INTERVIEW & COLUMN
2024/25シーズン
インタビュー&コラム
2024/12/25
【2024-25 大同生命SV.LEAGUE】
シーズンコラム
大同生命 SV.LEAGUE開幕!広島サンダーズはハビエル・ウェベル新監督のもと、新たなスタートを切った。
難敵相手に0対2から、5シーズンぶりのフルセット勝ち
大同生命 SV.LEAGUEの新たな幕開け――。
広島サンダーズは昨シーズン、3位決定戦で敗れた悔しさを糧にハビエル・ウェベル新監督のもと、新たなスタートを切った。
10月12日、ホームの広島グリーンアリーナで迎えた開幕戦。東レアローズ静岡にフルセットの末に勝利を収めたが、翌日は1対3で敗戦を喫した。サーブから主導権を握った東レアローズ静岡の勢いに屈したのも敗因ではあるが、ハビエル監督が合流直後からチームに繰り返し求め、植え付けてきた「システムがうまく機能しなかった」と敗因を述べたのはチーム最年長のミドルブロッカー、安永拓弥だ。
「監督が来てから少しずつ自分たちの中で形になった手応えはありました。でも本番の試合になると違いも出てくる。オプションがハマることもあるけれど、うまく回らずに焦りが出てしまうこともあるので、だからこそシンプルに。監督が僕らに伝えて、落とし込んでくれているシステムを遂行できるように信じて、まずは自分たちのクオリティを上げていきたいです」
その成果が最高の形で発揮されたのが開幕次節、10月19日の大阪ブルテオン戦だ。チーム名が変わる前から、多くの選手が「意識するわけではないけれど、苦手意識もどこかにある」と口を揃えるように、リーグ戦では実に5シーズン勝ち星がない相手でもある。時に一方的とも言える展開で敗れたこともあった相手に対して、3対2でフルセットの末に劇的な勝利を収めた。ハビエル監督も「2セットを落とし、相手に大きくリードされた状況からきっかけをつかみ、第3セット以降はアタック、サーブ、ブロックのディフェンスシステムがとてもよく機能した」と勝因を述べ、選手たちに向け「誇りに思う」と称えたように、チャレンジしているスタイルは決して間違いではなく、機能すればどんな相手にも勝つことができると証明してみせた。
悔しさを糧に爆発したエース
だが、これまでは苦手意識すら抱いていた相手に対して勝利することがあった一方で、以前ならば負けることのなかった相手に敗れることもある。特に大同生命 SV.LEAGUE初年度の今シーズンは、広島サンダーズだけでなく多くのチームが監督や外国籍選手が変わり、移籍選手も加わるなど変化の大きいシーズンでもある。
広島サンダーズも大阪ブルテオンから勝利し、自信を得たがその後東京グレートベアーズに連敗を喫した。さらに勝負の難しさを実感させられたのは、11月9日のVC長野トライデンツ戦だ。昨シーズンまでの勝ち星の数や対戦成績だけを見れば対戦前から広島サンダーズの勝利を確信する人のほうが多かったはずだ。だが試合の中で積極的にメンバー交代を図り、交代選手の活躍で勢いに乗った相手を止めきれず、フルセットの末に敗れた。
言葉少なに悔しさを噛みしめる選手たちの中で、より強く敗れた悔しさを噛み締めていたのが新井雄大だ。今シーズンの開幕前から、エースとしてチームの柱となる覚悟を幾度となく述べてきた。
「ハビさんが来て、細かいシステムはもちろんですが、攻撃面に対してもいろんなアドバイスをしてもらって、自分の中でもものすごく腑に落ちるというか、自分のパフォーマンスも上がっているのを実感してきました。自分個人としても、チームを引っ張る、自分が崩れたら負けるし、いい意味で自分のでき次第で勝敗が変わると思っているので、今まで以上に覚悟を持ってやらなきゃいけない、と思っています」
だからこそ、引っ張るべき自分が引っ張れずに負けた悔しさはひとしおだ。VC長野トライデンツ戦の直後、試合を終えての感想を求められると「まだあんまり整理できていないし、非常に悔しいです」と悔しさをにじませた。だが、だからこそ下を向くのではなく前を向く。
「やり返すチャンスはある。明日は絶対に勝ちたいです」
そして有言実行とばかりに、翌日のVC長野トライデンツ戦ではベストパフォーマンスを発揮した。前日はブロックにかかる場面や、ラインを割ることもあったスパイクが、前衛、後衛を問わずに面白いように決まる。武器である跳躍力を活かした力強いパワーあふれるスパイクを次々決め、3対0でストレート勝ちを収め、見事にリベンジを果たしただけでなく、スパイク決定率に目を向ければ81.8%という驚異的な数字を残した。
新井自身も「キャリアハイに近い数字を残すことができた」と笑みを浮かべたが、驚愕、と言いながら称えたのは安永だ。
「(広島サンダーズに)入ってきた時から新井はずっとすごい選手でしたけど、今はチームを引っ張ってくれるし、精神的にも頼りになる存在。本来は僕らが担わなければならないポジション、役割も新井がやってくれて、なおかつスパイクを打たせれば80%を超えるようなとんでもない数字を叩き出す。『やっぱりスターだな』と思いました」
冗談まじりの称賛に照れ笑いを浮かべた新井も、原動力になったのが悔しさであることを明かした。
「昨日の負けが本当に悔しかった。なんとかしてやろうと思ってコートに入ったので、こういう結果になったことは素直に嬉しいですし、悔しい経験も糧にしていけるように、これからも取り組んでいきたいです」
大切なのは「試行錯誤を続け成長し続けていくこと」
18試合を終えて7勝11敗、プレーオフ争いのボーダーライン上である6位につけている。満足できる結果ではないとはいえ、悲観する結果でもない。各チームの戦力が固まり、戦い方の形が出来上がる後半戦に向けてさらに加速すべく、1つ1つ積み上げていくだけ。
ハビエル監督が言った。
「チームはまだまだ成長過程にある。システムが機能する試合もあれば、機能せず苦しむこともあり、パフォーマンスに波が生じて敗れる試合もあります。でも大切なのはその1試合1試合の勝敗に一喜一憂することなく、試行錯誤を続けて成長し続けていくこと。技術的にも戦術的にも、まだまだここから成長の余地があるチームであり、選手たちであることを私は信じています」
まだまだ、ここから――。
どんな困難も全員の力を結集して乗り越えていく強いチームになるために。悔しさも次に爆発するための力に変えるべく、一歩ずつ着実に歩み続けていくだけだ。