A History of Tobacco たばこの歴史
ヨーロッパと「たばこ」の関わり イギリスと「たばこ」
「たばこ」に対する需要がヨーロッパで増え始めた頃、その貿易は
スペインがほぼ独占していました。ここでは、スペインの市場独占に
果敢に挑んだイギリスで活躍した2人の人物を紹介します。
“たばこ排斥運動”で「たばこ」を流行らせた国王
  コロンブスが新大陸(=アメリカ大陸)へ上陸して以降、ヨーロッパの各国は富と権力を求め、奴隷貿易でしのぎを削っていました。「たばこ」は、この貿易における重要産品の1つであり、生産地を手中に収めるスペインに対し、各国が闘いを挑みます。
  図らずも、この状況の打破にひと役買ったのが、17世紀のイギリスに君臨した「たばこ」嫌いの国王・ジェームズ1世でした。

  エリザベス1世の跡を受けて国王となったジェームズ1世は、在位後間もない1604年に『タバコ排撃論』を発表し、2つの“反たばこキャンペーン”を行います。

1. スペインから輸入していた「たばこ」に対し、約40倍もの関税をかけた

2. イギリス国内での「たばこ」の栽培を禁止した


  ところが、すでに「たばこ」は貴族から庶民まであらゆる人々の習慣として定着しており、さらに高すぎる関税によって密輸入が増加し、結果としてイギリスでは喫煙の風習が拡大することになったのです。
“たばこ好き”ならではの発想で町を救った農業家
  ヨーロッパ中が大航海時代に突入した17世紀には、イギリスも本格的な植民地政策を進めます。その舞台に選ばれたのが、北アメリカ東部の大西洋に面した地=バージニアのジェームズタウンでした。

  ジェームズ1世の特許状に基づき、1607年にバージニア会社によって建設された同地は、金・銀などの資源を採掘する目的で作られた町でしたが、ほとんど鉱物を産出できず、政策は失敗に終ろうとしていました。これを救ったのが、農業家のジョン・ロルフです。

  パイプ愛好家だったロルフは、町で先住民の喫煙風景を目撃し、危機的状況下のジェームズタウンでの「たばこ」の栽培を思い立ちます。そこで彼は、喫煙に用いるのに適した葉たばこである“ニコティアナ・タバカム”の種子を手に入れ、1612年に同地で「たばこ」の栽培を成功させます。

  やがてこれがスペインの「たばこ」を凌駕するほどの人気を博し、イギリスとジェームズタウンは「たばこ」によって巨額の富を得ることになったのです。
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ロルフの結婚式の様子。
相手は、先住民のプリンセスとして名高い“ポカホンタス”。
ロルフは彼女から葉たばこ栽培の知識を学んだとされている。
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先住民から食料を受け取るジョン・ロルフの姿が描かれた切手。
「ジェームズタウン入植400周年記念切手」
(2007年/英領マン島発行)