博士号取得者 対談

CROSS TALK

多才な人財との協業を楽しみながら、自身のスキルと知見を深化させる。

JT R&Dグループには博士号取得後に入社した者、仕事をしながら博士課程を修了した者など、博士号取得者が多く在籍しています。「入社後に博士号を取得することはできるのか?」「博士号で学んだことをどう仕事に活用しているのか?」 R&Dグループで基礎研究や製品開発に従事している3名に語ってもらいました。

MEMBER

メンバー

  • 基礎研究

    石川 晋吉

    Shinkichi Ishikawa

    たばこ煙が生物に与える影響について研究。2010年に新卒入社。2018年に日本毒性学会認定トキシコロジストを取得。2020年に博士号を取得。

  • 技術開発

    工藤 健一

    Kenichi Kudo

    たばこ製品に使用する香料の素材の開発・管理を担当。博士号取得後、2010年に新卒入社。

  • 技術開発

    登 貴信

    Takanobu Nobori

    加熱式たばこ開発における化学分析を担当。博士号を取得後、2018年に新卒入社。

Theme 01

博士号を取得した理由を教えてください。

それぞれが語る博士号取得のきっかけ

  • 石川

    私は2010年に修士課程を修了後、新卒でJTグループに入社しました。そして、入社後に仕事をするなかで得た研究成果を論文としてまとめ博士号を取得しました。取得した理由は、社外の勉強会に参加した時に運よく指導してくださる先生に出会えたことと、研究者として仕事をしていくなら博士の学位を持っていたほうがいいと考えたからです。

  • 工藤

    私は学部生の頃に研究に触れて、自分で新しいことを発見することや研究を通して誰かの役に立つことの楽しさを知りました。博士号取得を目指していたというよりは、自分の研究を満足できるところまでやりたいと考えていて、その結果、博士号取得まで研究を続けたという感じですね。JTグループには、博士号取得後に新卒として2010年に入社しました。

  • 学生時代は医用工学を専攻していて、自分の研究が大好きだったんです。それとは別に、海外で生活をしてみたいという想いがあって、学部3年生の時に、教授との懇親会の席で「海外で研究生活を送るにはどうすればいいか?」と訊いて回ったところ、「博士号は必須」だと口を揃えたように言われたんです。それがきっかけで取得を決めました。「博士号はパスポートのようなもの」というある教授の言葉を今でも覚えています。

アカデミックな研究と企業で行う研究の違い

  • 石川

    JTの場合、入社後に大学や研究機関に数年間在籍して、そこでの研究結果を元に博士号を取得する社員もいます。様々なケースがあると思いますが、私が在籍する部所には10名くらいはいますね。

  • 工藤

    私の同僚にも、仕事を進めながら博士号の取得を目指している人はいますよ。上司に相談し、会社の許可を得て、大学院に通っています。通常業務の空き時間を活用して研究や論文執筆の準備をしているようですね。仕事と並行して取得をめざす場合は、しっかりとした計画と強い意志を持って取り組む必要があると思います。

  • 入社後、R&Dグループの博士号取得者の多さには驚きました。特に、働きながら博士号を取った、いわゆる「社会人ドクター」の多さにはびっくりしました。私の上司もそう。本人に意欲さえあれば、仕事をしながら博士号を取得することは可能だと思います。

  • 石川

    大学でのアカデミックな研究とR&Dグループで実施している企業での研究は異なる要素が求められますよね。たとえば前者では真理の探究という目的も重視されるように思います。もちろん後者でも真理の探究は重要ですが、製品開発に資することも重視されます。そのため、製品との関連がはっきり見える研究が多いですね。また、特許化が重視される側面もあると思います。

  • 工藤

    一般的に企業のプレゼンス向上を意図してアカデミックな研究を積極的に行うケースもありますが、企業研究とアカデミックな研究では成果の「汎用性」と「実用性」に違いがあると思います。企業研究は基本的にビジネスへの貢献を目的とした研究が主であり、アカデミックな研究は直接あるいは間接的な社会貢献を目的とするもの。企業研究の場合は、研究成果がその企業にとっていかに有用かが重要になると思います。

  • 企業研究、特に、私が従事しているRRP*開発と大学での研究との違いはスピード感。製品開発の現場では限られた時間でいかに最大のパフォーマンスを発揮し、お客様に喜んでいただける製品を作って届けられるかが大切で、そこに企業研究のおもしろさを感じます。これは一定時間当たりのノルマが設定されているという意味ではありません。実際、私は自分の研究において、目標やスケジュールの設定・管理についてある程度の裁量を持っています。自分で考えついたアイデアを自分のやり方で進めることができる自由度がある一方で、企業の研究は計画をたてる能力、自律して管理する能力が求められますね。

    *Reduced-Risk Products:喫煙に伴う健康へのリスクを低減させる可能性のある製品

Theme 02

博士課程での経験や得られた知見は、現在どのように活用していますか?

博士課程で身につけたスキルはあらゆる業務に活かすことができる

  • 石川

    博士論文の執筆時に先生から「既存の情報を漏れなくまとめ、問題点や未達成部分を明確にする。そして、解決に最適な方法、アプローチを考えて選定し、得られた結果から達成の度合いを定量的に評価する。そうすることで、研究テーマの限界点や今後の課題を洗い出す。」という流れを意識するように指導を受けました。当たり前のことですが、この考え方は、研究を含むあらゆる業務に適用できると思います。指導を受ける中で学問的な観点から細部まで厳しく見られることもあり、自分の甘さに気づく良い機会になりました。

  • 工藤

    石川さんが言うように、取得の過程で身に付けた関連知識や思考方法と枠組み、専門性の高い内容の話を聞く力や論文・資料を読む力などは、研究業務に従事する・しないに関わらず、仕事の役に立つと思います。博士課程での研究活動や論文の執筆をするなかでさらに磨かれる「研究者的思考」は、仕事の現場で活かされる場面があると感じていますね。

  • 一番は適応力でしょうか。バイオ分析という専門領域の範囲内ではありますが、私は博士課程の1年目に研究テーマを変えたんです。同じテーマを修士時代から研究していた同期に並ぶためにはその差を埋める必要がありますが、私は不器用なのでとにかく一生懸命に勉強するしかなかった。最終的に、当初のテーマと新しいテーマを関連付けた論文で博士号を取りました。現在は学生時代の専門分野と異なる研究に携わっていますが、博士課程で培った適応力のおかげで新しい分野に挑戦することができているのだと思います。

  • 工藤

    とはいえ、博士課程で学んだ経験や知識が特別に優れているものだとは思いません。R&Dグループにはさまざまな専門性とスキルをもった人がいます。仕事をするに当たって、肩書きや学歴は関係ありません。多様な人財それぞれが今持っている知見や能力を持ち寄って、チーム一丸となってより良い研究開発を行っていくことが大切だと思います。

学生時代に学んだことをベースにキャリアの選択肢はひろがる

  • 石川

    登さんや工藤さんのように、博士の学位を取ったテーマや専門とは異なる分野の仕事をしている博士号取得者は、R&Dグループに多くいますよね。私自身は業務の延長である細胞培養に関連した分野で博士号を取得しました。そのため、今も業務を通して、自身の専門性を深化させていると思います。

  • 工藤

    私の場合も登さんと同様に、現在携わっている業務と博士号取得時の研究テーマに直接の繋がりはありません。しかも、純粋な研究業務、R&DのResearchというよりもDevelopment寄りの部所に所属していますから、大学院での研究内容やそこで得た知見、知識がそのまま仕事に活きていると感じたことはないんですよ。

  • 私がもともと研究していたのは医用工学で、現在携わっているのは化学分析。学生時代と今は異なる分野を扱っていますが、意外と分野が変わっても、興味をもって取り組めるものですよね。

  • 工藤

    その通りだと思います。学生時代の専攻領域に100%マッチする分野で仕事をしている人の方が少ないんじゃないでしょうか? R&Dグループで働く研究員の多くの人が学生時代に学んだことを基礎にして、少し離れた分野や領域の研究に挑戦しています。こうして、少しずつ自分の領域を拡げ深めて、専門性を養っていくのでしょう。新しいことを学べることを楽しみながら、意欲を持って臨めばそう難しいことではないと思います。

  • 工藤さんのように製品開発に携わると、様々な専門家と関わる機会が多くありますよね。私も同じです。そういった多才な人との協業を通して、自分の専門領域以外の知識を得ることができます。自分が知らなかったことを知れるのは、シンプルに楽しい。そういえば、就活前に全く関心のなかったJTグループに入社を決めたのは、就活のときにJTの研究所を見学して、なにもかもが新鮮で、「たばこっておもしろい!」と感じたことがきっかけでした。

  • 石川

    周囲を見ていると、博士号を取得後に研究現場から一度離れて、企画業務や戦略策定など研究とはまた異なることを経験している人も結構います。もちろん、研究者として自分の得意な領域を追求して、その分野の一流を目指すキャリアもありますし、研究職として入社しても、研究だけではなく、様々なキャリアに進める選択肢が存在していることもJTグループのいい点かもしれませんね。

Theme 03

研究のサポート体制はいかがでしょうか?

多彩なテーマへの挑戦を可能にする職場環境

  • 石川

    研究する環境は十分な水準にあると思います。実験に必要な設備や機器類は揃っていますし、資材も調達することができています。

  • 工藤

    JTグループの研究所は一般の国公立大学の研究室と同等もしくはそれ以上の設備を有していますから、充実した研究を行うことができますね。

  • 化学や生物学だけではなく、数値解析や機械設計など、たばこ製品の開発にはあらゆる科学分野からのアプローチが必要なため、研究所にはさまざまな測定・分析装置が揃っています。そして、メンバーの専門性も非常に多彩です。そのため、いろんな分野の専門家から多くの刺激を受け、お互いに知見を共有して、自分の研究テーマを深耕することができます。加えて、R&Dグループには一人ひとりの積極性や発想力を重宝する文化がありますので、自分が頭の中で構想しているテーマやアイデアを具体化する機会も多くあります。

いわれたことだけをやるのではなく、自分自身で発案し試行していくことも重要な能力

  • 石川

    博士号を取得した研究員が多数在籍しているという点では、彼らから研究に関する指導やアドバイス、さまざまなサポートを受けやすい環境ではありますね。そして、大学の研究室と異なる点は、より計画性が重視されることだと思います。

  • 工藤

    そうですね。学生時代と比較すると、企業の研究開発は、研究テーマや開発案件に係わる関係者は多数です。そして製品化までには多くの部所を渡って検討されていくので、綿密な計画をしっかり立てることがより重要になるかと思います。

  • 雰囲気の部分で言うと、特に、私が今いる部所には多彩な分野のエキスパートが在籍していることもあって、専門領域や職位が異なってもそれぞれが持つ知見やアイデアを合わせて「いっしょにやってみましょう」という空気があります。コラボレーションやチャレンジがしやすいと思います。

  • 工藤

    石川さんが在籍する基礎研究系と私や登さんが仕事をしている技術開発系では、多少、仕事の進め方や雰囲気の違いはあるかもしれません。しかし、私も登さんも入社時は基礎研究系に所属し、後に技術開発系に異動しました。私たちのように研究と開発で人事異動もあるため、部所間にネガティブな境界線はないと思います。

  • 石川

    自発的な研究開発活動のしやすさについてはどうでしょうか? 私が在籍しているチームは、設定された課題を遂行した上であれば、ある程度は自由に研究テーマを設定し、それにチャレンジできると思います。もちろん、その研究成果がR&Dグループの研究開発に貢献するものであるということが前提ですが。

  • 工藤

    私たち開発の担当者も、自分でタイムマネジメントして、自分の興味のあることを追求することを推奨されています。製品開発の過程ではいくつものプロトタイプを試作します。最終的に採用されるのはその中のひとつですが、採用されなかったものでも、追求する価値があるなと思ったものは改良を繰り返して、完成品にまでつくりあげていくことがあります。言われたことをただやるだけではなく、積極的に動いて自ら提案していくことも大事なことだと思います。

  • みなさんアグレッシブに動いている印象がありますね。私がこれまで所属してきたチームにも、化学分析という柱はありますが、新しい分析手法の開発や改善に自発的に取り組める空気があります。管理職を含めて、先輩たちから受け継いだ血筋と言いますか、文化になっているのだと思います。

Theme 04

JTグループで今後何を実現していきたいと考えていますか?

自分の研究開発成果を活用した製品を世の中に送り出したい

  • 石川

    細胞の培養実験という基礎研究寄りの業務で、専門分野の点で言っても難しいかもしれないと思うのですが、いずれ、自分の研究成果が直接的に製品に活用されたら嬉しいですね。

  • 工藤

    私は製品に近い領域の業務を担当していますので、自分が得た知識や経験が新製品の開発の一助になるよう、意識しながら日々の業務に取り組んでいます。自分の成果が製品に結実したと思えるような新製品を創り出したいと思います。

  • 私が実現したいことは分析作業のスピードアップですね。新しい分析機器や分析方法の導入・開発にこれまで以上に力を入れていくことで、お客様に喜んでいただける商品を1日でも早く届けられるようにしたいと思っています。

お客様に喜んでもらうことが研究開発の醍醐味

  • 工藤

    私が担当する香料は、味・香りとしてお客様に愉しんでいただけるものですので、お客様に喜んでいただくことが何より嬉しいです。でも、製品開発に関わる社内の人から「これすごい。よくやったね。」と言ってもらえるのも快いですね。

  • 私は分析屋で、工藤さんのように手を動かしてものを作るというよりも、製品開発の下支えをするデータを取得することが役割です。そのため、お客様から距離があると思われることもあるのですが、そうでもないんです。例えば、私が担当しているRRP*の場合、分析作業が数日、遅延すると、お客様のお手元に商品が届くのも遅れます。それは、お客様からのご期待に応えられなかったということになりますから、できるだけ早くという想いはありますね。

  • 工藤

    製品開発と分析という業務の違いはあっても、商品を手にしたお客様に喜んでいただくことは仕事の醍醐味ですよね。ものを作る人間として、もっともっと自分の発想が入り込んだ「自分のエッセンスはここにある」って言い切れるくらいの製品を開発したいです。そして、自分ことを知らないお客様がその商品を手に取って喜んでいただいている姿を見かけるようなことができたら、それ以上に気持ちいいことはないと思います。それが、達成したい夢の1つですね。

  • お客様への貢献に加えて、会社への貢献という意味でも分析のスピードアップは大切だと考えています。将来を見据えて今後どういった事業に投資していくかを決める際の判断材料の1つは科学的なデータです。会社の経営判断に関わるデータの収集や解析という重要な役割を担っているという緊張感、プライドを持って業務を遂行していこうと思います。

  • 石川

    もう1つ、自分が入社後に博士号を取得したということもあって、同じように仕事をしながら博士号を取りたいという仲間をサポートできればという気持ちがあります。そして、その人が学位を取得した後に次の志望者をサポートして……という社内の文化を作り、そこで蓄積されたノウハウを次世代に繋げていけたらと思っています。私の場合は勝手に先生を見つけて、勝手に論文を書いて、勝手に博士号を取ってしまったという感じでけっこう大変でしたからね(笑)。



Summary

R&Dグループは多彩なタレント、得意分野を持ったメンバーが集まり活躍している職場です。博士号もそのタレントの1つ。それぞれが培ってきた専門知識や学位取得の過程で身につけたさまざまなスキルを活かして研究開発に邁進しています。多種多様なキャラクターのメンバーが互いの能力を発揮するなかで生まれた新たな研究課題、見出されたテーマの追究に自発的にチャレンジして深めていくことをよしとする社風、そして、入社後の博士号取得へのトライも含めて、キャリアを広げていくチャンスもある職場環境です。

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