INTERVIEW & COLUMN
2024/25シーズン
インタビュー&コラム
2025/03/18
【2024-25 大同生命SV.LEAGUE】
シーズンコラム

勝ち続ける中でしか見えない課題もあれば、敗れて得られる収穫もある。
大阪マーヴェラスにとって、皇后杯はまさにそんな貴重な経験の場となった。
不完全燃焼の皇后杯で見せた主将の涙
勝ち続ける中でしか見えない課題もあれば、敗れて得られる収穫もある。大阪マーヴェラスにとって、2024年を締めくくる今シーズン最初のタイトル、皇后杯はまさにそんな貴重な経験の場となった。
SVリーグの前半戦では好調に勝ち星を重ね、リーグの上位争いを繰り広げてきた。レギュラーシーズンはまだまだ続くとはいえ、チームが掲げる目標はSVリーグ、そしてトーナメント戦の皇后杯を制し、日本一のタイトルを獲得すること。最初のチャンスが2024年12月、大阪マーヴェラスの地元、大阪で開催された皇后杯だった。

高校生から大学生まで各都道府県を勝ち上がってきたチームがトーナメントでぶつかり合う短期決戦。初戦は東京女子体育大学に3対1で勝利し、準々決勝は同じSVリーグのPFUブルーキャッツ石川かほくに3対1で勝利した。レギュラーシーズンの最中に負けたら終わりのトーナメントを戦うプレッシャーに加え、SVリーグとは使用するボールが異なる。アウトサイドヒッターの西川有喜が「ドライブサーブが手元まで伸びてくる感覚があるので、慣れるまで難しかった」と明かしたように、サーブで攻め込んでくる相手の勢いに苦しむ場面もあったが接戦を制し、ベスト4進出。
しかし、準決勝ではSAGA久光スプリングスの強打に屈し、1対3で敗れた。主将の田中瑞稀は試合後、涙を浮かべながら敗れた悔しさと共に、思い通りのプレーを発揮しきれないもどかしさを口にした。
「練習でやってきたことや、チームとして求めていることがうまく噛み合わない。みんなそれぞれのやるべきことをして、なんとかしようとしているんですけど、一度ズレてしまうと修正するのが難しくて崩れてしまう。やりきって負けたわけではないのが、一番悔しいです」
だが、これで終わるわけではない。むしろ本番はここからだ。
「ここで出た課題をどう生かすか。今負けてよかった、と思えるように。チームも自分自身も立て直します」
学生時代はライバル「いいところを一番知っている」
悔しさを糧に、再び新たな戦いへ。その第一歩となったのが、昨年末、皇后杯の翌々週に行われたアランマーレ山形とのホームゲームだった。
酒井大祐監督が常々「シーズン最後に最高の形にできるように、全員の力を見て、起用しながらチームをつくっていきたい」と話しているように、この試合でも大胆な起用を見せた。先発にはルーキーのミドルブロッカー大山遼、成瀬ももかとアウトサイドヒッターの宮部愛芽世を抜擢した。
アウトサイドヒッターとしてレフトもライトもこなす宮部が「自分も含め、チャレンジできるメンバーで臨んだ」と言うように、試合の序盤からサーブ、スパイクで積極的なプレーを見せる。宮部自身も高い打点からのスパイクを次々にお見舞いし、フロントロー、バックローを問わず「攻め」の姿勢を貫く。当然、相手は宮部の攻撃を封じようとサーブで狙い、少しでも攻撃準備を遅らせようと攻めてきたが「それもわかっていた」と対応してみせた。

「自分はオフェンシブな選手ではありますが、大学時代に(サーブレシーブを担う)パスヒッターとしての経験を重ねて、成長させてもらった。大阪マーヴェラスに入ってからもたくさん練習を積んできたので、狙われても崩されないという自信を持ってプレーできました」
ミドルブロッカーの大山も同様だ。大学時代はミドルブロッカーだけでなくオポジット、ライトポジションに入ることもあった選手だが、「ミドルとして極めたい」と専念することを自身が希望した。それぞれの長所を持つミドルブロッカーが揃う大阪マーヴェラスでのポジション争いは熾烈だが「スピードを生かした攻撃やブロックで、ミドルブロッカーとして柱になるような選手になりたい」と意気込むように、要所でのブロックやラリーを制するスパイクを次々見せる。

皇后杯での敗戦を受け「最初はモヤモヤしていたし、チーム全体もうまくいかない時もあった」と振り返るが、だからこそ1つ1つを正確に果たすべく精度にこだわった。
「攻撃に入らせないようにショートサーブが(自分に)打たれる時も、パスをしてから攻撃に入るリズムを一定にして精度を求める。自分のプレーには納得できていないですが、やるべきことをやろう、ということだけはずっと意識していました」
宮部と大山、2人は東海大学と筑波大学で共に主将として切磋琢磨してきただけでなく、中学、高校時代から長くライバルとして戦い続けてきた盟友でもある。対戦相手として向かい合い、互いのことを徹底的に見て、分析し続けてきた間柄だからこそ、宮部は「遼の良さを一番わかっている」と言い、大山も「一番意識する存在で、一番心強い存在」と言い合う。
これまではライバルとして日本一を争ってきた選手同士が、今度は仲間となり、SVリーグという新たな場所で日本一を目指す。宮部が言った。
「新しい環境で、新しいスタートを遼と一緒に歩めるのはすごく心強いし、苦しいことがあるたび、いてくれてよかった、と思う。2人で、これから大阪マーヴェラスの軸になっていきたいです」
「どんな相手に対しても強さを発揮するチームになる」
皇后杯も終わり、レギュラーシーズンもいよいよ終盤へ。32試合を終え、27勝5敗、首位を走るマーヴェラスは2月22日にはチャンピオンシップ進出を決めた。
酒井監督は皇后杯で敗れた後、「僕自身も監督として試合中のコミュニケーションや、選手起用や戦術に対してスピード感に欠けていた」と課題と反省を述べた。まだまだレギュラーシーズンは続き、チャンピオンシップ進出が決まったとはいえ、順位次第で開催地や試合数など有利に働くこともあるため、すべてが大切な試合であることに変わりはない。

ここからさらに加速していくために。酒井監督が言った。
「どんな状況、どんな時でもコートに立つ選手1人1人が一番いいパフォーマンスを出せるように準備すること。
スキル、クオリティ、メンタル、相手にフォーカスするのではなく自分にフォーカスして、どんな相手に対しても強さを発揮できるチームになる。最後の最後で、一番強かったね、と言われるチームになることを目指し続けます」
勝負はここから。頂点へ向け、一歩一歩進んでいくだけだ。
