ニコチン依存症管理料について

ニコチン依存症管理料は、平成18年度 診療報酬改定時に健康保険の給付対象とされました。ニコチン依存症管理料については現在、平成28年度 診療報酬改定に向けて中央社会保険医療協議会(以下、中医協)において保険適用対象者を拡大する等の議論がなされているものと認識しておりますが、十分な効果検証の手順を踏まず合理的な根拠と影響分析がないまま、国民の保険料財源を充当する保険適用対象者を安易に拡大することには反対します。

ニコチン依存症管理料に健康保険を適用することは喫煙を病気として扱うことになりますが、その考え方を合理的と判断することは困難であり、保険を適用することは依然として疑問です。ニコチンには依存性があるものの、その程度は弱いことが学術的にも社会的にも認められており、喫煙者はアルコール依存症患者等と異なり何ら支障なく通常の日常生活を送っておられます。
また、たばこは成人が自ら判断して愉しむ合法な嗜好品です。実際、禁煙者を対象とした禁煙時のサポート利用状況等を問う調査結果の中には、約95%の禁煙者はどのような禁煙サポートも利用せずに、また、どのような禁煙補助具も使用せずに独力で禁煙したことを示すもの(※1)、禁煙成功者の81.7%が「自分の意志のみ」で禁煙に成功したことを示すものがあります(※2)。
さらに、ニコチン依存症管理料の算定保険医療機関における禁煙成功率の実態について、厚生労働省が昨年(平成27年)12月16日の中医協で示した資料は平成21年度 調査に基づくものです。これは現状を十分に反映しているとは言い難いと考えており、現状把握が不十分な状態のまま、今後も保険適用対象者の拡大等が議論され続けるのであれば、残念ながら今後の国民医療費の動向に大いなる懸念を持たざるを得ません。
なお、ニコチン依存症管理料が保険適用となった平成18年度 診療報酬改定時における中医協から厚生労働大臣への答申書には同指導への保険適用について、「保険導入の効果に係る検証の作業を通じて、禁煙指導に国民の保険料財源を充当することに関し、さらなる国民的なコンセンサスの形成に努めること」と明示されておりました。この背景には、当時の中医協において、個人の嗜好による側面が強い喫煙に関して国民の保険料財源を充当することにつきコンセンサスが得られていないという意見があり、この点は現状においても変わりがないと認識しております。

ニコチン依存症管理料の保険適用算定要件に係る今後の議論では、引き続き国民の声を広く聴きながら幅広くご議論いただき、ニコチン依存症管理料を取り巻く実情の把握に向けた着実な効果検証の実施と、それに基づいた合理的な検討が実施されることを切に希望します。

※1:厚生労働省研究事業「各種禁煙対策の経済影響に関する研究 -医療費分析と費用効果分析- 一地方市に在住する禁煙者の特性」(平成24年度 分担研究報告書)

※2:ファイザー株式会社「喫煙に関する47都道府県追跡調査2015」における「最も禁煙に役立った方法」への回答上位3位(平成27年11月24日公表): 「自分の意志のみ」が81.7%、「禁煙外来の受診」が6.2%、「飲食物で紛らわした」が5.2%

2016年1月21日
日本たばこ産業株式会社
代表取締役社長 小泉光臣