CEOメッセージ

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「自ら変化を起こす」

代表取締役 寺畠 正道 Masamichi

JTグループは、将来を⾒据えた上で課題を先取りし、自らを変⾰させることで成⻑を続けてきました。これからも組織の変革だけでなく、社員一人ひとりが自ら変化を起こしていくことのできる環境を築き、中⻑期にわたる持続的な成⻑の実現を目指していきます。

環境認識

JTグループを取り巻く経営環境は、国際的な政治情勢の変化や為替変動リスク等に加え、引き続きコロナ禍の影響を受け、これによりもたらされた消費者行動や企業活動の変化等により、引き続き不確実性の高い状況となっています。

たばこ事業においてはHTS(heated tobacco sticks)を中心としたRRP(Reduced-Risk Products)の市場規模拡大、さらなる各種規制強化や増税の動向、医薬事業においては新薬承認ハードルの上昇や薬価引き下げ圧力、加工食品事業においては人件費・物流費・原材料費の高騰等、各事業の環境も一層厳しさを増しています。

こうした厳しい経営環境に加え、デジタル・テクノロジーの進展、生活者の意識・行動の変化およびESGやサステナビリティに対する意識の高まり等、社会や株主の皆様からのニーズ・期待も変化しています。こうした大きくかつ急速な流れの中にあっては、変化への対応という受け身の姿勢ではなく、自ら変化を起こしていく必要があると考えています。

また、今般のロシア・ウクライナにおける未曾有の危機に際し、惨禍の犠牲となって亡くなられた多くの方々に心より哀悼の意を表すとともに、避難を余儀なくされるなど多くの困難に直面されている方々にお見舞い申し上げます。JTグループでは、従業員とその家族の安全を確保することを最優先とし、また複数の⽀援団体と協⼒して、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けた⼈々への緊急的な⽀援を⾏っています。

引き続き、従業員とその家族の安全を最優先としつつ、困難に直面している方々に対して人道支援を含む可能な限りのサポートを行っていくことに加え、状況の変化を注視し、経営理念である4Sモデルの追求に則り、適切な経営判断を下していきます。

たばこ事業における「お客様」は喫煙可能な成人のお客様を意味します。なお、喫煙可能年齢は、各国の法令により異なります。日本では20歳未満の方による喫煙は、法律で禁じられています。

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「自ら変化を起こす」

JT グループは、RJRI・ギャラハー社等の⼤型買収や新興市場への地理的拡⼤、GFB(Global Flagship Brands)を中⼼としたブランドエクイティ強化、RRPの販売拡⼤に向けた継続的な投資等、将来を⾒据えた上で課題を先取りし、自らを変⾰させることで成⻑を続けてきました。

2021年2月、長期的な環境認識を見据えた上で、たばこ事業の競争⼒・収益⼒をより一層強化すべく、HTSとCombustiblesを最重要カテゴリとして再定義の上、今後優先投資していくこと、またその実現に向けて、たばこ事業の一本化や日本市場の競争力強化施策を含んだたばこ事業運営体制の強化について取り組むことを発表しました。

たばこ事業においてはこれまで国内たばこ事業、海外たばこ事業を独立した事業部として運営してきましたが、その結果、グローバルで統一された一貫性のある戦略の策定・実行が困難であったこと、またグローバルリソースの有効活用が十分に図れていないことに課題を感じていました。特にRRPカテゴリで競合と伍していくためには、国内・海外、JT/JTIといった組織の垣根を取り払い、たばこ事業を一つの事業体として迅速な意思決定が行える体制を構築することが急務と考えていました。また、JT グループが今後も持続的成長を実現するためにも、お客様志向を一層徹底し、お客様のニーズや期待を超える商品・サービスをより効果的かつ効率的に提供する必要があると感じていました。

そうした認識のもと、社⻑就任以降、国内外のR&DやRRP 組織のOne Team 化推進、海外たばこ事業における事業運営体制の変⾰(Transformation)やJT 本社の移転等、グローバルベースでの競争⼒強化に向けた基盤強化を図ってきました。

そして、これまでの一連の取り組みの帰結として、名実ともにJT グループを真のグローバル企業としてもう⼀段高いステージへと進化させるべく、2022年1月より国内外たばこ事業運営体制を一本化の上、新体制をスタートしました。これにより、たばこ事業の本社機能はスイス・ジュネーブに統合されシンプルな組織構造のもとで意思決定のスピードが向上するとともに、より効果的かつ効率的な事業運営体制が構築されました。特に、HTSを中心とした成⻑カテゴリであるRRPにおいては、競争⼒強化に向けたグローバルリソースの最⼤活⽤やグローバル視点での優先付けに基づいた、より迅速な資源配分が可能となり、お客様への価値提供を一層強化するための体制を構築できたと考えています。加えて今後、グローバルベースでのベストプラクティスの共有・展開の活性化・迅速化を図っていきます。なお、⽇本市場についてはグローバルな事業運営体制のもと、主要市場の⼀つとして事業運営しています。

また、たばこ事業運営体制の一本化に向けて、⽇本市場においては、お客様への提供価値最⼤化に資する競争⼒強化が急務であることに加え、過去数年にわたる事業量の減少や不確実性が⾼まる事業環境を踏まえ、課題を先送りせずに将来を見据えた環境変化に適切に対処すべく、各種の競争力強化施策を実施しました。具体的には、営業組織の改編や製造拠点の廃止、希望退職の実施、葉たばこ農家への面積調整施策等の厳しい決断を含む各種施策を実施しました。さらに、コーポレート部門についても組織を再編しました。これは、間接機能の遂行だけでなく、能動的に中長期的視点から経営として対処すべき課題を設定、対処する起点となり、組織の枠にとらわれることなく相互に連携し、JT グループ全体として対処すべき課題に対して質の高いアウトプットを創出する組織としていくことを目的としています。

こうした変革において最も重要なことは、社員一人ひとりが目的を理解し、自らも変化を起こすように意識と行動を変えていくことだと考えています。これまでお話しした施策の背景や目的について私をはじめ、各役員が積極的に発信することで社員への浸透を推進しています。こうした取り組みを通じて、社員一人ひとりが変化への適応力を高めることにより、JTグループ全体の組織力を一層強化していきます。これまでも自ら変化を起こし、課題を先延ばしにすることなく乗り越えてきたように、社員一人ひとりの行動変革を強力なリーダーシップにより推進していき、中⻑期にわたる持続的な成⻑の実現を目指していきます。

代表取締役社長 寺畠正道 M.Terabatake 「自ら変化を起こす」 イメージ
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経営計画2022

2022年からの3カ年計画「経営計画2022」においても、中長期にわたる持続的な利益成長を追求していくことに変わりはありません。具体的には、為替影響および特殊要因を除いた事業そのもののパフォーマンスを測る指標である為替一定調整後営業利益の成長率について、中長期にわたる年平均mid to high single digit成長を引き続き目指していくことを2022年2月に公表しました。また、当期利益についても伸⾧させていく計画 としており、株主還元についても、還元方針に沿って着実に強化していきたいと考えています。

この目標の達成に向けては、JTグループの利益成長の中核かつ牽引役と位置付けているたばこ事業の成長が鍵となります。引き続きHTSとCombustiblesを最重要カテゴリとし、トップラインの成⾧と収益性の改善に向けて経営資源を集中的に投入していきます。今後さらなる需要の拡大が見込まれ、我々としても将来の事業成⾧の柱であると位置付けているRRPにおいては持続的な利益成⾧をもたらすポテンシャルが最も高いカテゴリはHTSであると考えています。将来のJT グループのサステナビリティという観点からも投資の最優先はRRPカテゴリとなりますが、今後10年間は依然としてたばこ産業全体において、Combustiblesが最大のカテゴリであると見込んでいます。その中で、Combustiblesは引き続きトップラインの成⾧を目指すとともにコスト削減・効率化による収益性の改善に取り組んでいきます。

我々のHTS の中期的な見通しと目標について、たばこ産業全体を中期で見ると2027年末までにHTSカテゴリは15% から20% 程度にまで拡大する見通しです。このような環境下において、2027年末までにJT グループのkey HTS marketsにおけるHTSカテゴリシェアを10% 台半ばまで拡大させていくとともに、これを通じて、RRPビジネスの黒字化を目指していくことを2022年2月に公表しました。一方、今般のロシア・ウクライナ情勢を踏まえ、2022年上期に予定していたロシアにおけるPloom X の上市を延期しました。今後のPloom X の展開については、柔軟性と機動性を持ってグローバルでの上市計画を再検討しているところです。

今後も需要の拡大が見込まれるRRPについて、我々は喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある製品を「RRP(リスク低減製品)」と定義しています。喫煙に伴う疾病のリスクの主な要因は、たばこ葉を燃焼させることに伴って発生するたばこ煙中の健康懸念物質であると考えられており、たばこ葉の燃焼を伴わず煙を出さない新しいスタイルのたばこ製品により、喫煙に伴う疾病のリスクを低減できる可能性があるものと我々は考えています。また、こうした製品はたばこ葉の燃焼に伴う煙を出さずにおいも少ないことから、周囲の方々により配慮した製品であると考えています。

たばこには多様なニーズが存在することから、一人ひとりのお客様ニーズを高い水準で満たす多様な選択肢を提供することがJT グループの使命であると考えています。そのために、JT グループは世の中の変化に合わせた製品カテゴリ拡充を進めるとともに、Combustiblesを含めたすべての製品カテゴリにおいて製品価値向上に努めていきます。

医薬事業・加工食品事業については、両事業ともに引き続き厳しい事業環境にありますが、その中においてもJT グループの利益成長を補完する役割に変更はありません。医薬事業では引き続き、開発品および上市品の価値最大化に加え、導入や導出の機会も積極的に探索し、事業基盤の充実に努めていきます。加工食品事業では中核となる冷食・常温事業を中心に、高付加価値・高単価な商品群への資源配分強化などの取り組みを着実に推進し、質の高いトップライン成⾧による持続的な利益成⾧を果たしていきます。

経営資源配分方針については、4Sモデルに基づき、持続的利益成⾧につながる事業投資、とりわけたばこ事業への投資を最優先していくことに変更はありません。株主還元についても、中⾧期的な当期利益の成⾧を実現することによって配当性向75%を目安*として株主還元の向上を目指していきます。また、そのために必要となる為替一定調整後営業利益の成⾧を引き続き追求していきます。

* ±5%程度の範囲内で判断

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中長期的な成長に向けて

4Sモデルに基づくステークホルダーへの提供価値向上

ESGやサステナビリティに対する意識の高まりを含め、社会環境・事業環境の変容は加速度を増しています。JTグループの⾧期的な成⾧には、4Sモデルに基づく事業活動を通じて能動的かつ積極的に社会の発展に貢献していくことが必要不可欠であると考えています。そのため、4Sモデルに基づき、事業と幅広いステークホルダーにとっての重要な課題としてマテリアリティを特定しており、これをもとにサステナビリティ戦略を定めています。サステナビリティ戦略における目標設定、具体的な取り組みの検討、目標の進捗管理に対しては、CEOである私や取締役会が関与する体制をとっており、目標の達成に対して強くコミットしています。また、JT グループのサステナビリティ課題を議論する場として、2020年からCSO(Chief Sustainability Officer)を議長とし、JTグループの各事業・ファンクションの代表が参加するサステナビリティ検討会を定期的に開催しています。加えて、サステナビリティマネジメントはその重要性、および経営課題へのより積極的な参画のため2022年1月のコーポレート部門の組織再編に合わせて他のコーポレートのグループから独立した組織としています。

JTグループにおけるサステナビリティ

2021年もJT グループのサステナビリティ戦略に基づき、積極的にさまざまな取り組みを展開してきました。年々関心の高まりを見せるESGについては、その土台となるガバナンスの強化が非常に重要と認識しており、その強化に当たっては資本市場を含むステークホルダーとの対話等を重視しています。また、コーポレート・ガバナンスに係る社会的要請への的確な対応や、取締役会の実効性評価の結果の分析等を実施し、コーポレート・ガバナンスの進化に反映をしています。これらから得られた示唆は経営陣および取締役会へ報告されるとともに、必要な議論を経て改善策の実施につなげています。具体的には、取締役任期変更の制度の見直しや統合報告書の情報開示などの改善を実施してきました。また、JT グループの持続的な利益成⾧を実現するためにはより強い経営のコミットメントが必要であることに加え、足元の業績を測る財務指標のみならず非財務指標を導入するといった多面的な業績評価設計とする必要性から、役員報酬KPIの見直しも実施しています。4Sモデルに規定するすべてのステークホルダーの皆様との対話に基づき、これからもコーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいきます。

環境においては、気候変動は世界における喫緊の課題であり、JT グループにおけるこれまでの取り組みをさらに強化し、脱炭素社会の構築に貢献するため、JTグループ環境計画2030においてエネルギー・温室効果ガス目標を更新いたしました。2030年までにカーボンニュートラル、その上で2050年までにバリューチェーン全体でのネットゼロを実現するという目標の達成に向け、取り組みを一層強化・拡大していきます。

社会面ではサプライチェーンにおける人権課題解決の実現に向け、人権影響評価を通じた人権デュー・ディリジェンスの実施やJT グループ初の人権報告書を発行しています。また、女性マネジメント比率については、40%を超えることを理想とし、「2030年までに女性マネジメント比率25%」というグループ目標を掲げるなど、多面的に取り組みを展開しています。

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最後に

大きくかつ急速な環境変化の中、私たちは、これまでJTグループが社会に提供してきた価値、社会における存在意義、これまでもこれからも我々の中核にあり続けるものは何かなど、改めて見つめ直す必要があると考えています。また、コーポレート部門においては2020年にコーポレートR&DとしてD-LABを組織化し、新規事業を含めた事業ポートフォリオについて検討する数多くのプロジェクトを進行させており、今後20年、30年先の未来社会においても「心の豊かさ」を切り口として、JTグループがお客様・株主・社会に任せていただける領域を示すことができるように検討を進めているところです。まずはRRPの成長をしっかりと実現させていくことが目下の最重要課題ですが、JTグループの将来像についても今後検討を重ね、皆様にお伝えしていきたいと考えています。

代表取締役社長 寺畠正道 M.Terabatake「最後に」イメージ
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