厚生労働省「がん対策推進基本計画(案)」についてのパブリックコメント

JTは、厚生労働省において策定作業が進められている「がん対策推進基本計画(案)」に関するパブリックコメントに対して、以下の2意見を提出いたしました。

1.「がん対策推進基本計画」に、喫煙者率引き下げの数値目標を示すことについて

現在政府において検討されている「がん対策推進基本計画」について、当社の意見を以下のとおり申述いたします。

JTは、「がん対策推進基本計画」に、喫煙者率引き下げの数値目標を示すことに対し、従来より一貫して反対してきました。その基本的考え方は、次のとおりです。

JTは、喫煙は特定の疾病のリスクを高めると認識しています。また、たばこは合法な嗜好品であり、喫煙するかしないかは、適切なリスク情報を承知した成人個々人が、自らの健康に与える影響を勘案しつつ、自らの嗜好・健康観等に基づいてそれぞれが判断すべきものであると考えています。
このような中、喫煙者率について国が数値目標を設定することは、個人の嗜好の問題に国家権力が介入して個々人の判断を特定の方向に向くよう強制しようとすることに他なりません。これは、成人個々人による判断を蔑ろにするものであり、問題であると考えます。

また、喫煙者率の低下によりがんによる死亡率の減少が達成できるか否か疑問です。

  • がんを含む生活習慣病は、喫煙のみならず、運動不足、栄養の偏り、飲酒など様々な生活習慣や加齢、生活環境等その他の要因が複雑に絡み合って発症するものであり、例えば、国別に見ても、ある国の喫煙者率と、たばこ関連疾患とされるものの代表例である肺がんによる死亡率との間には、明らかな相関があるとはいえません。

  • 実際に、我が国における成人男性の喫煙者率は、戦後数十年の長期にわたり概ね半減近くまで大幅に減少してまいりましたが、一方肺がんによる死亡率(年齢調整)は、ここ数年横這いとなっているものの長年一貫して上昇してきたとの事実があります。


御省におかれては、「健康日本21 中間評価」の際、たばこに関する新たな目標設定の検討が行われてきました。その過程では、喫煙者率に関する数値目標設定の是非について、各界の専門家の先生方が十分に時間をかけ慎重な議論を交わされ、その結果、御省として、「健康日本21」における新たな目標として、「喫煙をやめたい人がやめる」を追加することと決定された旨承知しています。
このような中、仮に「がん対策推進基本計画」中に喫煙者率に関する数値目標が盛り込まれることとなれば、行政としてのたばこ対策の一貫性が損なわれることとなります。

今般、政府が、我が国の今後のがん対策のあり方の検討を進められるに当たり、従来の政策とも一貫性のある、「がん対策推進基本計画」が策定されますようお願い申し上げます。

2.「がん対策推進基本計画」において、たばこの価格・課税政策を示すことについて

現在政府において検討されている「がん対策推進基本計画」について、当社の意見を以下のとおり申述いたします。

以下の理由から、JTは、「がん対策推進基本計画」に、たばこの価格・課税政策を示すことに反対します。

  • たばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約において規定されている各種の施策は、その全てが各国一律に義務付けられているものではなく、それぞれの施策について、各国の法制度、文化、歴史、あるいは産業構造などを踏まえ、慎重に検討されるべきものと考えます。

  • たばこは、広く国民に親しまれている合法の嗜好品であり、一律にその消費削減を求めるべき商品ではありません。そのような商品に対する価格の上昇の強制や課税強化は、個人の嗜好の問題に国家権力が介入して個々人の判断を特定の方向に向くよう強制しようとすることに他なりません。

  • たばこの消費量は、少子高齢化の進展、喫煙と健康に関する意識の高まりによる構造的減少に加え、公共の場所等での喫煙規制の高まり等により、既に急速に減少しつつあります。そのような状況の中、価格・課税政策の強制による消費削減は、葉たばこ農家及びたばこ販売店をはじめとするわが国のたばこ産業にもはかり知れない影響を与えます。

  • 平成18年度与党税制改正大綱においては、「たばこ消費を積極的に抑制すべきとの指摘は、財政物資というたばこの基本的性格に係わるものである」とされており、一方的に消費削減の観点のみでたばこの価格・課税政策を論じることは、問題があると考えます。


今般、政府が、我が国の今後のがん対策のあり方の検討を進められるに当たり、従来の政策とも一貫性のある、「がん対策推進基本計画」が策定されますようお願い申し上げます。

2007年5月10日