シガーとともに歩む島国・キューバ
ヨーロッパ人とシガーとの出会いは、15世紀の大航海時代までさかのぼります。1492年、黄金の国・ジパングを目指し、大海原へと旅立ったクリストファー・コロンブス。長い航海の末、カリブ海の島の1つであるサン・サルバドル島に到着します。
コロンブスとともに、この未知なる地を探検していたメンバーの中に、ロドリゴ・デ・ヘレスとルイス・デ・トレスがいました。2人は同じくカリブ海に浮かぶキューバ島で、巻いた葉に火をつけ、煙を嗜むという現地住民の不思議な習慣を見かけました。これが現在のシガーのルーツ。ヘレスとトレスは、シガーを初めて目撃したヨーロッパ人だといわれています。
アメリカを発見したコロンブス。
コロンブスが制作したとされる地図。
ヨーロッパに伝わったたばこは、はじめは嗜好品でなく、薬草として重宝されました。1614年、スペインのフェリペ3世は、キューバ島以下、植民地にした南米各地での葉たばこ栽培を許可。ただし、外国との取引を禁止し、スペインのセビリアへのみ輸出を許しました。たばこで得られる莫大な富は、国の財政に不可欠だったのです。なお、この頃には、すでにキューバの葉たばこがシガー用として最上級の品質と認知されていました。
さらに18世紀に入ると、スペインはたばこ製造のための機関を次々と設立。1717年にはたばこの独占機関、1740年に王室貿易会社、そして1770年には、20世紀の半ばまで世界最大の規模を誇った王立たばこ工場を建造します。
スペインのセビリアにある王立たばこ工場は、現在セビリア大学の校舎として利用されている。
(Anual/Wikipedia)
スペインで親しまれていたシガーでしたが、ヨーロッパのほかの地域では、同じたばこでもスナッフ(=嗅ぎたばこ)が人気でした。シガーが広く嗜まれるようになったのは19世紀初頭から。ナポレオンのスペイン侵攻をきっかけに、駐留したフランス兵が広めたとされています。
キューバでシガーが本格的に生産されるようになったのは、18世紀前半頃。当時のシガー工場は「Chinchales(チンチャレス)」と呼ばれる、小規模なものでした。
1821年、それまで統治者であるスペインに独占されていたキューバのたばこの生産、製造、販売が自由化されると、次々とシガー・ブランドが登場。工場も数多く作られ、当時のハバナには、1300ものシガー工場があったといわれています。
収穫された葉たばこを乾燥させている様子。
シガー工場には、職人が1本ずつ手巻きするところと、
機械が自動で巻くところがある。
(T photography / Shutterstock.com)
高級ブランドでは、リングを巻いたり、
箱に詰めたりするのも手作業で行う。
(T photography / Shutterstock.com)