2024/10/11

INTERVIEW

【2024-25 大同生命SV.LEAGUE】
ハビエル・ウェベル監督インタビュー

ハビエル・ウェベル監督 開幕直前インタビュー「素晴らしい選手たちと組織力を磨き、常に100%の力でファイトしたい」

就任1年目となるハビエル・ウェベル監督に日本のリーグや広島サンダーズの印象、今シーズンの展望を伺いました。

今季から監督に就任、現役時代はアルゼンチン代表として活躍、引退後もさまざまなクラブ、代表チームで指導されてきましたがアジア圏ではこれが初めて。その中から日本、広島サンダーズを選び、監督就任の経緯を教えてください

いつか日本で指導をしたい、アジアのどこかではなく日本で指導をしたいとずっと思い続けてきました。正直にお伝えすると、これまでも中国や韓国からもオファーはいただいていたのですが、お断りしてきました。実際に日本でも3年前にオファーをいただいていたのですが、同時期にアメリカ代表のコーチというオファーを受けたので、実現に至らなかった。ですがまたお話をいただき、3年前にお応えできず申し訳なかったという思いもありましたし、何より日本のクラブ、バレーボールに魅力を感じていたので今回のオファーを即決しました。

実際に広島サンダーズの選手を見て、どんな印象を受けましたか

選手たちは皆、力があり努力を重ねる、素晴らしい選手たちばかりです。技術的にも優れたものを持っています。私はまだ合流したばかりですが、求めるのは個人に頼ることではなく、組織力を大事にすることだ、と選手たちにも伝えました。開幕までの中でもっともっと落とし込めることはたくさんあると思いますし、選手個人に目を向けても、チーム全体に目を向けても可能性ばかりだと感じています。

選手と初めて相対した時、どのようなことを求め、話をしたのでしょうか

まずバレーボールにはいろいろな「システム」があるということを意識づけました。たとえばアタック、ブロック&ディフェンス、サーブ、それぞれのプレーの背景にはさまざまなシステムがあります。その中で私が一番大事だと思い実戦しているのは、選手それぞれに特徴があり、高さ、スピードに長けた選手もいれば、ブロック力を武器とする選手、攻撃を武器とする選手、若くて大きな可能性を秘めた選手もいる。そのようなさまざまな選手たちの一番素晴らしいところを最大点に引き出すことです。そしてそのためには役割を与え、果たすことも不可欠です。たとえばレセプションならば誰がどこまでを守るか。ブロックとレシーブの関係性を考えれば、この局面では誰がどこに跳び、後ろではどの位置で誰が拾うか。組織立って6人全員が共通認識を持って動くシステムであり、その中でそれぞれの長所や個性が発揮される。具体的にはここから磨き上げ、構築していくことになりますが、練習のクオリティや選手の理解度は日々高まっているのを実感しています。それぞれのシステムにはコンセプトがあります。その土台を理解したうえで選手がプレー、表現することが私の一番大事にしている部分です。

ハビエル監督は現役時代から、そして指導者になってからも日本代表、日本の選手と対峙する機会は多くありました。どんな印象をお持ちですか

私のことは“ハビさん”と呼んでください(笑)。選手時代から、日本では常に素晴らしい経験をしてきたので、まず大前提として私は日本という国がとても好きです。そしてバレーボールに目を向ければ、日本の選手たちはテクニックを重視し、技術がとても高い。そのスタイル自体も素晴らしいと感じてきました。日本と対戦する時は、指導者としても選手としても、本当に難しい試合ばかりでしたが、どの試合内容も素晴らしかった。そして日本の国際試合はたくさんのお客さんが入るので、日本代表はホームでの試合にめっぽう強い印象ですね。サーブを打つ時の「そーれ!」という歓声も覚えていますよ(笑)。選手としてもワールドカップ、世界選手権で何度も来日しました。来るたび素晴らしい国であり運営も会場の雰囲気も素晴らしい国だという印象です。

アルゼンチンの選手もテクニカルな選手はたくさんいますが、日本の技術が素晴らしい、と。共通点や違いはどんなところですか

確かにアルゼンチンも背が高い選手が多いわけではなく、フィジカルよりもテクニックを重視する。私のスタイル自体もフィジカルよりもテクニックに重きを置いているので、共感できることはたくさんあります。選手として初めて日本と対戦したのは1985年です。当時も素晴らしい選手、現在日本バレーボール協会の会長を務める川合(俊一)さんもいらっしゃいましたが、やはり技術力に長けていた。現在の日本代表で活躍する石川(祐希)選手、西田(有志)選手、髙橋(藍)選手も同様に技術力に長けた選手ばかりです。ルーツをたどると、日本は長きにわたり日本の指導者のもと、日本のバレー、求められる技術が磨かれてきました。でもアルゼンチンは違います。さまざまな国の指導者がバレースクールをつくって教えてきたので、国として高める技術が1つにまとまっていなかった、というところは両国の違いかもしれません。ただ、今ではアルゼンチン国内の指導や指導者、システムも充実し、バレーボールを始めた頃からフィジカルよりもテクニックを重視する教え方をしています。それも日本のバレーボールの教え方と似ているのかもしれませんね。

ハビさんはいつからバレーを始めましたか

7歳からです。バレーボールを始めて51年です(笑)

セッターになったきっかけ、経緯は

私が16~17歳だった1980年代はツーセッターシステムでした。当時はセッターとアタッカー、どちらもやっていたのでアタックも打つ。セッターに固定されたのはトップレベルになって、代表に選出されてからです。

指導者としてのキャリアはどのようにスタートしたのでしょうか

2001、2002年は選手兼コーチとしてやってきましたが、2002年の世界選手権で現役を引退。翌年からブラジルのクラブチームでコーチをしたのが始まりでした。

広島サンダーズの指導をするうえで、練習中から特に意識するのはどんなことですか

ちゃんとした理由づけ、なぜだ、というのはその都度理由立てて説明します。私にとってバレーボールはメカニックなスポーツであり、同じところで同じプレーが発生することが多いと思っていますですから。その状況、起こる事象に対してどうシステムで対処するかという説明を丁寧にすることを心がけています。これまで指導してきたクラブは15~16名の選手が在籍していましたが、広島サンダーズには19名の選手がいます。私が率いたクラブの中では多い人数ですが、アメリカ代表ではもっと大人数の状態でトレーニングをしてきたので、同様に、人数が多い中でもいかに選手のキャラクターやスキルを見極めるかを重視するために、日々の練習からボールに関与する、触れる機会は均等に与えたい。一度のトレーニングの中で必ず全員が200~300回はボールに触れる機会をつくりたいと思っています。

日本のSVリーグに対して、どんな印象を抱いていますか

今までも日本のレベルは高かったですが、SVリーグになり、さらに世界各国のトップレベルでプレーするトップ選手が集まるリーグとなり、また一段階レベルが上がりました。世界のトップ3に入るリーグ、と言えるのではないでしょうか。非常にタフなリーグですが、組織力を強みに我々もチーム全体で戦える力をつけ、そのチームを率いるのが私の仕事です。

目指すのはどんなチーム、どんなスタイルですか

サーブ、アタックの部分は特にアグレッシブにいきたい。日本はディフェンス力に長けた選手が揃っていますので、ブロックディフェンスからの攻撃の精度を高めていきたいですね。より多くのチャンスを得て、アタックで決める精度を磨きたい。昨シーズンのVリーグはファイナル4まで進む素晴らしい成績を残しました。今季は相手チームの陣容も変わりさらにレベルが高く、今までのシーズンとは違いますがチャンピオンシップに進める力はあると思っています。1つずつ段階を踏んで、チャンピオンシップに進む。そこから先は何が起きてもおかしくない。去年と同じ成績かそれ以上の力は十分にあると思います。

日本のバレー人気も高まっています。見る方々にこんなところを楽しみにしてほしいというところがあれば教えてください

ファイトするところ、常に100%の力を出して戦うところ、1本1本の得点が常にマッチポイントだと思って戦う姿勢を見てください。勝てるか勝てないか、結果はわかりませんが、その時々に出せるすべての力を尽くし、組織的なバレーボールをコートの中で表現し続けますので、ファンの方々にはぜひ見ていただきたいです。リーグ戦は非常に長丁場です。さまざまなことを考え、見極めながら、アップダウンがあるのではなく、シーズンを通して継続性あるチームを目指したい。常に継続性を持ち続け、同じレベルで戦えるチームが最後に生き残ると思いますので、私たちはそういうチームを目指して戦います。ファンの皆さんと、共に戦いましょう!