たばこを吸わない人 対談
CROSS TALK
吸う人も吸わない人も、それぞれの感性や視点を活かして生み出される多様なアイデア
「JTの社員はみんな喫煙者ですか?」「たばこを吸わないとできない仕事が多いのでしょうか?」 と質問を受けることがあります。JT R&Dグループには、ふだんからも仕事でもたばこを吸わずに製品開発に従事するメンバーがいます。それぞれのJTを志望した理由、職場の様子や仕事の内容、吸う人と吸わない人との処遇の違いの有無、たばこを吸わないからこそできることなどについて、ざっくばらんに語ってもらいました。
MEMBER
メンバー
-
製品開発
今飯田 佳代子
Kayoko Imaiidaたばこ製品の官能評価や所作・嗜好などのリサーチを担当。
-
製品開発
知久 綾子
Ayako Chikuたばこ製品に使用する香料の規格設定と分析試験所の管理運営を担当。
-
製品開発
西海 憲
Ken NishigaiRRP*のパッケージ開発を担当。
*Reduced-Risk Products:喫煙に伴う健康へのリスクを低減させる可能性のある製品
JTグループに興味をもったきっかけはなんでしょうか?
志望理由は三者三様
-
私の場合、就活で偶然最初に出会ったのがJTだったんです。大学院生時代は工学部の物質工学科で水処理プラントに関わる研究室に所属していたのですが、友人に誘われて行った企業説明会でJTグループの社員の話を聞いて、たばこには農業や工業の間にさまざまな要素や多彩な分野の技術が詰まっていることを知って興味を持ちました。エントリーシートを提出したら面接に呼ばれ、その後はとんとん拍子で内定(笑)。だから、明確な志望理由はなかったんです。でも、思い返すと、学生時代にコーヒーショップでアルバイトしていた時にコーヒー通のお客様とお話しすることが楽しかった。その経験とたばこがリンクして、吸い込まれるように入社を決めました。
-
私は経験者採用で、前職は生活用品メーカーの研究開発部門で5年ほど日用品のパッケージの開発をしていました。大学院で医薬分子の中間体の合成方法など有機合成系の研究をしていたので、日用品の中身を作ることをイメージして入社したのですが、配属されたのは包装容器の開発部門。目論見は外れたものの、研究そのものは楽しかったので、その線でキャリアを積んでいこうと思いました。パッケージ関連で他の商材にも触れてみたいと考え、転職活動を始めました。JTの会社説明を受けたとき、たばこ製品のパッケージが想像以上に細部までこだわって精巧につくられていることを知り、JTに興味を持ち、入社を決めました。
たばこ製品、たばこづくりのおもしろさとは
-
西海さんのように、学生時代の専攻とあまり関係のない分野、職種への配属がきっかけでその仕事が好きになり、続けて行きたいと思うようになった例は、JT R&Dグループにもよく見かけられるケースだと思います。
-
そうなんですか?
-
やっぱりご自身が学生時代に学んだ専攻に近い業務をしたい、専門的知見を活かした仕事をしたい、と考える方もいますが、その逆に、入社後に出会った仕事が面白く、楽しくなって、それを深く追求したいと思い始める社員もいるんですよ。
-
大学院では研究室に閉じこもって、自分のやっていることと社会がどのように繋がるのかわからないような上流過程の研究だけをやっていた印象があるんです。キャリアについても、大学院で私が所属していた研究室ではBtoB企業に就職する学生が多かった。でも、私は最初からBtoCの会社で働きたい、お客様に一番近い所で商品開発をやってみたいというこだわりがあって、それはJT入社後も変わっていません。今飯田さんの入社動機をうかがっていて、あらためてそう思いました。
-
知久さんがおっしゃっていた、たばこは「農業と工業の間」にあるという観点はおもしろいですね。私は、たばこは「空間と時間」といった建築に近い要素があると思っていて、JTを志望したのもそこにヒットしていたから。
-
「時間と空間」ってどういうことですか?
-
たとえば、仲間とおしゃべりするための滞留するようなスペースを作る場合、建築では「ベンチを置く」とか「コーヒーマシーンを設置する」「眺望のいい場所を設ける」というような空間的な要素と、「そこでの滞在時間はどのくらいか?」という時間的な要素を考えるんです。喫煙所なら、灰皿の周囲に人が集まり、普段なら話す機会がないような人たちが手の届く距離でおしゃべりしたりすることを想像して設計に落とし込みます。知久さんが言うように、たばこは「農業」と「工業」両方の要素を合わせて検討することで味わいが決まるプロダクトです。そして、それをより愉しんでいただくための環境づくりには「空間」と「時間」という建築的な視点が大切になる。様々な要素を組み合わせて、その境界線上にあるたばこって不思議な商材ですよね。そこがおもしろい。
たばこを吸わない人だからこそできる業務はありますか?
ほとんどの業務は喫煙する・しないは関係ない
-
たばこを吸わない人だからこそできる業務というのは、私自身は特にないと思っています。むしろ、JTでの仕事のほとんどはたばこを吸う・吸わないが仕事の成果や評価に関係のない業務です。R&Dグループに限っても、ほとんどの仕事は吸う人でも吸わない人でも、ともに務まる内容ですよ。
-
私が担当している加熱式たばこのパッケージ開発もほぼ100%、喫煙経験とは関係のない仕事です。パッケージは最初にお客様の目に入る商品の顔ですし、特にたばこのパッケージは吸い終わるまでお客様の手元にあるものなので、お客様に商品を愉しんでいただくために、中身と同じくらい品質にこだわっています。
-
入社後2年ほどパッケージ開発に携わっていたのでわかるのですが、たばこのパッケージ用の印刷機や組立機は超高速だから、小箱やフィルムなど印刷をほどこす材料品の開発にはシビアな技術が求められるんですよね。決して機械との摩擦でインクが剥げ落ちるようなことが発生してはならないし、生産量も膨大なので、ちょっとしたインクの使用量の違いが製造コストを大幅に左右することにもなる。パッケージの開発にはたばこそのものの開発同様に高いスキルが求められる大切な業務ですよね。
-
もちろん、たばこ製品を開発、製造、販売している企業なので、たばこを吸わなければできない業務もあります。たとえば、たばこの味・香りに直接影響を与える香料の開発やたばこ葉のブレンドといった、たばこの味を創る仕事はたばこを吸わないとできません。でも、そんなたばこ製品を実際に吸って、味・香りを評価するような「味のプロフェッショナル」は社内でも少数です。
吸う人と吸わない人、互いのギャップからヒントを発見することもある
-
お客様の購買行動や嗜好などのリサーチと分析が仕事ということもあって、たばこを吸う方をできるだけ広く深く観察しようと心がけているのですが、たばこを吸わないぶん、ユーザーエクスペリエンスの部分でふだんからたばこを吸う人が持つたばこに対するバイアスのない状態で、たばこや喫煙というアクティビティに対してフレッシュな目でじっくり観察できる部分はあるかもしれません。
-
以前、他部所のメンバーとの混成チームで普段行っている業務に縛られずに新しくビジネスに繋がるようなアイデアを出しましょう、というようなグループワークに参加したことがあるのですが、吸わない私の意見が、ふだんからたばこを吸う同僚にとって新鮮に感じられたことがありました。
-
ふだんたばこを吸わない人のほうがたばこの臭いに敏感ということはありますよね。1年くらい前に若手社員がたばこの脱臭について研究開発していました。プロトタイプを開発したということで、そこに呼ばれて「臭いますか?」と訊かれたので、正直に「臭う」と伝えたら驚かれたことがありました。意見を求められたり、思ったことを話した時、吸う人と吸わない人の間にギャップがあることを、お互いに気づくことはありますよね。両者の先入観、今飯田さんが言うバイアスが大きいのだと思います。
-
私のようにたばこを吸わなくて、たばこについての知識も素人レベルの人は、たばこを吸う人なら恥ずかしくて出せないようなアイデアを臆せずに出せる。これはもしかするとたばこを吸わないことの強みかもしれないですね。というか、それしかできないんですけれど(笑)。
-
たばこユーザー同士の会話を聞いていると、「たばこを吸う」という非言語体験を共有しているためか、たばこの味わいについて「この感じ、わかるよね?」というようなフワッとした印象の話になりがちな傾向があるように思うことがありました。
-
たばこをふだんから吸う人がたばこの味・香りについて語るさいに、その行間が広いと感じることはありますね。
-
性格柄、「それってどういうことですか?」って、臆せずに訊けるタイプなので、そこからたばこを吸う人との対話が始まる。対話を重ねるなかで1つ1つを深掘りして言語化していく、言葉に落とし込むことで、その行間の内容を一緒に明らかにしていくことができる。こういったプロセスが、お客様の嗜好に訴求するたばこ製品の開発に繋がるんじゃないかと思います。
-
感覚や視点は、吸う人と吸わない人でギャップはあると思います。しかし、これを食い違いと捉えるのではなくて、“いろんな意見があるな、多様なアイデアがうまれるな”とポジティブに捉える習慣がJTにはありますね。
JTにどう貢献していきたいと考えていますか?
時代の変化に応じたそれぞれの貢献を
-
かなり直近のビジョンではありますが、既存の枠にとらわれない斬新なパッケージを開発していきたいと考えています。現在担当している加熱式たばこ用デバイスのスターターキットのパッケージは、加熱式たばこを吸ったことのないお客様が数千円払って一番最初に手にする商品です。その点で、通常の紙巻たばこのパッケージとはちょっと違った捉え方をしています。加えて、まだあまり開発されていない分野でもある。だから、私自身の手ですでに上市されている競合製品を凌駕するパッケージを作りたいと考えています。
-
私はたばこに関わるアクティビティがどういう気持ちでどのようなシーンで行われるのかにすごく興味があります。近年、たばこ市場は大きく変化しています。何を喫煙するか、従来の紙巻たばこに加熱式たばこが加わりお客様の選択肢も増えました。そして、たばこ製品だけでなく、喫煙を取り巻く環境も変わりつつあります。例えば、“周囲配慮”がより注目されるようになりました。そんな状況下では、これまでのリサーチを踏襲するだけでは見えてこないものがたくさんある。お客様は何を求め、それに応えるにはどんな問いを立てればいいのか?それを考え抜くことで、お客様に支持される製品の開発に携わっていきたいと思います。
-
私は周囲の人たちがより楽しく働けるように、業務プロセスを最適化していきたいです。社員がのびのびと楽しんで働いていないといいアイデアも生まれにくくなるし、ひいてはいい製品も生まれないと思っているんですよ。JTの労働環境は優れていると思いますし、気に入っています。でも、まだまだ改善できる部分がある。自分にできることは限られていますが、業務プロセスをより最適化し仕事の効率をアップすることで生まれる時間や余力を、より創造的な活動に使えるようにできれば、それが顧客満足度のアップに繋がり、結果的には会社への貢献に繋がると思うんです。
社員がのびのびとストレスなく働けるからこそいい仕事ができる
-
知久さんの「社員がのびのびと楽しんで働いていないといいアイデアも生まれにくくなるし、ひいてはいい製品も生まれない」という話を聞いて思ったのですが、JTは全力で仕事をしながらプライベートも大切にできる職場環境ですよね。労働時間の管理はしっかりしているし、休みが取れないようなことはない。私自身、私生活を犠牲にして働いている感覚はまったくありません。
-
私も同感です。特にフレックスタイム制はありがたくて、有効に活用させてもらっています。私の場合は早朝に出社して夕方早めの時間帯に帰宅しているのですが、上司や同僚に咎められることはありません。遅い時間に打合せがあった場合は、チームメンバーが代理で出席してくれたり、周囲が率先してフォローしてくれます。良好な職場環境で、ストレスなく仕事に集中することができています。
-
子育て中の私にとって、フレックスタイム制とテレワークは本当にありがたいです。小学2年生と5年生の子供がいるんですけれど、コロナ禍においてはPTA活動の一環で学校の消毒活動を行なっているんですよ。このような学校イベントは平日10時から16時までのどこか1時間程度ということが多くて、以前は子供にごめんと思いながら欠席することが多かったですが、フレックスタイム制とテレワークを利用すれば、11時からPTA活動に出席して、昼過ぎに自宅に戻って仕事を再開できます。おかげさまで月に1、2回は参加できています。フレックスタイム制が運用されてから、より仕事もプライベートも充実させることができています。
-
前職の会社でも休みを取ることに対する煩わしさはそれほどなかったですけれど、相応の理由が求められる空気があったので、正直な話、取得しにくいと感じていたんです。JTにはそういう雰囲気はありませんね。
-
会社がしっかりとした経営を続けることができれば、社員である私たちは現在のような働きやすい環境で仕事を続けることができるわけですよね。そのためにも、いい製品を作り続け、お客様に支持されるJTであり続けるために仕事をしていかないと(笑)。
Summary
R&Dグループで仕事を行うにあたり、たばこを吸わなければできない仕事はほとんどありません。もちろん、たばこの味・香りの評価など喫煙を伴う業務もありますが、たばこを吸わない立場から喫煙環境について考えたり、フラットな目線でたばこ製品やお客様をリサーチできるといった吸わない人ならではの特性を活かすこともできます。たばこを吸う・吸わないに限らず、メンバーそれぞれの感性や趣向を強みにして活躍する、そんな多様性を大切にする職場の雰囲気を感じていただけたなら幸いです。
私はパッケージからたばこの世界に入りました。大学院では工学部で建築を専攻しながら、研究と並行してパッケージデザインのコンペに応募していたりしたんです。就活時は建築系も含めて広く当たっていたのですが、人々の暮らしや行動を考えたりデザインする仕事のなかでも、建築よりもうすこし小さいサイズのほうが向いてるかもしれないと思いました。その点、たばこは実際に自分の目で見て触って、使うところをシミュレートできる。そのスケール感が私にとってちょうどいいと思ったんですよ。日常的に人が使うものでも必ず誰かがデザインしていて、使っている人に気に入ってもらえる。そこもすごくいいと思いました。