INTERVIEW & COLUMN

2024/25シーズン
インタビュー&コラム

2024/12/25

【2024-25 大同生命SV.LEAGUE】
シーズンコラム

大同生命 SV.LEAGUE WOMEN開幕! ​成長しながら勝利を重ね、前半戦を首位スタート

2024年10月13日、新生大阪マーヴェラスの新たな船出。大同生命 SV.LEAGUE WOMENが開幕した。

酒井新監督のもと「経験しながら成長する」

2024年10月13日、新生大阪マーヴェラスの新たな船出。大同生命 SV.LEAGUE WOMEN開幕戦。5月まで続く長いシーズンの始まりにすぎないとはいえ、すべてのチームにとってやはりチームのスタートとなる開幕戦は特別だ。だが、例年以上に今年は特別な開幕戦でもある。特に今シーズンから就任した酒井大祐監督にとってはまさに開幕戦は初陣だ。東レアローズ滋賀との初戦を3対2で勝利すると「勝てたことには素直にホッとした」と笑みを浮かべた。
勝ち負けがすべてではない、とはいえ、開幕節を勝利するだけで肩の荷は降りる。酒井監督だけでなく、選手も同じ。今シーズンからマーヴェラスに加わった新戦力の志摩美古都も、開幕戦だけでなく2戦目も3対1で連勝を飾ると「自分の役割を果たすことに必死だった」と述べながらも、連勝という結果に安堵した。

「大阪マーヴェラスは選手層も厚いので、そこで自分がどれだけ強みを発揮できるかはわかりません。でもだからこそ先のことを考えるのではなく今この1試合、目の前の試合に集中してやりきることだけを意識して臨んだので、結果として勝つことができてホッとしました」
1試合1試合を重ね、最後にチームとしてどんな形をつくりあげるか。酒井監督も繰り返し説くのもまさに「経験しながら成長していく」こと。
「すべての試合が大切であることは変わらない。でも、それ以上に大事なのは最後にどんなチームになっていけるかで、今は1つ1つ、積み上げていきながら変化して成長することだと思っています。リーグ自体も長丁場なので、全員が戦力であるのはもちろん、チームとして、選手個々として成長して、最後に強いチームになる。みんなにチャンスがあるし、長い目で見ながら、でも1試合1試合を大切に戦っていくだけだと思っています」

「全員が託したい」抜群の勝負強さを誇る主将

みんなにチャンスがある。まさにその言葉通り、さまざまなメンバーがコートに立ち、それぞれの役割を果たす。開幕節で志摩が活躍したかと思えば、同じアウトサイドヒッターでも10月26日のSAGA久光スプリングス戦ではパリ五輪に出場した林琴奈が出場。守備の安定感に加え、林の持ち味とも言える相手ブロックをうまく利用したプレーで、試合巧者のSAGA久光スプリングスに対しても主導権を与えず3対0で勝利。翌日も3対1で勝利を収め連勝を飾った。
志摩、林といったアウトサイドヒッター陣の活躍が際立つ中、11月3日のデンソーエアリービーズ戦で存在感を発揮したのは西川有喜だ。高さを活かした攻撃で突破口を見出し、ブロック、サーブでも得点を叩き出す。途中で交代する場面もあったが、そのまま気持ちを切らせるのではなく、再びコートへ戻った時には「課題をそのままで終わらせない」と攻撃にも工夫を見せた。

多彩なメンバーが揃うアウトサイドヒッターだが、やはりチームにとって欠かせぬ軸となるのが、昨シーズンに続いて主将を務める田中瑞稀だ。スパイクやサーブ、得点に絡むプレーだけでなく、苦しい時に1点を取り切る。抜群の勝負強さはチームが苦しい時に奮い立たせる勇気になる。まさにその象徴となるのが、主将である田中の存在だ。
チーム内で最も豊富なキャリアを持ち、降格も昇格も初優勝も経験した。だからこそ、大事な1点の重みも誰より知っている。

「試合を終えてデータを見たら、今日はあんまり打っていなかった、とか、決定率もこれぐらいだったんだ、と思うこともあるんです。でも周りからは『今日すごく打っていましたよね』と言われるので、そういう印象を残せたんだと思うし、それならば私の役割は少なからず果たせた、ということ。自分がどれだけ決めたかではなくて、どれだけ勝利に貢献するプレーができるか。今シーズンはこれまで以上に、そういうところを意識して臨んでいます」
チームにとって柱であり軸となる心強い存在。頼れる主将に、全幅の信頼を寄せるのはセッターの東美奈だ。チームを乗らせたい1点や、勝利を引き寄せる重要な1点を「取ってほしい」と田中に託す。
「みんながそれぞれ長所を持っていて、攻撃力のある選手ばかりですが、苦しい時や、この1点、という時はやっぱり私はもちろん、チーム全員が瑞稀さんに託したい。キャプテンとしても、アウトサイドの選手としてもかけがえのない存在です」

地元福島で「バレーボールができる喜び」を噛み締めた守護神

16試合を終えて13勝3敗。今はまだ結果を追う時期ではないとはいえ、首位という成績はプレーオフ進出を見据えれば望むべき成果ではある。しかも11月17日のヴィクトリーナ姫路戦から12月8日の群馬グリーンウイングス戦まで7連勝を飾った。
だがその好調につながるきっかけになったのは、2つの敗戦だ。福島・会津でのデンソーエアリービーズ戦で大阪マーヴェラスは連敗を喫した。1日目は相手の攻撃力や勢いに押され、田中も「今シーズン初めてのアウェイゲーム、気持ちの準備も含めて自分たちが足りていなかった」と振り返ったほど、やるべきバレーがほとんどできないまま終わった。

地元・福島出身の酒井監督にとっては現役時代も含め故郷で試合をするのはこれが初めて。「知り合いも多く、見られている中で戦えるのが嬉しくもあり、難しくもあった」と苦笑いを浮かべながらも、だからこそ、と翌日に向け「(ホームの)デンソーエアリービーズさんを苦しめる姿を少しでも見せられるように準備して臨みたい」と述べた。
敗戦を受け、酒井監督はリベロをそれまでの試合で出場を重ねてきた西崎愛菜から、目黒優佳に代えた。サーブレシーブの安定感だけでなく、コート内でのリーダーシップにも期待を含めた起用だったが、酒井監督と同様に地元・福島での試合で、会津にほど近い郡山出身の目黒が期待に応えて見せた。
何が何でもこの1本を拾う、と気迫のこもったプレーでチームを鼓舞。リベロは得点を取れないポジションではあるが、得点を与えず、味方に得点を取ってもらうことはできるポジションだ、と見せつけるように何本も相手の強打を拾い、チャンスにつなげた。惜しくも試合はフルセットの末に敗れたが、負ける悔しさを力に立ち上がる。目黒の言葉にも力がこもった。
「福島で試合をするのは初めてで、家族や友達も見に来てくれた。1人の選手としては、地元の人たちに最高峰の場所でプレーできている姿を見せられることは嬉しいことだし、来てくれた中には(2011年の東日本大)震災でバレーができなくなった人もいる。こうして試合を見て、改めてバレーボールっていいな、と思ってもらえたら嬉しいし、少しでも勇気を与えるきっかけになれていたら嬉しい。むしろ私自身も、地元で試合ができたおかげで、これからを戦う力をもらいました」
有言実行とばかりに、敗れた悔しさをそのままで終わらせることなく、糧として力に変え、連敗をも打ち消す7連勝という成績につなげて見せた。目黒だけでなく、その時、その場所で1人1人の選手、スタッフ、それぞれが特別な思いを持って戦っている。
その姿が、1人でも多くの人たちの力となり、勇気となるように、と願いながら。
強く、愛され、人の心を惹きつけるために。大同生命 SV.LEAGUE WOMENは、まだまだこれから。1つ1つ、すべての試合や経験がチームにとってかけがえのない財産となるはずだ。