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アメリカでの「たばこ」の変遷 進化を遂げた「たばこ」産業
植民地支配からはじまったアメリカでの葉たばこの栽培は
産業の発達と近代社会への変革のなかで飛躍します。
まずは、アメリカにおける“喫煙”の流れを見てみましょう。
17世紀初頭にイギリス領のバージニア植民地ではじまった「たばこ」の栽培は、17世紀末には、ペンシルベニアからノースカロライナまでのアメリカ東部州一帯の主要産物となり、イギリス全土はもとより、その植民地の需要に応えられ るほどの産業へと発展します。
そして、イギリス対アメリカ東部13州の植民地が戦った、独立戦争後の18世紀末になると、その栽培は、内陸部のケンタッキーやテネシー、ミズーリ、オハイオへとおよび、アメリカは瞬く間に葉たばこの世界供給国となります。
この頃、アメリカ産の葉たばこは、栽培当初に持ち込まれた“ニコチアナ・タバカム”が品種改良され、ケンタッキー州周辺では、現代の「シガレット(=紙巻たばこ)」の製造には欠かせない“バーレー葉”が産出されるようになっていました。
葉たばこ作りが盛んになると、アメリカ国内でも「たばこ」が普及しはじめます。その流れは、ヨーロッパ諸国と同様に「パイプたばこ」からはじまり「嗅ぎたばこ」へと移行しましたが、独立戦争の時代に「“噛む”たばこ=噛みたばこ」が登場したことで、市場に変化がもたらされます。
火を使わない手軽さから、特にカウボーイたちに愛された「噛みたばこ」が、市場の首位を占めるまでに成長したのです。
現代の「噛みたばこ」のイメージ図。板状に圧搾された品などがある。
ところが、19世紀後半に起こったアメリカの内戦=南北戦争を機に、またも流れが変わります。ヨーロッパからのマッチの進出などを受け、人々の意識が再び「パイプたばこ」へ向かうことになったのです。
アメリカ全土で「パイプたばこ」の人気が再燃しはじめた頃、都市部では手巻きによる「シガレット」に注目が集まります。その流行の発信地は、1860年代から「シガレット」の製造をはじめていたニューヨークでした。
では、なぜニューヨークで製造がはじまったのでしょう? これは、この頃の「シガレット」には中近東から輸入した高価な葉たばこである“オリエント葉”が使用されており、ニューヨークがその通関港だったことに由来します。
当時の「シガレット」工場の様子を活写した1枚。
その後、原料にアメリカ産の葉たばこが使用されるようになったことで販売価格が下がり、「シガレット」の人気は右肩上がりの成長をつづけます。しかし、全「たばこ」市場における「シガレット」の消費の割合は、まだまだ微々たるものでした。