役者絵

乱れ咲く花形役者役者絵の醍醐味は、何と言っても版面いっぱいに描かれた役者たちの姿。第二章では、人々を魅了したこの姿絵と花形役者たちを、役者の家にちなんでつけられた屋号とともにご紹介します。
第一章 歌舞伎ブームを牽引 第二章 乱れ咲く花形役者 第三章 役者が挑んだ名場面 TOP
音羽屋  尾上菊五郎  おのえきくごろう
自他ともに認める美男だった音羽屋(おとわや)の3代目 尾上菊五郎は、立役(たちやく)=男役から、女形まで、さまざま役を演じました。画中には細身のキセルを手に、体をくねらせて後ろを振り返る妖艶な姿が描かれ、菊五郎の美しさを物語る1枚となっています。

『追善累扇子
(ついぜんかさねおうぎ)』
文化14(1817)年
歌川豊国(とよくに)画

わずか10カ月の活動期間で百数十点もの浮世絵を残した謎多き絵師・東洲斎写楽が、高麗屋(こうらいや)の4代目 松本幸四郎を描いた作品です。幅広い役をこなす役者として人気を誇っていた幸四郎が、義侠の魚屋に扮したこの作品では、キセルを手に何事かを思案するさまが実にリアルに表現されています。

『敵討乗合噺
(かたきうちのりあいばなし)
四代目松本幸四郎の肴屋五郎兵衛』
寛政6(1794)年
東洲斎写楽画

高麗屋 松本幸四郎 まつもとこうしろう
成駒屋 中村芝翫 なかむらしかん
たばこ盆を手に奥の間の様子をうかがう男…。演じる成駒屋(なりこまや)の4代目 中村芝翫は、浮世絵師・豊原国周(くにちか)に『いくら骨を折って描いても実物の方がきれいだ』と言わしめた風貌の持ち主。愛嬌あふれる芸風で絶大な人気を誇り、俗に「大芝翫(おおしかん)」と呼ばれました。

『双蝶色成曙
(ふたつちょういろのできあき)』
元治元年(1864年)
豊原国周画

「歌舞伎十八番」を制定した成田屋の7代目 市川團十郎は、芸域の広いことで知られていました。絵の中で手にした手ぬぐいに見られる「鎌」の模様は、市川一門のシンボルである“鎌○ぬ(=構わぬ)”の意匠の一部であり、彼は自身が愛用する喫煙具にもこの意匠を用いました。

『七代目市川団十郎』
文化年間(1804~1818年)ごろ
歌川豊国画

成田屋 市川團十郎 いちかわだんじゅうろう
松嶋屋 片岡仁左衛門 かたおかにざえもん
江戸と上方(=京都・大坂)の両地で活躍した松嶋屋の8代目 片岡仁左衛門は、上品な色香を感じさせる美男として人気を博し、立役・女形ともに通じた役者でした。たばこ盆の前に座し、喫煙しながら辺りを伺う表情からは、精悍さも漂います。

『仮名手本忠臣蔵
(かなでほんちゅうしんぐら)』
文久2(1862)年
歌川国明(くにあき)画

ほっそりとした面長の顔立ちと、くるりとした愛嬌のある目の持ち主だった大和屋の5代目 岩井半四郎は、“眼千両(めせんりょう)”と讃えられ、絶大なる人気を誇った女形です。あでやかに着飾り、キセルを片手に一服する花魁(おいらん)姿で多くの人を魅了しました。

『岩井半四郎』
文政4(1821)年
歌川国安(くにやす)画

大和屋 岩井半四郎 いわいはんしろう
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