2023/12/08

COLUMN

2023/24シーズンが開幕
強敵に勝利し、12勝2敗で
3位の好スタート!

今シーズンのJTサンダーズ広島は何かが違う。開幕から好スタートを切った彼らの戦いが始まった。

新加入の前田、三輪が躍動

いよいよ幕開けした新シーズン。開幕戦から「今シーズンのJTサンダーズ広島は何かが違う!」と期待を抱かせる、好スタートを切った。
10月21日、ホーム・広島県福山市で迎えた開幕戦。JTサンダーズ広島はサントリーサンバーズと対戦した。昨シーズンはV・レギュラーラウンドで4度対戦するも、結果は4敗。今シーズンから主将に就任した井上慎一朗は、昨シーズンに限らず、突き付けられた大きな課題についてこう言った。
「自分たちよりも(順位が)下位のチームには勝つけれど、上位のチームには勝てない。ただ“勝てない”という結果だけでなく、自分たちの力を出し切ることもできずに負けてしまうことが多かったので、見ていてもおそらくワクワクするような試合ができていませんでした」

ラウル・ロサノ監督が指揮を執る2年目のシーズン。昨シーズンは16勝20敗で7位に終わったが、今シーズンはV・ファイナルステージ進出、さらにはそこから一気に頂点を目指すべく始動した。そのために不可欠なのが、ロサノ監督も「ハイレベルなVリーグの中でも、さらにトップレベルのチーム」と称するサントリーとの対戦は、開幕戦とはいえ今シーズンを占う意味でも大事な一戦となった。

その重要な試合で、JTサンダーズ広島の新たな一員として鮮烈なデビューを飾ったのが今シーズン、移籍加入したセッターの前田一誠と、ミドルブロッカーの三輪大将だ。リーグ優勝の経験も持つベテランの前田は、攻撃陣の長所を活かすべく、高さと伸びのあるトス、さらに相手ブロックを観察しながら、無理に振るのではなく序盤からさまざまな仕掛けを織り交ぜたトスワークで、アーロン・ジョセフ・ラッセル、江川、新井雄大といったJTサンダーズ広島が誇る強力な攻撃陣を操る。
直前まで五輪予選に出場したラッセルや江とコンビを合わせる時間は限られていたが、そんな心配は無用、とばかりに、気持ちよく打ち切り、得点を重ねていく。堅守のサントリーに対して2セットを連取し、第3セットは失ったが、第4セットも前田、ラッセルのサービスエースや三輪の機動力を生かした攻撃で得点を重ね、3対1で押し切り、開幕を勝利で飾った。

新天地での1勝。前田、三輪は互いに「勝ててホッとした」と安堵の表情を浮かべながら、序盤はなかなかうまくいかなかった、と明かすも、前田は「リーグ戦でお互い一緒にやるのは初めてなので、難しいだろうということも想定していた。僕のトスが低かったのが問題で、三輪は同じタイミングで入り続けてくれたので、終盤になっていい決定率につながった」と言い、三輪も「相手に分析されていて、得意なコースに(レシーブが)入っていたのでなかなか決まらなかったけれど、少し(トスを)高くしてもらって、セットを重ねるごとに合ってきた」と、コンビで培った信頼関係と、修正力の高さをうかがわせた。
何より大きいのは、昨シーズンは歯が立たなかった相手に勝利したこと。井上が言った。
「この開幕戦での勝利は“何かが違う”と見せることができたのではないかと思います。前田さんも三輪もまだ合流したばかり。これからどんどん強くなるチームなので、期待していただきたいです」

「誰かに頼るのではなく言いたいことを言い、支え合えるチーム」

主将の言葉通り、JTサンダーズ広島の快進撃は続く。昨シーズンなかなか勝ち切れなかった相手に開幕戦で勝利したように、今シーズンの特徴は、一度追い込まれてもそこから立て直す底力がついたこと。さらに選手個々へと目を向けると、なかなかうまくいかずに交代するセットや試合があっても、また次のセットや試合で復活する。逞しい姿が見られることだ。

象徴的なのが雪の降る旭川で行われた、今シーズンV1初昇格を果たしたヴォレアス北海道との試合だ。スタメン出場したルーキーの川口柊人が「自分の役割を一生懸命果たしたい」というように、この試合ではスパイク、ブロックだけでなくサーブでも連続得点を挙げ、崩したところをラッセルや江、三輪のブロックで仕留め、11対13から14連続得点を挙げ25対13と圧倒的な強さを見せる中、唯一、相手の緩急をつけたサーブに崩され、苦戦を強いられたのがアウトサイドヒッターの新井だった。
今シーズンは日本代表としてアジア競技大会にも出場し、持ち前の攻撃力で活躍。銅メダル獲得にも貢献した。JTサンダーズ広島でも攻撃の柱としての期待が集まる中、見事なパフォーマンスを発揮してきたが、ヴォレアスとの一戦では思わぬ苦戦を強いられ途中交代を余儀なくされた。
そのピンチを救ったのが、新井と同期の坂下純也だ。安定したサーブレシーブと、相手ブロックが揃う状況でもうまくタッチを取って切り返したかと思えば、立て直したところから別のコースに打つ巧さを発揮。ロサノ監督も「チームのバランスを考えて、非常にいい働きをしてくれた」と手放しで称える活躍で、チームを勝利に導いた。

そして翌日、坂下がスタメンで出場したがヴォレアスのブロックに阻まれ、攻撃が通りづらくなったところで投入された新井が今度は爆発する。高い打点からのスパイクや、ブロックが揃う状況でも空いたコースへうまく打ち、また別の状況ではあてて飛ばす。最大の武器である攻撃力を存分に発揮。見事なリベンジを果たした。
「何が何でもやってやろう、という気持ちで入ったので、まずは勝ててホッとしました。今シーズンで3年目、ずっと試合に出させてもらってきたので、誰かに頼るのではなく自分がチームを引っ張るぐらいの気持ちでいるし、遠慮せず、全員が言いたいことを言い合って、フォローできるのも今シーズンの強み。僕自身も純也に助けてもらって、助け合って。これからも課題を解決して、もっと強くなっていきたいです」

19名すべてが戦力「より素晴らしいバレーを楽しみに」

開幕戦のサントリーからの勝利に続き、12月2、3日に山口で行われたホームゲームでは、昨年の覇者、ウルフドッグス名古屋に連勝。ここまでの好調が、決して偶然ではなく、自力が高まっていることを証明して見せた。
しかも、ただ勝っているだけでなく、たとえその試合で不調だとしても、代わって入った選手が活躍する。ベンチの雰囲気も明るく、タイムアウト時にはそれぞれが会話をしながら、全員で戦っている姿が見られるのも、強さを裏付ける証であるのは間違いない。
V・レギュラーラウンドはまだ始まったばかりで、12月8日からはトーナメント戦の天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会が始まる。ここまでの好調ぶりを発揮し、今シーズン初タイトル獲得にも期待が高まるが、まずは1つずつ目標に向けて戦うのみ。ロサノ監督が言った。
「我々のチームは19名すべての戦力が必要で、すべての力が整っています。これからはさらに精度やコミュニケーションが深まり、より素晴らしいバレーボールが見せられる。楽しみにしていてください」
今シーズンのJTサンダーズ広島は何かが違う。そして強い。1戦1戦に胸躍らせながら、さらなる進化と成長を共に楽しもう。