「職場における受動喫煙防止対策」に関する公聴会に対するJTの意見要旨

日本たばこ産業株式会社は、「『職場における受動喫煙防止対策』に関する公聴会」の意見発表者に選出されませんでしたので、公聴会当日に発表する予定であった意見要旨を、11月8日付けで厚生労働省に提出いたしました。

(参考)

「『職場における受動喫煙防止対策』に関する公聴会」における意見対象項目

(1)職場における受動喫煙の現状とそれを踏まえた対策の必要性について
(2)職場における受動喫煙防止に係る具体的対策のあり方について
(3)受動喫煙の無い職場の実現に向けた国民のコンセンサスの形成について

参照:厚生労働省website別窓で開く

意見要旨

(2)職場における受動喫煙防止に係る具体的対策のあり方について

  • 「平成21年度 職場における受動喫煙防止対策に係る調査研究委員会報告書」では「職場における受動喫煙防止対策は進みつつある」とされている。

  • 「職場における受動喫煙防止対策」を更に推進するためには、労働者や顧客の状況が様々であることを踏まえ、事業者において自発的に各職場の実態に応じた対策を選択し推進することが可能となるよう、現実的な対策メニューが幅広く提示されることが重要である。

  • 厚生労働省委託研究である中央労働災害防止協会の「平成21年度 職場における受動喫煙防止対策に係る調査研究委員会報告書」では、「受動喫煙防止対策に取り組んでいると回答した事業場は93.1%に上り、そのうち12.6%は全面禁煙にしている等、職場における受動喫煙防止への取組みは進みつつある」と評価されております。

  • 多くの事業場において受動喫煙防止対策が進んでいる一方、受動喫煙防止対策に取り組んでいない事業が未だ存在することもまた事実です。前出の調査において、そのような事業場が取組みを行なっていない理由として、「喫煙室又は喫煙コーナーを設けるスペースがない」や、「事業場内の合意が得られない」、「どのように取り組めばよいのか分からない」、「来客者が多く協力が得られない場合がある」「自社ビルではないため、自社の判断でできない」「取り組む資金がない」など、様々な理由が挙げられています。

  • 以上のように、各事業場の置かれている状況や、従業員・顧客の状況は様々であることを踏まえると、「職場における受動喫煙防止対策」を更に推進するためには、スペースや資金等の様々な制約があった場合でも実施可能な取組例を収集し、事業者において自発的に各職場の実態に応じた対策を選択・推進していくことが可能となるよう、それらの取組例が幅広く選択肢として提示されることが必要です。

  • 仮に上記対策が、一律かつ厳格な基準により実施されたり、義務化される場合には、事業者の経済的負担が非常に大きくなること等から、国による財政的支援を伴うとしても、取組みの進捗に影響があるものと想定される。

  • 受動喫煙防止対策の基準としては、分煙効果判定基準が議題に上がっていますが、この基準を充足することは、多くの事業者にとって過度なコスト等の負担となる可能性があります。

  • 例えば、分煙効果判定基準には、非喫煙エリアと喫煙エリアの境界開口部にドアを設けていたとしても、ドアの開閉の際に非喫煙エリアにたばこの煙が漏れないようにする、という観点から、「非喫煙エリアから喫煙エリアに向けて風速毎秒0.2m以上の気流の確保」との一律基準が設けられています。しかしながら、毎秒0.2m未満であっても非喫煙エリアに煙が漏れ出さないケースは存在しますし、また、利用頻度の低い喫煙室であれば、ドアが開閉される頻度も低いですので、例え漏れたとしても、ほんのわずかな量にしかならない可能性があります。あるいは、喫煙エリアが執務スペースよりも十分に離れている場合においては、喫煙エリアからはたばこの煙が漏れていたとしても、執務スペースにはほとんど煙が行かない、といったケースも考えらます。

  • 仮に分煙効果判定基準のような一律かつ厳格な基準が義務化された場合、すでに取組みを進めている事業場においては、追加的な資金負担が必要になる可能性があります。あるいは建物の構造上等の理由により、費用をかけたとしても基準を充たすことができないケースでは、現在の取組みを行なうために費やした費用が無駄になるケースが出てくるものと思われます。

  • また、未だ取組みを行なっていない事業場においては、様々な理由により分煙効果判定基準を満たすことが困難な状況にあることが想定されることから、そのような基準が義務化された場合には、実質的に全面禁煙を強いられることになると考えられます。

  • 法令改正等に際しては、そのメリットとデメリットが十分に検討されることはもちろん、具体的な措置についても、様々な関係者の事情等を踏まえ、実態に応じたバランスの取れた対策を幅広い観点から検討される必要がある。

  • 法令改正等に際しては、そのメリットとデメリットを十分に検討することが必要です。今後、仮に一律厳格な規制を行なうとすれば、前述以外にも、飲食店等での売上減少が懸念されるなど、多くの現実的なデメリットが想定されます。それに対して、規制を行なうことによるメリットとしては、「受動喫煙への曝露の低減」といった一般的な目的は示されているものの、具体的な内容、例えば、どの程度の受動喫煙への曝露が、現在どの程度の影響をきたしており、その曝露をどの程度低減すると、どのような具体的結果が得られるのかについて、エビデンスベースでの検討はいまだ十分なされていないものと考えております。

  • さらに、もし規制による一定のメリットが想定されるとしても、規制によるメリットとそれにより生じるデメリットがバランスしているか、そのメリットを得るために、より制限的でない他の代替手段がないのかについても、慎重に検討がなされなければなりません。

  • したがって、規制導入に際しては、事業者やたばこを吸う従業員・顧客等の規制により影響を被る方々の意見を十分に聞き取った上で、実態に応じたバランスの取れた対策を幅広い観点から検討していただきたいと考えております。

  • JTといたしましては、分煙コンサルティング等を通じ、これまで数多くの事業者の方々の生のお声をお聞きし、また分煙に関する多くの知見を蓄積してまいりました。それら知見のご提供等により、たばこを吸われる方と吸われない方が協調して共存できる調和ある社会が実現するよう、今後とも、喫煙を取り巻く環境の改善に積極的に貢献すべく、このような議論にも積極的に参画していきたいと考えております。

2010年11月9日