2023/10/20

INTERVIEW

「2023-24 V.LEAGUE」開幕直前!
ラウル・ロサノ監督インタビュー

開幕直前インタビュー「たった4%」小さな差が結果として大きな差になる ラウル・ロサノ監督

「2023-24 V.LEAGUE」開幕直前! 就任2年目となるラウル・ロサノ監督に現在のチーム状況、そして今シーズンの展望を伺いました。

昨シーズンはロサノ監督がJTサンダーズ広島に就任して1年目のシーズンでした。振り返って、日本のクラブで指揮を執った最初のシーズンはいかがでしたか

ナショナルチームでは10回以上来日して試合をした経験はあったので、日本が素晴らしい国であること、素晴らしい運営がなされていることはよくわかっていましたが、広島という土地は本当に素晴らしい。会社、地域、そしてファンの方々。素晴らしいサポートのもと、非常に有意義な仕事をする環境が整えられていました。家族も来日していましたが、私だけでなく家族も日本の方々や文化が大好きです。これまでさまざまな国のナショナルチームを率い、クラブチームの監督も務めてきましたが、JTサンダーズ広島はそのどのチームとも遜色ない施設、むしろそれ以上の施設や環境が揃っています。そして選手たちは実に勤勉です。目標を達成するために、日々真剣に取り組む。日本人の規律の正しさは素晴らしいですね。この素晴らしい街、環境、選手たちと共にJTサンダーズ広島の監督として仕事ができることをとても光栄に感じています。

昨シーズンのVリーグは7位という成績でした。ロサノ監督はどのように評価していますか

もちろん満足はしていません。大事な時期にケガ人で何人かの主軸選手を欠き、ベストメンバーを組めずに負けてしまったことも非常に残念でした。全体的に振り返ると、日々取り組んできた練習内容は非常によかったのですが、積み上げてきたものを試合で出し切ることができなかった。そこが反省点です。加えて、試合の大事なところで決めきるメンタリティをつけることも大きな課題であり、重要な場面でも相手に打ち克つ強さを持つこと。それはきっと、私だけでなくすべての監督が課題として掲げる重要なテーマであるはずです。

上位チームとの差をあえて挙げるとしたらどんなところでしょうか

バレーボールというチームスポーツは、私たちが力を発揮することはもちろんだが、相手の力を上回れば勝利する。ただ自分たちがどれだけ成長を遂げても、相手がそれ以上に成長すれば追いつき、追い越すのはとても難しい。そしてすべてのチーム、選手が成長するためにトレーニングしています。細かな数字を見れば、私が就任する前よりも大きく向上した点もありますが、最終的な順位は変わっていません。それは上位チームも同じくパフォーマンスが上がっているので、その差が順位にも直結した、ということでもあります。

特に昨シーズン優勝したウルフドッグス名古屋、そして準優勝のサントリーサンバーズ、この2チームは昨シーズン常に高いパフォーマンスを発揮し、我々は一度も勝利することができませんでした。そして今シーズンは、この2チームにプラスして新たな選手も加入したパナソニックパンサーズも加えた3チームがリーグをリードして行く存在になるのではないでしょうか。もちろん私たちにもチャンスがないわけではありません。どのチームも上位へ進出する力がある反面、非常に実力が拮抗しているので下位になる可能性もある。チームとして、選手個々が取り組んできた強化の成果が発揮され、どれだけの成長を遂げているかが示されるはずです。

ロサノ監督はこれまでいくつもの国でクラブチームも率いてきました。その中で日本のVリーグは世界の中でどれほどのレベルに達していると感じましたか

トップではないですが、トップに近いレベルであるのは確かです。現状の世界トップはイタリア、ポーランド。その次、セカンドグループとも言えるのがフランス、ドイツ、トルコ、そして日本です。イタリアと比較すると、単純に試合の数が(イタリアでは)週に1回、試合以外の日は練習やトレーニングに時間を費やせるだけでなく、外国籍枠も多いので世界各国から多くの選手が集まっています。

しかし、トップオブトップのクラブと、下位のクラブでは実力差も生じます。対してポーランドは、というと、試合に出場できる外国籍選手の数は2名なので、ポーランド国籍の選手が多いですが、彼らの力自体も高く、リーグ全体を見てもそれほど力に遜色はなく、チャンピオンズリーグも制しています。そのこと自体がリーグのレベルの高さを示す、何よりの証ではないでしょうか。ポーランドやイタリアリーグと日本の違いは、会場の熱気です。毎試合、多くのメディアが来場し、テレビ中継もされる。そして試合を行うアリーナは専用で、床は選手の足腰への負担を考慮しタラフレックスです。今も十分、日本は環境に恵まれていますが、より選手のために整えられた環境で、多くの注目度を高めていく行動を起こすのは日本のVリーグが活性化することはもちろん、日本のバレーボールのレベルを向上させるためにも必要なことかもしれませんね。

特に今シーズン、強化してきたポイントを教えて下さい

まずはアタックの攻撃力、決定率、決定力を上げることが最も大切なことです。昨シーズンのアタック決定率だけを比べると、上位2チームと我々は4%以上の差がついていました。この数字だけでは「たった4%」と感じるかもしれませんが、その「たった4%」が非常に大きな差となって勝敗に現れます。その差を詰めなければ勝利をつかみとることはできず、小さな差が結果として大きな差になる。そのための策として、我々はアタック決定率を高めることを最重要テーマとして取り組んできました。

具体的に、どのようなことを重視してきたのでしょうか

まずは個々の技術を成長させることが不可欠です。特に昨シーズン、チームとしての問題はミドルブロッカーのクイックの数字が高くなかったことでした。他チームの同じポジションの選手がベストアタッカーランキングに名を連ねる中、残念ながら我々のチームには存在しなかった。点を獲るのはさまざまなポジションで、一つ一つに焦点を当てればアウトサイドヒッターはアーロン(ラッセル)、新井(雄大)といった選手が非常にいい働きを見せていたのに対し、オポジットは他チームの同じポジションの選手と比べると少々物足りなかった。でも何より大きな差があったのはミドルブロッカーの攻撃です。上位進出、優勝争いをするチームになるためにはすべてのポジションで成長、底上げが求められますが、最も重要なのがミドルブロッカー。そしてその攻撃を活かし、展開するセッターです。伸ばすべきポイントで、最も成長を求めてきました。

今シーズンはセッターの前田(一誠)選手、ミドルの三輪(大将)選手が移籍加入、新加入の川口(柊人)選手もミドルブロッカーです。どんなところに期待していますか

三輪はクイックの攻撃力が素晴らしい選手です。ブロックはまだ課題がありますが、アタックは非常に素晴らしい。そして川口選手もブロックに関しては非常に力がありますが、スパイクはもう少し。2人のバランスがどちらも整うと、間違いなく強いチームになりますね(笑)。そしてセッターの前田選手に関しては名古屋で優勝経験があります。これはセッターとして非常に大きな武器であり、戦術的な理解度も高く、トスの精度も高い選手です。彼らはチームを変える存在になるのではないでしょうか。

最後に、今シーズンの目標、そして応援してくださる方々へのメッセージをお願いします

これはあくまで私の意見ですが、まずは我々のホームタウンであるこの素晴らしい街、広島でのホームゲームがもっと増えたらいいですね。ファン感謝Dayにも多くの方が集まってくださったように、広島に多くのファンが集まれば、間違いなく選手たちにとっては力になります。そしてJTサンダーズ広島というチームは、非常に歴史のあるチームであり、広島のバレーボールファンの方々も多くいるでしょう。選手たちは、皆さんに勝つ姿、そして練習で培ってきた力を発揮するべく毎日頑張っています。その姿をぜひ、多くの方々に見てほしい。選手たち、チームが成長した姿をたくさんの方に見てもらい、応援していただくことが私たちには大きな力になります。ぜひ会場へ来て、私たちJTサンダーズ広島を応援してください。