CSOインタビュー
JTグループにおけるサステナビリティマネジメントについて、CSOの考えをお聞かせください。
「4Sモデル」の追求を経営理念とするJTグループでは「自然や社会が持続可能であってはじめて、人の暮らしや企業の活動も持続可能となる」と考えており、これは、人の暮らしや社会、企業の活動、あらゆる人の営みは、生態系を紡いでいく一部である、という謙虚さに立脚しています。その上で、自社は無論、社会の持続性を追求し、未来づくりを担う企業としてあり続けること、そのためのあらゆる活動を主体性をもって遂行していくことが、いわば私たちJTグループのサステナビリティマネジメントです。
これらを体系化したものがJTグループ・サステナビリティ戦略であり、具体的には、起点となる1)JT Group Purpose、2)グループが優先的に取り組む重要課題として特定したJT Group Materiality(マテリアリティ)、加えて3)マテリアリティを踏まえたJT Group Sustainability Targets、にて構成しています。これが我々のサステナビリティ戦略の骨格です。マテリアリティはサステナビリティ経営の基盤であり、マテリアリティを踏まえた具体的な目標や取り組みを設定し、グループ全体で推進していくことで、自然・社会と我々の事業の持続的な成長を目指していきたいと考えています。
サステナビリティ経営の基盤である「マテリアリティ」の改定について教えてください。
2023年のマテリアリティの改定に伴い「自然との共生」「お客様の期待を超える価値創造」「⼈財への投資と成長機会の提供」「責任あるサプライチェーンマネジメント」「良質なガバナンス」という5つのJTグループの課題群を「JT Group Materiality」として特定しました。
本改定では、もともとあったJTグループの3つの基盤*を包含しつつそれぞれを再整理し、製品とサービスに関わる「お客様の期待を超える価値創造」や我々の事業とステークホルダーに関連する「責任あるサプライチェーンマネジメント」といった、より“事業ドリブン”な重要課題をグループのマテリアリティへと吸い上げました。また、各事業が注力分野としていた「人財への投資」についても「人財への投資と成長機会の提供」として進化させグループのマテリアリティに取り込み、最終的に5つのマテリアリティを特定しています。
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JTグループの3つの基盤 : 「人権の尊重」「環境負荷の軽減と社会的責任の発揮」「良質なガバナンスと事業規範の実行」
JT Group Sustainability Targetsの策定は、どのように進められたのでしょうか。
ターゲットの策定にあたっては、マテリアリティとして特定した課題に対する具体的な目標や取り組みを、JTグループらしく設定することを重視し、まずはマテリアリティに基づき我々が目指すべき姿を整理するというステップを踏みました。マテリアリティ改定に至るまでの議論を振り返るとともに、企業を取り巻く外部環境の変化や今後起こり得る変化の趨勢を見定めた上、JTグループとして目指すべき姿をマテリアリティごとに明確にし、そこに到達するために取り組むべき内容を洗い出しました。また、これと並行し、これまで事業ごとに設定していた目標の点検と更新も実施しました。こうしたアプローチを通じて作成されたターゲット案について、外部エキスパートのレビューも経て、ターゲットとして策定しています。
JT Group Sustainability Targetsは、以前に策定した各事業の取り組み目標を包含しつつ、これまでのターゲットを維持・更新し、新たなターゲットも策定しています。またJTグループ環境計画2030については、その内容を維持・更新した上で、JT Group Sustainability Targetsに統合しました。さまざまなサステナビリティの目標を、包括的に一つにまとめることができたと考えています。
新たなJT Group Sustainability Targetsの特徴はどのようなものですか?
トータルで25のターゲットを設定しており、新規で設定したターゲットは9項目、改定したものは10項目、維持したものは6項目あります。多様なサステナビリティのテーマとニーズに対応した、より進化したターゲット群だと考えます。
新たに策定したターゲットとしては、例えば、「自然との共生」では、一般的には、“環境課題への対応”であったり“気候変動対応”でしょうが、私たちは「人の暮らしや社会、企業の活動、あらゆる人の営みは、生態系を紡いでいく一部である」という想いから“共生”に重きを置き、生物多様性の保全も見据え、事業の生態系への影響を包括的に把握しようと考えました。「生態系影響評価の実施」といったターゲットを設定し、まずはJTグループの各事業が生態系に与える影響と各事業の生態系への依存の評価を実施していきます。また、生態系への影響という観点から見過ごすことのできない「農薬」に係るターゲットも追加しています。
「人財への投資と成長機会の提供」を考えるにあたっては、JTグループにおける人的資本の明確化に加え、その拡充に向けて注力するさまざまなターゲットを設定しました。また「責任あるサプライチェーンマネジメント」については、サプライヤーと属するコミュニティの方々が直面する社会課題に協働して取り組んでいくことが必要であると考え「たばこ農家の生活収入」といったターゲットを設定しました。2025年までに、直接取引のある葉たばこサプライチェーン産地のすべてにおいて、生活収入の測定に取り組んでいきます。
なお、新ターゲットへと引き継いだこれまでのターゲットに対する2023年の実績は概ね順調に推移しており、達成にむけてManageableと考えています。
今後の課題について教えてください。
そもそも私たちが向き合っていく社会課題群は、我々に見える形で現象として表出しているものであり、加えてそれら課題群は複合的につながっているものが数多くありますので、その本質と向き合い、解決に取り組んでいく必要性を痛感しております。また、本質を追求していけば、取り組み課題、あるいは取り組み方も変化・進化していくものと考えています。よって、ターゲットは策定して終わりではなく、定期的に点検・見直しアップデートし進化させていくことが大事です。サステナビリティ戦略の策定・運⽤には、CEOをはじめ、取締役会が関与する体制を執っており、策定したJT Group Sustainability Targetsについては、その運用の中で定期的に点検し、進化させていきます。
加えてサステナビリティ全体の動向をみると、各国・各地域におけるサステナビリティ情報の法定開示がスタートしますが、財務と非財務情報の統合やデータの集約とマネジメント、データの活かし方などをより高度化していく必要があると認識しています。非財務情報群から、まだ我々が気づききれていないCapabilityなどの発見もあると期待しております。これらの発見もまた、サステナビリティ経営の高度化に資するものでしょう。今後の課題というご質問ですが、まだまだ多くの“期待”がありそうです。
Purposeを起点とするマテリアリティと、それに紐づくターゲットを軸に、JTグループが将来にわたり各ステークホルダーから必要とされる存在であり続けるために、今後も全力でサステナビリティマネジメントに取り組んでいきます。