商業施設の事例
渋谷ヒカリエ
東京都渋谷区
2012年4月に、渋谷駅・東口にオープンし、連日多くの人々でにぎわいを見せる高層複合施設「渋谷ヒカリエ」。
この館内の5フロアに、5カ所の喫煙スペースが設けられました。
地下3階〜地上5階までを占めるショッピング・フロアに始まり、飲食店フロアのある6〜7階、アート・ギャラリーが集う8階、イベント・ホールがある9階、劇場を有する11〜16階と、多彩なフロア構成になっている同館。
その中の7〜9階・11階・14階に、オリジナリティに満ちた喫煙スペースが誕生しました。
“全体的に統一感がありながらも、各フロアの個性を生かしたい”として考えられたスペースには、バリエーションに富んだ造作が施されています。
壁から天井にかけての曲面壁と、映像モニターの設置など、共通点がありながらも、フロアの特性を加味し、異なる表情を持たせた5つの喫煙スペース。「渋谷ヒカリエ」での試みは、複合型商業施設における新たな喫煙スペースの在り方を示しています。
分煙Pointをチェック!!
煙の流れ方を考慮して設計された曲面壁。室内の角にたまりやすい煙が、この壁に沿って一定方向へと流れることで、効率の良い排気が実現しています。この曲面壁を生かした5つの喫煙スペースの中でも特に、3つの空間に特徴的なデザインが施されています。
8階 和田誠氏によるインスピレーション創出の場
アート・ギャラリーのほか、メンバー制のワーク・スペースを有し、文化創造の発信拠点となっている8階フロア。
アートに興味のある来館者や、ワーク・スペースで活動を行うクリエイターたちがフロアのメイン利用者であることから、喫煙スペースのコンセプトは“インスピレーションを与えられる空間”に決まりました。
そこで、同施設では、イラストレーターの和田誠氏に、曲面壁へのイラスト作成を依頼。和田氏は、壁から天井にかけての階層を巧みに利用して海・陸・空の構図をつくり、そこに棲む動物たちを、曲面いっぱいに描きました。
このイラストがあしらわれたことで、窓のない閉じられた空間に、開放感がもたらされています。
11階 行き交う人々に提供する落ち着きの場
劇場の入り口と、オフィス・フロアへの入り口が同居する11階は、たくさんの人々が行き交う場所です。そのため、11階の喫煙スペースは、ほかの喫煙スペースよりも大きな空間となっており、唯一、備え付けのベンチも設置されました。
さらに、この喫煙スペースを特徴づけているのが、青色LEDを使った照明です。
気持ちをクール・ダウンさせつつ、ポジティブにもさせるといわれる青色。この11階の喫煙スペースでは、さまざまな目的を持って訪れた人々が、リラックスしながら一服のときを過ごしています。
14階 舞台との連携を重視した開放感にあふれる場
14階の喫煙スペースは、劇場との中階に位置し、演劇の合い間の休憩時や、終演後に喫煙できる場所として設置されました。このため、演劇の余韻が味わえるような空間になるよう造作されています。
ここでは、扉側にはプリントを施したガラスを設置。喫煙スペース内からの視界には広がりを持たせる一方で、外からの視線は、ほど良く遮ることができるように工夫されています。