2022/12/12

INTERVIEW

2022/23シーズンが開幕、
10勝2敗で首位発進
「高い精度を求め、
やるべきバレーは変わらない」

昨シーズンの悔しさを乗り越え「王座奪還」という目標に向かってまい進していく。

王座奪還を目指す新シーズン

あの悔しさから半年が過ぎた10月29日、2022/23シーズンが開幕した。

3連覇を目指した昨シーズン、JTマーヴェラスはV・レギュラーラウンドを1位通過し、V・ファイナルステージに向け万全の準備を期した。しかし2戦を戦うファイナルの1戦を終えたところで両チームに新型コロナウイルスの陽性者が確認されたため、優勝決定戦が中止になるという前代未聞の出来事が生じ、決戦の舞台に立つことすらできぬまま敗れた。
誰が悪いわけではないとわかってはいる。だが心に残る悔しさは消えない。新たなシーズンを新たな気持ちで迎えながらも、リーグ制覇がかなわなかった悔しさはリーグでしか晴らせず、また「王座奪還」という目標に向かってまい進していくのみ。デンソーエアリービーズとの開幕戦をフルセットで勝利し、翌日はストレート勝ちで連勝を収めたJTマーヴェラスは幸先いいスタートを切った。

成長著しい西川と和田

新たなチームの中心になるのは、今シーズンから主将に就任した目黒優佳だ。昨シーズンまではアウトサイドヒッターで、リリーフサーバーとしてコートに立つことが多かったが、今シーズンからはリベロへ本格転向し、コートから「声」とレシーブでチームを盛り上げる。「主将になったからといって、特別なことを意識するのではなく自分にできることをやるだけ」と言う目黒だが、随所で見せる好レシーブだけでなく、ラリーが続いた場面でアタッカーを後押しするかのようにブロック枚数や、相手ディフェンスの穴を指摘し、得点を挙げれば決めた選手以上に喜ぶ姿勢は若いチームにとって大きな支えになっていることは間違いない。

目黒だけでなく、昨シーズン以上に出場機会を得るチャンスが増えた中、成長著しい活躍を見せるのがアウトサイドヒッターの西川有喜と和田由紀子だ。

昨シーズンから試合出場を重ねてきた西川は、日本代表登録候補に選出され2022AVCカップ女子で金メダルを獲得するなど国内外での経験を重ねてきた。大型のアウトサイドヒッターで、吉原知子監督は「ポテンシャルは抜群。あとは自分で壁を打ち破って突き抜けられるかどうか」と常に期待を寄せてきたが、4年目を迎えた今シーズンは堂々としたプレーを見せ逞しさも増し、意識も変化した。

「今までは上の人たちがいるから、とついていく気持ちのほうが強くありました。でも今シーズンからは背番号も偉大な“1番”を受け継いだので、もっと自分からチャレンジして、力を発揮して引っ張っていけるような存在になりたいです」
主将の目黒も「以前はフワっとしていたけれど、今はディフェンスもオフェンスも積極的で、トスを呼ぶ力を感じるので、いつトスを上げても大丈夫、という信頼感がある」と述べるように、まさに伸び盛りといった活躍を見せている。

そして吉原監督が開幕前から「まるでタケノコのようにスクスク成長している」と期待を寄せた和田も、シーズン開幕から好調をキープしている。セッター対角に入る攻撃を武器とするオポジットに入り、切れ味鋭いスパイクやスピードも活かしたバックアタックで得点を重ねるだけでなく、ラリーが続いた場面での勝負強さも光る。昨シーズンはオポジットに加え、レフトに入ってサーブレシーブも担ったが、試合を重ねるごとに安定感を増し、攻守ともにチームの勝利へ貢献。2022年内最終節となった12月3、4日のヴィクトリーナ姫路戦では2試合続けてVOMに選出されるなど、チームの主軸ともいえる活躍を称賛するのは、同じアウトサイドヒッターの田中瑞稀だ。
「スタートで出ても2枚替えで出ても絶対に点を取ってくれる選手。昨シーズンまでと比べても格段に頼もしいし、みんなが『ユッコお願い』と託せる選手。すべてオールマイティにこなせる選手なので、すべてのプレーに注目してほしい選手です」

新主将の目黒「それぞれがやるべきことをやるだけ」

JTマーヴェラスだけでなく、他チームも監督やメンバー構成が変わったチームも多いことに加え、開幕当初でまだチームとしての戦い方も定まっていない。簡単に勝てる試合はひとつもなく、吉原監督も「順位で見るよりも昨シーズン以上に上位、下位の差はない」と言うように、長いリーグ戦とはいえすべての試合をどう戦うかが結果に直結する。緊張を伴うハイレベルな戦いとなるであろう気配もすでに漂っている。
実際に昨シーズンは下位に沈んだKUROBEアクアフェアリーズやヴィクトリーナ姫路といったチームに勝利を収めているが、内容まで目を向ければ決して満足いく結果ではなく、ひとつ歯車が狂えば結果は異なったかもしれない。12戦を終えて10勝2敗で首位、好調さだけに目を向けるのではなくあえて厳しく「誰がどういう役割を果たすかを明確に整理していくことが重要」と吉原監督は言い、主将の目黒も「相手よりも自分たちに目を向けることが重要」と力を込める。

「相手どうこうよりも、自分たちがやるべきバレーボールの精度を高めること。そのうえで常にチャレンジすることを大切にしたい。今シーズンは15人しかいないので、今まで以上により、それぞれが何をすべきかということが重要になると思います」
優勝や連覇を経験したチームの中で、V・チャレンジリーグ(現V2)への降格、昇格といった経験も重ね、チーム内ではベテランとされる立ち位置になった田中もこう言う。
「メンバーは変わってもやるべきことは変わらない。4人攻撃、チャンスボールから確実に1点を獲ることやパスの質を高めること。目指しているバレーボールはずっと変わらないけれど、新たな戦力が加わることでチームに新しいプラス要素も生じるので、やるべきこと、目指すものは変えずに、見てくださる方がワクワクするようなバレーボールをしたいです」
魅力あふれるバレーボール、このチームの戦いぶりを1人でも多くの人たちに伝えられるように。日々努力を重ね、目指すべき頂に立つために。いよいよ始まった新シーズン、JTマーヴェラスは今シーズンもひたむきに、前進あるのみだ。