2023/02/27

INTERVIEW

リーグも後半、
V・ファイナルステージへ向け
総力結集
「最後の1点を取り切る
チームになる!」

ここまで重ねてきた一つ一つの勝利、敗れるたびに味わってきた悔しさも糧として。
目指す頂へ向け、これからも最強の“チーム”で戦い続けていく。

皇后杯の悔しさも力に「まだ成長段階」と前を向く

2022年から2023年へ。天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会を挟み、V.LEAGUEは後半戦へ差し掛かった。
昨シーズンの悔しさを晴らすべく、リーグ前半から好調を維持してきたJTマーヴェラスだが、中盤、終盤に向けさらなる勢いを加速するために大きなきっかけを得る大会となるのが、トーナメント戦でもある皇后杯。カテゴリーの異なるチームとの対戦でやりづらさを感じることもあるのは否めないが、日本一を目指すということは、V.LEAGUEでしのぎを削る相手のみならず、すべてのチームに勝利しなければ叶わない。皇后杯はその厳しさを実感する大会でもあり、ファイナルラウンドの初戦、筑波大学戦はまさにそんな一戦となった。

皇后杯前週、大学生は大学日本一を競う全日本バレーボール大学男女選手権大会を戦っていた。その中で筑波大学は優勝候補とされながらも3回戦で敗退。その悔しさを晴らすのが、チーム最後の公式戦となる皇后杯であり、V.LEAGUEも制したJTマーヴェラスはすべてを出し尽くしてぶつかる、絶好の相手だった。失うものはないとばかりに攻めるサーブや、失敗を恐れることなく仕掛けてくる多彩な攻撃に苦しみ、なかなか波に乗ることができない。しかも会場は学生がV.LEAGUE相手に善戦すれば盛り上がる。いわばアウェイのような空気だったが、そんな状況でも揺らぐことなく周囲に声をかけ、盛り上げ続けたのが主将の目黒優佳だ。
「スキや緩みがあったわけではないのですが、攻めてくる相手に対して受けてしまった。まずは1本のパス、スパイクから丁寧にやっていこう、という声はかけ続けました」

最初のパスから攻撃につなげるべく、欠かせない存在がセッターの籾井あきだ。学生に押される劣勢でも表情を変えずに自チームの強みを生かすべく、クールに、かつクレバーに攻撃陣を生かすトスから得点につなげ、粘る筑波大学をフルセットの末に退けた。だが籾井は、勝利を収めた喜びよりも先に課題を口にし、この試合だけでなく常に抱き続けている危機感を口にした。
「試合中も練習中も、もっとここは厳しく追及していかなきゃダメだ、と思うことがたくさんあるし、そのたび(昨シーズンで引退した小幡)マコさんのことが浮かぶんです。もしマコさんがいたら、今のプレーは絶対に見逃さなかっただろうな、こんなプレーをしていたら絶対怒られたよな、って。でもいつまでもマコさんに甘えていられないので、自分が同じように厳しく引っ張っていかなきゃ、と思うけれどまだなかなかできていないので、もっともっとやらなきゃいけないことがたくさんあると実感しています」

続く準々決勝では日立Astemoリヴァーレに勝利し、準決勝進出を果たす。しかし準決勝では接戦の末東レアローズに敗れ最終成績を3位で終えた。

タイトル奪取を誓って臨んだ大会で決勝進出を果たすことができなかったのは悔しいが、まだここが終わりではなく、新たな年に続く始まりでもある。吉原知子監督はこう言った。
「皇后杯(ファイナル初戦の)筑波大学戦も相手はのびのびとぶつかってくる中で、しんどい試合でしたが、そういう中でも勝ち切れる力をつけていければいいと思いますし、その経験を通して若い選手たちが少しずつ自信をつけているのはすごくいいところだと思っています。皇后杯ではトップは取れませんでしたが、まだ試合が続く中で成長過程にいるので、そのままで終わらず、最後に1点を取り切れるチームになって年明けから頑張っていきたいです」

来たるチャンスに向け準備と努力を重ねた東、西崎の活躍

そして2023年、有言実行とばかりに新たな戦力が躍動した。
今シーズンは「例年以上に全員が戦力で、全員にチャンスがある」と吉原監督が明言してきた通り、より多くの選手がコートでアピールする機会を得た。1月13、14日のNECレッドロケッツ戦がまさにそうだ。

ここまで主将として、リベロとしてチームをまとめてきた目黒が13日の試合途中に負傷退場し、急遽2年目のリベロ、西崎愛菜がコートへ送り出された。ここまでなかなか出場機会が訪れず「落ち込むこともあった」と言いながらも、吉原監督から毎日「全員が必要だから、いつ出番が来ても自分の力を出し切れるように準備しておいて」と言葉をかけられる中、自分にできること、チームのために何をすべきかを毎日考え、コツコツ練習を重ねてきた。
交代直後も得意のディグでオフェンスを武器とするNECに応戦。フルセットで敗れはしたものの、スタメン出場した翌日は前日に続いてディグはもちろんだが、サーブレシーブでも安定したプレーを随所で見せ、フルセット勝ちに貢献した。

「最後まで全員で目を合わせて、全員の力で勝てたのが嬉しい」と笑みを浮かべ、出場機会はない中でベンチに座り、常に声をかけ続けた主将の目黒に感謝を述べた。
「ベンチでずっとユウカさんが声をかけてくれて、細かいプレーばかりを意識するのではなく、まずは思い切ってやってこい、と気持ちの面を指摘してくださって、自分も力になったし、ユウカさんの分まで頑張ろう、という気持ちで戦うことができました」

そしてこの試合では、西崎だけでなくルーキーセッターの東美奈も途中交代でチームの勝利に貢献するプレーを見せた。西崎と同様になかなか出場機会が得られず、悔しさやもどかしさを抱えながらも、だからこそ自分の長所は何か。もう一度自らと向き合うきっかけを得た。
「チームに一人一人の存在が必要だ、という中で自分の存在、自分には何が必要かと考えた時、セッターが3人いる中、自分はディグやつなぎのプレーが一番得意だと思っているので、そこは誰にも負けないように取り組んできました。トスのフォームもJTマーヴェラスに入ってからもう一度見直してコツコツ続けて、いつか試合で発揮できる機会を得た時は思い切ってやろう、と思っていたので、全員が団結して勝つことができて素直に嬉しいです」
前日の敗戦を払拭するフルセット勝ちに貢献し、VOMにも輝いた東はセッターとして得られた自信に笑みを浮かべた。

2月も終わりいよいよ3月となれば、1戦1戦がこれまで以上に重要となり、ファイナル4、ファイナル進出に向け、負けられない試合は続く。
プレッシャーがかかる中、選手たちは1試合ごとの結果に一喜一憂し、自身の長所や自信ばかりでなく課題ばかりに目が向き、なぜあの時思うようなプレーができなかったのか、と悩み、もがきながらの戦いが続く。だからこそ――。選手一人一人がチームとして欠かせない存在であるように、一人一人の応援が大きな力にもなるはずだ。
昨シーズン味わった悔しさなど、もういらない。ラストスパートへ向け、JTマーヴェラスはここまで重ねてきた一つ一つの勝利、そして敗れるたびに味わってきた悔しさも糧として。目指す頂へ向け、これからも最強の“チーム”で戦い続けていくだけだ。