2022/10/21

「2022-23 V.LEAGUE」開幕直前!
ラウル・ロサノ監督インタビュー

「2022-23 V.LEAGUE」開幕直前! 就任1年目となるラウル・ロサノ監督に現在のチーム状況、そして今シーズンの展望を伺いました。
まずはロサノ監督のキャリアについて教えてください。1974年から指導者としてのキャリアがスタートしていますが、どのようなきっかけだったのでしょうか
最初はアルゼンチンのエストゥディアンテス・デ・ラ・プラタというクラブでした。サッカーでも有名なクラブですが、バレーボールもトップチームの下にジュニア、ユース、キッズカテゴリーがあり、私も選手としてプレーしていました。たまたま高校を卒業するタイミングで、ある日「キッズの女の子を指導する手伝いをしてくれないか」と言われ、私とフリオ・ベラスコ(元アルゼンチン、イタリア代表監督など)の2人で教えたのが始まりです。高校卒業後に大学へ進学しましたが、プレーではなく指導する側に回りました。その後「いい指導をしているから、男子の指導もしてほしい」と言われ、男子のU-16チームを指導することになり、それから継続的に今まで指導者としての仕事が続いています。非常に長い歴史ですね(笑)。

日本のJTサンダーズ広島で指揮を執ることになった経緯を教えてください
2017年から2019年まで中国代表の監督を務めていましたが、新型コロナウイルスの影響で、代表監督を続けることが叶わなくなりました。その後2年間は仕事がなくなりアルゼンチン国内にいましたが、ワクチンを打ち、国外へ行ける状況になった時にポーランドと日本からオファーをいただいたのですが、ロシアとウクライナの抗争を考えると(ウクライナに近い)ポーランドのクラブで指揮を執ることは現実的ではありませんでした。そして、それだけでなく、長年日本の文化にも興味があった私にとってJTサンダーズ広島からのオファーは非常に素晴らしいものでした。今回この選択をすることになって、よかったと思っています。
日本のバレーボールの印象は?
2006年バレーボール男子世界選手権ではポーランド代表を率いて対戦したり、それ以外でもドイツやイラン、中国代表などを率いて長年、日本代表と戦ってきました。かつての日本代表は世界ランク15位から20位を行き来するチームでしたが、現在は世界ランク7位(2022年10月11日現在)。フィリップ・ブラン監督がとても素晴らしい仕事をしています。チームとして非常に成長していると感じます。
ちなみに平野信孝ゼネラルマネージャーがユニバーシアード日本代表だった1995年に私もスペイン代表の監督として対戦しています(笑)。
実際JTサンダーズ広島で指揮を執るようになり、選手にどんな印象を抱きましたか?
6月に来日して、最初は私自身が日本のスタイルに慣れる必要がありました。その後、練習のスタイルを変えることに着手しました。具体的には週5回練習して土日はオフにし、さらにボール練習を午後から午前に、トレーニング時間を午後にしました。選手がチーム、個人としても成長する必要があり、変えるために必要だと思ったからです。選手も受け入れてくれて、二部練習の時はボール練習を5~6時間やることもあるハードワークですが、ついてきてくれましたし、学ぶ姿勢、意欲が素晴らしかったです。若手も年長者も関係なく一人一人、チームが成長するために、サーブレシーブの手の出し方、構え方、細かい技術一つ一つのアドバイスを受け入れて、やっていこうという姿勢は素晴らしいですし、チームとしてもっともっと成長を遂げていかなければならないと思っています。

実際にどんな変化を感じていますか?
とても成長していますが、そうは言ってもこれは練習の中であって、試合とは別ものです。練習試合と公式戦、ファイナルと観客やメディアがいる状況とは異なります。テレビ中継や観客の応援を受けながら試合をするのは感情やプレッシャー、試合の重要度も変わってきます。今いい練習ができているのは確かで、練習試合もいい状態だったので、公式戦のコートでいかに表現できるか。個人的にも非常に興味深いところです。
最も強化してきた技術面のポイントはどんなところですか?
順番をつけるならば、スパイク、サーブ、ブロックの順番です。なぜなら得点に直結するプレーが大事で、中でもスパイクは得点の60%強はスパイクから生まれるプレーなので、最も重視して強化してきました。
昨日も3時間半の練習中、200回以上ジャンプして疲れている選手も多かったと思いますが、練習を終えてうまくいかなかったと感じる選手はレセプションや、スパイク、自分の課題に対して意識高く自主トレーニングにも臨んでくれている姿勢は本当に素晴らしいと思います。
これは他国の選手と日本人選手、日本のチームとの明らかな違いです。中国やイランで「今日はいい練習をしたから明日は休もう」と言えば、誰もが「疲れた」と言うだけで、自分から練習しようとする選手はいませんでした。しかしJTサンダーズ広島の選手は「もっとうまくなりたい」と自ら練習します。非常に向上心の高いチームで、素晴らしい選手たちです。
V.LEAGUEでは土日両日同じチームとの試合があります。これまで経験はありますか?
初めてです(笑)。代表チームであれば、14日間で10試合戦うことや国内移動もありますが、欧州では水曜に試合をして土日どちらかが試合、という環境なので、これまでのリーグとは全く別もの。メンタル的にどう持っていくか。自分が率いていたチームとはまた違うものにしないといけないと思っています。身体よりも心理的部分でいかに次の試合へ向けて回復、臨めるかが重要でしょう。フィジカル的な部分に関してはうまいやり方ができると思いますが、メンタルの部分は試合が始まらないと分かりませんね。

長いシーズンを戦ううえで選手に求めるのはどんなことですか?
直近で言えば2人の外国人選手が合流してからの短い期間でしっかりとチームに加わった状況において、チームのブロックなど戦術的なシステムを構築していくことです。長いシーズンでケガ人もつきものですが、最後のV・ファイナルステージのファイナルでチームがトップコンディションに持っていけるように、連戦が続き、コンディションの良し悪しも出てくる中で、チームをうまく編成して組み立てていくことが重要だと思っています。
JTサンダーズ広島でのビジョンを教えてください
私は占いができるわけでも、ハリーポッターのように魔法が使えるわけでもないので、先のことはフタを開けなければ分かりません。でも個人的には楽しみですね。10試合ぐらい戦ってから評価ができるものが見えてくると思いますが、選手は成長を続けていますし、モチベーション高く頑張ってくれていますのでV.LEAGUEが開幕してからも継続できれば、V・ファイナルステージに進む力は十分にあると思います。ただ、私たちも大きく成長していますが他のチームも勝つために成長を続けています。その度合いは自分たちが上回っているのか、他がさらに成長しているかは試合をしてみなければ分かりませんが、成長しているのは確かですし、気持ちの面でも細かいスタイルにこだわってこれからも日々トレーニングを重ねていければ、よい結果を得られるチームだと思っています。

では最後に、応援してくださる方々へメッセージをお願いします
日本でどのような応援を受けるかもとても楽しみですが、私の立場からお約束できるのは1試合1試合、選手は自信を持って全力を尽くします。1試合たりとも気を抜くことなく皆さんの前で戦い抜いていきたいと思います。