「山梨県 がん対策推進条例(仮称)骨子」に関する意見
日本たばこ産業株式会社(以下、JT)は、たばこは特定の疾病のリスクファクターであるため、公衆衛生の観点から禁煙が推奨されていることは承知しております。
一方、たばこは合法な嗜好品であり、たばこを吸われる多くの方に認められている「喫煙の愉しみ」があります。また、たばこは、500年以上の永きにわたる歴史的背景をもち、多くの人々に親しまれ、多様な文化を築いてきました。
社会経済の視点から見ると、たばこは耕作者から販売店にいたる幅広い産業の担い手により支えられている製品であり、また、たばこを吸われる方々が負担しているたばこ税が国や地方自治体の財源に大きく貢献しているということも忘れてはならない事実です。
たばこについては様々な意見、議論がありますが、たばことは、喫煙と健康に関する客観的・科学的な情報を踏まえて、喫煙するかしないか等を成人の方々自らが責任をもって判断すべき嗜好品であると考えております。
今般、山梨県(以下、県)において「山梨県 がん対策推進条例(仮称)骨子」(以下、条例骨子)が示されました。その中には、喫煙や受動喫煙に関する対策についての記載があります。
JTといたしましては、たばこ対策を検討する際には、上記のような幅広い観点から総合的に議論され、バランスの取れた現実的な対策にしていただきたいと考えております。
また、公衆衛生の観点からたばこ対策を考えるに当たっては、(能動)喫煙に関わる対策、受動喫煙に関わる対策、それぞれにおいて、エビデンスに基づき、合理的な対策が検討されるべきであると考えております。JTの具体的な考え方につきまして、下記にて申述いたします。
たばこ対策に関するJTの考え
1. (能動)喫煙
たばこは、豊かな味わいや香りを愉しむため、リラックスしてひとときのゆとりを得るため、あるいは集中力を高めるためなど様々な理由から愛用されています。一方で、喫煙はリスクを伴います。喫煙の健康への影響については今後更なる研究が必要であるものの、肺がんなどの疾病や、妊娠に関連した異常のリスクを高めることが、主として疫学研究により示されております。また、喫煙はなかなかやめられないと言う方々も多くおられます。
JTは、成人の方には喫煙のリスクに関する情報をもとに、喫煙の是非を自ら判断し、個人の嗜好として愉しむ自由があると考えます。
JTは、行政当局により、エビデンスに基づいた喫煙のリスクに関する情報提供が適切に行なわれることを支持いたします。また、喫煙と健康に関する様々な問題についてのJTの考えは、JTウェブサイト(※1)にて公表しております。
今後、県が、喫煙の健康影響に関する県民への情報提供資料等を作成する際には、JTの持つエビデンスの提供等により協力させていただきたいと考えております。
なお、がん等の生活習慣病は、喫煙のみならず、運動不足、栄養の偏り、飲酒など様々な生活習慣や加齢等その他の要因が複雑に絡み合って発症するものですので、殊更に喫煙のみを強調して、その抑制を図ろうとする考え方には疑問があります。そのため、がん対策推進計画やそのアクションプラン等、具体的な県のがんに関する施策において、喫煙者率減少に関する数値目標を設定することにはJTは反対です。
例えば、国別に見た場合、ある国の喫煙者率と肺がんによる死亡率(年齢調整)との間に明らかな相関があるとは言えないこと、また、我が国においても、男性の喫煙者率は1966年をピークに大幅に減少し、女性の喫煙者率はほぼ一定で推移している中で、肺がん死亡率は男女とも同じ傾向で90年代後半をピークに減少しており、喫煙者率と肺がん死亡率との間に明らかな相関があるとは言えないことなどは、今後のたばこ対策のあり方を巡る議論に際して踏まえておくべき事実と言えます。
たばこは合法な嗜好品であり、喫煙するかしないかは、適切なリスク情報を承知した成人個々人が、自らの健康に与える影響を勘案しつつ、自らの責任でそれぞれが判断すべきものです。喫煙者率減少の数値目標を設定することは、個人の嗜好の問題に行政が介入して個々人の判断を特定の方向に向けようとすることに他ならず、問題であると考えます。
- ※1
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喫煙と健康に関するJT の考え方については、こちらをご参照下さい。
2. 受動喫煙
たばこの煙は、周囲の方々、特にたばこを吸われない方々にとっては迷惑なものとなることがあります。また、気密性が高く換気が不十分な場所では、たばこの煙は、眼、鼻および喉への刺激や不快感などを生じさせることがあります。このため、JTは、周囲の方々への気配り、思いやりを示していただけるよう、たばこを吸われる方々にお願いしています。またJTは、公共の場所等での適切な分煙に賛成し、積極的に支援しています。
受動喫煙防止の目的は、人々が意図せずにたばこの煙に曝されることを防止することにあるものと承知しておりますが、こうした目的は、病院や官公庁等の利用者にとって代替性の低い施設においては、厚生労働省が示している分煙効果判定基準に則った喫煙室等を設置することにより、また、民間施設等の利用者にとって代替性の高い施設においては、利用者自らが施設を選択できるよう「喫煙ポリシー」の店頭表示を徹底することにより、達成することが可能です。よって、今後、県が各施設における受動喫煙防止対策の推進施策を具体的に検討する際には、様々な施設形態が存在することを考慮し、施設管理者や施設の利用者である県民等の意見を十分に聴取された上で、一律の規制によらず、すべての関係者が理解・納得し、自主的に取組を進めていけるよう、慎重な検討をお願い致します。
なお、具体的な受動喫煙防止対策の検討に当たっては、受動喫煙とがん等との間の関連性の有無については一貫した研究結果が得られておらず受動喫煙ががん等の原因であると断定できる状況にはない、との客観的な科学的知見(※2)に基づく議論を行っていただきますよう、併せてお願い致します。
- ※2
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受動喫煙(環境中たばこ煙)の健康影響に関する科学的知見の内容については、こちらをご参照下さい。
最後に
JTは、喫煙マナーの向上と、公共的な場所における適切な分煙等、喫煙をめぐる環境改善により、たばこを吸われる方と吸われない方が共存できる調和のある社会が実現される事が望ましいと考えており、これまでも喫煙マナー啓発活動や、希望される事業者の方々への分煙コンサルティング活動等、様々な具体的取組を行ってまいりました。
引き続き、たばこを吸われる方と吸われない方等の様々な方々と意見交換を行って、上記のような取組を継続しながら、県においてたばこ対策を検討・実施する際には、これらの経験で得たノウハウ・知見の提供等により、積極的に協力してまいりたいと考えております。
2012年1月23日
日本たばこ産業株式会社
甲府営業所長 一町田 豊