分である雁首(がんくび)と吸口のみで、他の工程はほとんど手作り。洋白(=銅合金の一種。光沢のある銀白色で加工性に富む)や四分一(=銅3:銀1の合金)などの素材を用い、デザインの異なる雁首・吸口に、適切なサイズの羅宇(らう)を差し込んで完成品へと仕上げていきます。

写真 長さを揃えた羅宇に雁首、吸口をあてがい、叩いて差し込んでいるところ。慣れた手つきのもとで、次々にキセルが完成していきます。
羅宇(らう)竹は中国産を使用
line 写真 羅宇キセルに欠かせない竹には、かつては神奈川県・箱根市に自生している箱根竹と呼ばれるものが多く用いられていました。 line
line 現在は調達が難しくなり、筆軸を扱う業者からも煙管に適した竹を入手。小紋柄の模様付けなどの加工は、左記の工場内で行っています。 line
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─プレス加工式キセルの製作に欠かせない金属プレス機─
写真 プレス加工式キセルの雁首と吸口を作るのが、こちらの金属プレス機。この機械の開発によって、安価で質の良いキセルが量産できるようになり、燕市は日本一のキセル生産地となったのです。
プレス用の金型
羅宇キセル用の金型。
いくつかの型に分けて段階的に成型し、火皿の取り付け手前まで仕上げていきます。
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雁首部分の原型に見られる 手作りとプレス加工式の違い
プレス加工式 手作り
 上に並べたのは、雁首部分を作る延べ板の原型。プレス加工式の方は左右対称、これに対して手作りの方は左右非対称になっています。プレス機で均等に圧力をかけて成型するプレス加工式と、手仕事によって金槌(かなづち)で徐々に成型していく手作りとの差が生んだこの違い。成型後は合わせ目の位置が、プレス加工式は火皿の正面に、手作りは火皿の左側面に来ます。
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─ろう付けは、より便利な方法で─
成型したキセルの合わせ目を溶接する「ろう付け」。かつては、足踏みふいご()で炎を調整し、微妙な温度管理で慎重に行っていたこの作業。現在では、安定した温度調整が簡単にできるプロパンバーナーが使われています。
火力を強めるために用いる送風装置。古くから金属の精錬や加工に使用されていた。

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熱せられたろうが溶け、合わせ目に溶けこんでいきます。
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溶接された雁首。ここから磨きをかけて仕上げられます。
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ろうが塗られた雁首を台座にきれいに並べ、バーナーで加熱していきます。
伝統あるキセルを残すために  
 
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 定年後、再び始めたキセル作りを日々楽しみながらやっているという、飯塚昇さん。キセル作りの伝統を広く知ってもらうため各地の展示会に積極的に参加するだけでなく、金属加工の技術書を読んだり、過去のキセル職人の名品を研究したりと、職人としてさらなる高みを目指す姿勢は真剣そのもの。作ってみたいキセルは? との質問に、「たくさんありすぎて分かりません」と笑っておられました。
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 そして、プレス加工式キセルを現在も作り続けている飯塚金属(株)も、全国で開かれる伝統工芸品の展示会などに出品するなど、キセル作りの息吹を後世に伝えるよう日々努力をしています。
 かつてキセル生産日本一を誇った、新潟県・燕市。そこでは今でも、日本の喫煙文化の伝統を伝えるキセルが日々作られているのです。
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2006年6月6日〜12日に「新潟三越」で開催された「新潟 伝統の手業展」に参加し、手作りキセルの実演・販売をされた飯塚さん。開催中は飯塚金属(株)のプレス加工式キセルも併せて並べられ、訪れた人々の関心を大いに引いていました。 ポスター
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