CSOインタビュー

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“JTグループならではの価値を
創造・提供することで、
ステークホルダーや地域社会の皆様と、
持続的な成長への歩みを
続けてまいります。”

執行役員 妹川 久人 Chief Sustainability Officer

2022年は
どのような年だったでしょう。

2022年は引き続きコロナ禍により社会や消費者行動が変化する中、ロシア・ウクライナ情勢による国際的な政治情勢の変化、世界的なインフレーションなど不確実性の高い1年でした。サステナビリティに関する国内外の動向は、ロシア・ウクライナ情勢から波及したエネルギー価格の上昇により、気候変動への対応やESG投資のスローダウンを懸念する声が当初はありましたが、サステナビリティの動きを止めるには至らず、むしろ社会と企業がともに持続的に成長し、共存することの重要性やモメンタムが高まったことを引き続き実感した1年となりました。また、企業には、従来の事業計画からサステナビリティの視点を含めた財務・非財務を統合した包括的な計画を、ステークホルダーや社会に対して示すことが以前にも増して求められています。

JTグループでは新たにパーパスを策定し、2022年度・本決算発表において「心の豊かさを、もっと。」というパーパスを発表しました。このパーパスには「心の豊かな社会とともにJTグループとして持続的に成長していきたい」という想いが込められています。また、2022年はたばこ事業の運営体制を一本化した初年度で、運営体制の統合が確実に進んだ1年となりました。

JTグループのサステナビリティの取り組みとしては、「マテリアリティ」の更新に着手し、本レポートにおいて、新マテリアリティを公表しました。また、サステナビリティの取り組みにより一層ドライブをかけるため、2022年の年初にJTグループ環境計画2030を更新し、温室効果ガス削減目標をより意欲的な計画へ進化させ、2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量をネットゼロにすることを発表しています。

加えて、JTグループの持続的な成長は、社会との共存とともにあるとの考えのもと、世界各地において地域社会をサポートするため、さまざまな支援を実施しました。先般トルコで発生した地震に対する支援やロシア・ウクライナ情勢については、引き続きJTグループの従業員とその家族の安全を最優先としつつ、ウクライナで困難に直面されている方々に対して可能な限りのサポートを実施しています。

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新マテリアリティについて、初回のマテリアリティとの比較を含めて教えてください。

初回マテリアリティ分析を実施したのは2015年でしたが、当時は「サステナビリティ」に対する社内外の感度がまだ初期の段階にあり、我々としてもマテリアリティの特定は初めての試みでした。さまざまな試行錯誤や難しさがあり、結果として事業側の声をマテリアリティに十分に反映できなかったのでは、という反省点がありました。今回はサステナビリティと事業といった観点から、事業戦略との接続、特に事業ドリブンな課題の取り込みをより意識しました。また、JTグループのパーパスを発表し我々の事業の在り方についての転換期にあることを踏まえて、「JTグループらしさ」といった点に改めて立ち返り、マテリアリティの総点検を実施しています。

初回のマテリアリティを策定してから、JTグループを取り巻く事業環境や社会情勢には大きな変化がありましたので、社会との共創、ステークホルダーの皆様の意見により一層耳を傾けることを常に意識しながら、マテリアリティを更新しました。課題がすべて総入れ替えになったというわけではなく、社会環境や事業環境の変化に伴い「課題がいくつかのテーマに分かれ、より具体的になったもの」や「テーマ自体が進化したもの」等がありました。また、「課題として取り組んだ結果、成果が出ているのでマトリックスの位置が変わったもの」もありました。これらがマテリアリティトピックスとして再整理され、今回のマテリアリティ分析の結果として表れています。

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今回特定したJT Group Materialityの特徴について教えてください。

どの項目も重要ですが、その中でどのような優先順位を付け、如何なるものを私たちJTグループにとっての重要課題とするか、色々と検討を重ねました。特定のとある一つの項目の重要度を相対比較した上で特定することも然りですが、その一つの項目をもってして、その先にある“大切なこと”をいわば克服できるようなシンプルなものでもない。自然界や社会、一人ひとりの暮らし、すべてが同じ生態系の中で複雑につながっているから、シンプルにどれとどれ、と抽出するのではなく、大きな括りやつながりの近しいものの括り、として5つに特定することとしました。小さいことかもしれませんが、これもひとつ、JTグループらしい特定の仕方だと考えます。ここに一つひとつ、このセットした課題自体が私たちJTグループらしいものとなっているか、あるいは、その課題解決の進め方にJTグループらしさが期待できるか、という点検を繰り返し、その上で、その課題にどう向き合うかというコミットメントをお示ししました。

加えて、この5つのマテリアリティには通底するものがあります。私なりに言えば、“People first”。人権でもあり、自然や社会と人のつながりでもあります。人が自然や社会とつながることで活かされる、生かされることは当たり前であり、その当たり前を侵害するようなことがあってはならない。これは如何なる重要課題に向き合うにせよ、通底するもの、換言すれば前提としています。かかる背景や想いがあるということを認識いただいた上で、今般特定した5つのマテリアリティをご覧ください。

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2023年以降の課題について教えてください。

マテリアリティは更新して終わりではなく、この後に戦略への落とし込み、具体的な取り組みや目標の策定といった要となるプロセスが続きます。JTグループ全体としては、引き続きJTグループ環境計画2030のモニタリングと推進、ステークホルダーとの継続的なエンゲージメント、人権デュー・ディリジェンスのさらなる進化や地域社会への貢献を通じて、社会関係資本の知見を蓄積していくことに取り組んでまいります。また、JTグループの各事業におけるサステナビリティの取り組みについては、取り組み目標の設定や取り組み推進、進捗のモニタリングと報告に向けて、それぞれの事業をしっかりと支援していきます。

欧州からスタートしたサステナビリティ情報に関する規制の流れは、グローバルな動きへ進んでおり、欧州・米国・日本、それぞれの国や地域でサステナビリティ情報に関する開示規制が検討され、適用への準備が進んでいます。今回特定した5つのマテリアリティに含まれていますが、例えば日本では環境の側面では特に「気候変動」、社会の側面では「人的資本」に開示規制の焦点があたっています。JTグループでは“人財の多様性こそ、競争力の源泉である”という認識のもと、多様性を尊重する企業文化の創造に引き続き取り組んでいきます。また、環境への負荷軽減に関しては、気候変動、自然保全やサステナブルな製品作りに今後も取り組むとともに、生物多様性等の次なるサステナビリティのテーマについても、注視をしてまいります。

フレームワークを整備する側、評価する側もしくは評価される側と、さまざまな方面でのサステナビリティの知見と実績の積み上げが求められる時代に向かっています。JTグループならではの価値を創造・提供することで、ステークホルダーや地域社会の皆様と、持続的な成長への歩みを続けてまいります。

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