室内空気環境の評価手法開発

低濃度の微量成分の測定を実現するために

Key Word
#室内空気環境
#評価方法
#微量な成分の測定

室内空気環境の評価手法開発

JT R&Dグループはさまざまなアプローチで加熱式たばこなどRRP*の周囲への迷惑軽減に関する研究を実施し、JT Scienceなどを通して研究内容を公開しています。喫煙ルームなど、室内に漂う煙やベイパーについても研究を行っており、RRP*からどのくらいのたばこ製品由来成分が室内空気環境に発生しているかを分析するため、このプロジェクトは立ち上げられました。

非常に濃度の低い成分をどのように捕集し、定量するのか。チーム一丸となって難関に挑みました。
*Reduced-Risk Products:喫煙に伴う健康へのリスクを低減させる可能性のある製品

PROJECT MEMBER

プロジェクトメンバー

  • 製品評価

    深井 祐一Yuichi Fukai

    たばこ煙やベイパーに含まれる微量成分の分析法開発を担当。関係各部署から開発品・製品の化学的評価に関する相談・要請を受け、評価系を提案するとともに、その評価に必要な分析法開発を進める業務を担務。

  • 製品評価

    榎本 好宏Yoshihiro Enomoto

    室内空気環境評価のプロジェクトリーディングを実施。評価に必要な分析法開発、依頼試験管理、その他、試験室設備更新や取得データの論文投稿を担当。

  • 製品評価

    今井 亮輔Ryosuke Imai

    室内空気環境評価のための微量成分分析法開発のうち、主に重金属の捕集分析法を担当。その他、たばこ製品の分析に関わる試験所認定維持の推進委員など担務。

PROJECT STORY

プロジェクトストーリー

01.背景

RRP*から発生する微量な成分を測定するために

JT R&Dグループはたばこ製品に関する研究結果を積極的に社外に公開していたこともあり、RRP*についても同様の分析を行う動きがグループ内で高まっていました。しかし、研究対象としていたRRP*から発生する成分は、紙巻たばこと比較して、かなり濃度が低いものもありました。低濃度ということは、定性・定量化することはもとより、サンプルを捕集する難易度も高くなります。そんな、低濃度の微量成分の測定を実現するため、化学分析のプロが結集してプロジェクトはスタートしました。これまでの既存の分析方法を転用するだけでは、微量成分を安定的に定量化することはできません。
そのため、プロジェクトチームのメンバーたちは、測定方法を一から立ち上げ、新しい評価手法を作成する方針を決意。今、世にある分析機器を駆使してトライしようと考え抜き、悩み、やりがいを感じながら作業を進めていきました。

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02.アプローチ

多様なメンバーが専門性を発揮し、評価手法を開発

RRP*使用時における空気中の成分は、捕集、抽出、分析の3工程を経て定量化します。まずは、捕集。空気環境測定に用いられる規格を参照して、設計した試験室でRRP*を使用し、室内に設置した捕集剤に空気中に漂う成分を吸着させます。次に、抽出と分析です。既存の国際規格に従って分析できる成分もありましたが、まだ分析手法が確立されていない成分や高い感度での測定が必要な成分については、チームで新たに開発した高感度の分析法が用いられました。分析対象の成分数は数十種類、同じ条件ですべてを分析することはできないため、化学特性によって分類し、プロジェクトメンバーが分担して、それぞれの分析条件の検討を行いました。

化学分析のプロだけでなく、多様なバックグラウンドを持ったメンバーが集まり、それぞれが自身の専門性を発揮しながら、担当する仕事を着実に進めていきました。メンバー一人ひとりの知と努力をチームとして一つに結集できたことで、質の高い評価手法が開発されたのです。

例えば、空気中からフィルターを使ってある成分を捕集する工程がありますが、その捕集方法を当時、入社1年目のメンバーが発案しています。市販されているフィルターには対象としている成分が微量ながら含まれており、何も処理をせず分析を進めてしまうと、測定した成分がフィルター由来なのか、捕集した空気由来なのかわからないという課題がありました。そこで、もともとフィルターに含まれているその成分を効果的に排除する方法を新入社員のメンバーが開発し、たばこ製品由来のものだけ測定することが可能となったのです。その捕集方法は今もJTグループ内の測定標準として採用されています。

ちなみに、新入社員のメンバーはその捕集法を新人研修の個人課題として考えたそうで、「新入社員のアイデアも取り上げてくれる職場の風土を感じました」と話しています。

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03.成果

責任を伴う分析法の構築は、まさに製品開発

情報収集の力と高い技術力を持つメンバーの協力に加え、豊富な分析処理能力を持つ社内ラボの協力を得たことによって、数多くの測定項目に対応する分析法の開発を遅滞なく進めることができました。そして、技術的に到達できる水準に制限を設けず、超微量の成分量を測る技術の開発にこだわり、プロジェクトを進めました。新製品のたばこ製品由来成分の評価試験体制が構築されるとともに、自社の加熱式たばこの室内空気環境に対する影響は紙巻たばこよりも小さいことを証明するエビデンスとなり、加熱式たばこの製品特徴を社外に公開・発信するうえで重要なデータを取得することができました。

また、メンバーは公知化の一環として論文を報告したり、国内外の学会で発表するなど、プロジェクトの成果を積極的に外部へ発信しました。JT R&Dグループの持つ分析・評価能力の一端を世の中に理解していただくことにより、製品そのものを信頼していただける未来の獲得に貢献できるのではないかと考えています。

このプロジェクトが遂行した評価手法の開発は、ただ“正しい分析方法をつくる”だけに納まる仕事ではありません。この評価手法があるからこそ、より自信をもって品質の高いたばこ製品をお客様にお届けすることができるのです。メンバーはそこに大きなやりがいと誇りを持って、プロジェクトを成功に導きました。
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