INTERVIEW & COLUMN
2024/25シーズン
インタビュー&コラム
2025/03/14
【2024-25 大同生命SV.LEAGUE】
シーズンコラム

チャンピオンシップ進出に向け、まさに一戦必勝。トーナメントさながらの熱い戦いを繰り広げてきた。
準々決勝敗退の天皇杯も「ハイキュー!!で見た舞台」
チャンピオンシップ進出に向け、まさに一戦必勝。レギュラーシーズン中盤、広島サンダーズは毎試合、トーナメントさながらの熱い戦いを繰り広げてきた。
昨年末、アウトサイドヒッターのオレオル・カメホ・ドルーシーが負傷し戦列を離れた。高さという武器だけでなく豊富な経験も持つカメホの離脱が与える影響は決して小さなものではない。だが、チームが危機に見舞われる、いわばピンチの状況はプラスへと転ずるチャンスの時でもある。カメホ不在のチームを攻撃の柱として牽引したのが、2m12cmのオポジット、フェリペ・モレイラ・ロケだ。

昨年末の天皇杯、日本でのプレーが初となるロケにとっては、連戦が続くトーナメントも1会場で4コート同時に試合をするのも初めて。外国籍選手によっては「隣のコートのホイッスルと混ざって試合がしにくい」と必ずしも好意的な意見ばかりではないのだが、天皇杯初戦を終えたロケは、目を輝かせた。
「マンガで読んだ『ハイキュー!!』でも、1会場にたくさんのコートが並び、一斉に試合をするシーンがありました。あの時自分が読んでいた舞台を経験しているんだ、と思うと嬉しくてとてもワクワクしました」
パフォーマンスも圧巻だった。高い打点からの鋭いスパイクを次々お見舞いし、得点を叩き出す。天皇杯は準々決勝でウルフドッグス名古屋に敗れたが、再開したSVリーグのレギュラーシーズンではジェイテクトSTINGS愛知にフルセットの末に勝利した。2024年最後の試合を劇的な勝利で飾る立役者となった。
カメホ不在の間を支えたアウトサイドヒッターたち
2025年、新たな年がスタートしてからもカメホ不在の間、アウトサイドヒッターの選手たちが躍動した。攻撃の柱となるのは、コートキャプテンも務める新井雄大。今シーズンはリーグを通して高い攻撃力、パフォーマンスを発揮し続けているだけでなく、勝負どころでの決定打などエースとしての姿を存分に発揮してきた。
加えて、新井の対角に入る坂下純也、山本将平、武智洸史。それぞれディフェンス力やサーブ力に長け、豊富な経験を誇る選手たちが持ち味を発揮した。チャンピオンシップ進出の6位を争う日本製鉄堺ブレイザーズとの連戦も連勝で飾り、ジェイテクトSTINGS愛知にも再び勝利。選手たちも「チームとしていいバレーができれば勝てる、という手応えを掴めた」と口を揃えた。

サントリーサンバーズ大阪、大阪ブルテオンといった上位チームには敗れたが、敗戦の中でもセッターの金子聖輝が「相手の攻撃に対しても自分たちのブロックディフェンスが機能すれば戦える自信がある」と話したように、ハビエル・ウェベル監督の就任以後、監督が掲げるディフェンスシステムが徐々に構築されつつある手応えも感じていた。
負けられない一戦が続く中でも、終盤の巻き返し、チャンピオンシップ進出はもちろんそこからの上位進出に向け重要な試合となったのが、2月8、9日の東京グレートベアーズとの連戦だった。

序盤は、まさに広島サンダーズの武器であるシステムが完璧に近い形で機能した。相手の攻撃をブロックでタッチをとってつなげ、また別のシーンではブロックの横や上、抜いたコースに入ったレシーバーがしっかりつなぐ。中心になったのはミドルブロッカーの安永拓弥と三輪大将、リベロの高木啓士郎だ。
強打だけでなく軟打も織り交ぜる東京グレートベアーズの攻撃に対して、ミドルブロッカーがコースを塞ぎ、ブロックの裏を狙ったフェイントボールは高木が拾う。レシーブでつないだボールを金子がつなぎ、ロケ、新井が決める必勝パターンともいう展開へ持ち込みリードを得る。見せ場は2対1で広島サンダーズがリードして迎えた第4セットの中盤だった。
東京グレートベアーズの攻撃をブロック、レシーブでつなぎ長いラリーが繰り広げられる。コート外に飛ばしたボールに坂下が食らいつき、上がったボールを高木がフォロー。
「純也さんが上げてくれると信じていたので、自分も絶対につなごうと思った。ネットの近くに寄せれば、雄大さんが決めてくれると信じて持っていきました」
その期待に応え、高く上がったハイセットを打ち切ったのは新井だ。
「難しいシチュエーションでしたが、ネット際に上がってきたのでここは打ちに行くしかない、と思い切り攻めました。相手のブロックが手を引いたのが(空中で)見えたので、身体は外を向きながらもコントロールして、迷わず打ちました」
残ったもう1枚のブロックに当たり、コート外へと飛ぶ絶妙なスパイクをロケも「素晴らしい」とばかりに称え、3対1で激戦を制した。チャンピオンシップ進出に向けて負けられない一戦であったことに加え、どうしても負けたくない理由があった、と新井が言う。
「前回、僕らのホームで東京グレートベアーズと戦った時に、本当に悔しい負け方をした。映像を見ながらも、悔しくてたまらなかったので、絶対に次は勝ってやる、と思っていた。実行することができて嬉しいです」
待望のカメホ復帰「神様に感謝したい」
32試合を終え12勝20敗。順位を1つ下げ、現在は7位。依然としてチャンピオンシップ進出をかけた負けられない戦いは続く。1戦、1勝、1敗の重さがのしかかり、敗戦の後には肩を落とす選手たちの表情も曇るが、まだまだここから、挽回は十分に可能だ。
2月1、2日の大阪ブルテオン戦から本格復帰したカメホも試合から離れる期間が長く、まだ万全な状態ではないとはいえ、2度のケガという苦しい状況から復帰を果たした喜びを素直な言葉で示した。
「2回目にケガをした時はとても落ち込みました。でも、プレーできない時間もポジティブに考えるようにした。フィジカル面でできることに励み、カムバックするためにハードなトレーニングをして追い込みました。また戻れる、復帰できると信じてやり続けてきたおかげで、またこうして戻って来ることができた。神様に感謝したいです」

悔しい敗戦が続く時も、きっと同じだ。
敗れた後は課題ばかりが先行し、悔しさが頭の中を占めるが、そこで諦めたら次はない。必ず次は勝てると信じて臨んだ東京グレートベアーズ戦でリベンジを果たしたように、チャンピオンシップ進出をかけるレギュラーシーズン終盤の戦いも、かならず「できる」「勝てる」と信じて臨めば、求める結果はついてくるはずだ。
ハビエル監督が言った。
「ここまで選手たちが、どんな時も最後まで戦い続ける姿勢を貫いてきたように、これからも最後まで戦いきること。カメホもカムバックを果たし、チームとしてのレベルは間違いなく上がっています。これからも変わらず自分たちを信じて、いい準備をして、どの相手にも勝ちにいくだけです」
困難な道も、信じればきっと拓けていく。この壁を乗り越える努力を重ねてきた。自分を、仲間を信じてただひたすら、勝利を目指し戦い続ける。
