労働安全衛生法の一部を改正する法案に対するJTコメント
12月2日に閣議決定された「労働安全衛生法の一部を改正する法案(受動喫煙の防止)」(以下、改正安衛法案)につきまして、より良い分煙社会の実現に向け、日本たばこ産業株式会社(以下、JT)の意見を、以下の通り述べさせていただきます。
規制の導入について
閣議決定された改正安衛法案は、事業者に対し禁煙もしくは完全分煙、飲食店等には受動喫煙の低減措置を義務付ける内容ですが、多くの部分は別途厚生労働省令(以下、省令)で定めることとなっています。
事業内容や規模は事業所ごとに異なる中で、様々な形態の事業所が本法の対象となります。従って今後の国会審議、省令の策定におきましては、一律的な基準ではなく、労働者や顧客の状況が様々であることを踏まえ、事業者において各職場の実態に応じた対策が可能となるよう、現実的な対策メニューが幅広く提示されることが重要と考えます。特に、設備投資が困難な中小事業者への十分な配慮は必要です。例えば、努力義務とした上で、事業者の取り組み促進を促すサポートを充実することも方法としてあるものと考えます。
また、本法の施行については「公布の日から起算して一年を越えない範囲内において政令で定める日から施行するもの」とされておりますが、事業者や労働者に対する周知活動の実施と、そのための期間や対策(設備投資等)が完了するまでの準備期間を十分に確保することも必要であると考えます。
定められる要件・基準について
今後、省令により定められる改正安衛法の要件・基準につきましては、以下の点につきまして特に留意していただきたいと考えます。具体的に申し上げますと、
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事業所等に設置される喫煙室については、「厚生労働省で定める基準に合致するものに限る」となっています。一律厳格な基準が適用された場合、既に各事業者が設置している喫煙室が違反となり、追加の設備投資が発生することが十分想定されます。また、多くの事業所では分煙の取り組みは進んでおり、先行して対策を講じた事業所が不利益を被ることがないよう、実態を踏まえた弾力的な要件・基準を定めるべきと考えます。
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飲食店等については、「当分の間、省令で定める受動喫煙の低減措置」が義務付けられており、その低減措置の内容は省令で定めることとなっておりますが、「当分の間」しか認められない措置となれば、設備投資が困難な零細な飲食店や中小事業者においては、設備投資を躊躇し、やむを得ず全面禁煙せざるを得なくなり、売上減少等の深刻な事態が生じるおそれがあります。従って、将来不利益を被ることなく、また、店舗や顧客の状況に応じてより柔軟な取り組みが進められるようにすべきと考えます。
JTの取り組みについて
JTではこれまでも、様々な事業所での分煙の取り組み事例を収集し、効果的な分煙手法に関する研究を行い、その知見を様々な機会を通じて広く発信しています。また、特に希望される施設管理者の皆様に対して、その施設の態様に応じた分煙に関するコンサルティングを2,500件以上実施してまいりました。
JTとしましては、これらの経験を踏まえ、今後も、行政や事業者の方への情報提供を通じ、より良い分煙社会の実現、たばこを吸われる方と吸われない方の協調ある共存社会の実現を、協力して目指してまいります。
2011年12月5日
日本たばこ産業株式会社
代表取締役社長 木村 宏